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またあるときは通訳

先週、私はこのマガジンで、コールセンターは「ガイドであれ」と説きました。
自社ワールドの地図を駆使してお客さまに満足してもらえる場所を案内し、素晴らしさ知ってもらい、限界を受け入れてもらう。

そんなことの重要性をお伝えしました。

一方、自社に対しては「通訳」であるのが良いと思います。
今回は、そんなお話です。

コールセンターはインターフェースである

インタフェース(英: interface)は、ものごとの境界となる部分と、その境界でのプロトコルを指す。 (Wikipediaより)

インターフェースとは、簡単に言えば何かと何かの境界です。そしてコールセンターは自社とお客さまの接点となる部署です。

インターフェースというとややこしいですが、例えばテレビのリモコンだって、スマホの画面だって、一つのインターフェースです。

ユーザーがテレビを見たい、と思ったときにリモコンの電源ボタンを押せばテレビがつきます。スマホで使いたいアイコンをタップすればアプリが起動します。なぜこんなことができるかといえば、電源ボタンがテレビ本体に「ユーザーがテレビを見たいって言ってるから起動して!」という指示を出しているからであり、スマホであればタップしたら起動する、スワイプなら画面を切り替えるなどの指示が動いているからです。

あまりにも当然で何も違和感がないかもしれませんが、実際には黒い長細い箱に付いた赤いボタンを押すことと、テレビがつくことには何の関係もありません。そこにはテレビメーカーの人がユーザーには分からない工夫をして、一定の仕組みでテレビがつくようにしたのです。

このインターフェースには取り扱い説明書がない

コールセンターも同じで、お客さまの質問や要望に対して、自社のプロトコル(決まり事)にのっとって対応します。

ただし、テレビやスマホには取扱説明書が付いていますが、コールセンターに正しく問い合わせるための取扱説明書はありません。注文や返品を受け付けているなど、一部は分かることもありますが、多くのコールセンターは、「〇〇サポート」などの名称と電話番号が商品の裏側などに小さく書かれているだけで、どんなことをしてくれるのかがわかるようなメニューすらありません。(というか、「お客さま窓口」とか、「代表電話」という部署名のところには、メニューにないことばかりが寄せられたりします)

きっとできるんだろうと思ったお客さまが電話をかけてきて、対応する側も、果たして自社でそんなことができるのかがわからない状態で対応しなければなりません。

そんなときにコールセンターが行わなければならないことは、このお客さまが一体何を求めているのかを正確に把握し、該当部署へ正確に伝えることです。

「バカヤロー」と怒るお客さまの真意は何か

例えば、コールセンターでは「ホットボイスを集めましょう」ということがよく言われます。

■ホットボイスとは
ご意見、ご要望、ご提案など、お客さまから寄せられた生の声のこと

「生の声」を集めましょうと言われたからと言って、お客さまに「バカヤロー」と言われて、記録に「バカヤロー」と残しても、どの部署も活用のしようがありません。

“お客さまの声”をそのまま届けるとは、お客さまが言った言葉をそのまま書き残すことではありません。お客さまが言いたいことを引き出し、どのような改善があればお客さまが満足するのかを具体的に考え、お客さまには「そうだよ、そんな改善をしてほしくて電話したんだ」とすっきりしてもらったうえで、その提言を関係部署に届けるのです。

届ける先の人に伝わるように翻訳する

営業には営業の思考方法があり、設計には設計の思考方法があります。
自社の中にいて自社の文化に染まっている人のために、コールセンターで働く人間は、お客さまの声を自社内の人たちにわかるように翻訳してあげなければいけません。

当然、社内の人たちに分かるように翻訳するためには、社内の人たちがどのような思考枠で考えているのかをイメージしておく必要もあります。

例えば「こんなわかりづらいホームページ誰が使うか!」(A)と言われて、このまま記録に残すよりも、お客さまからそのように感じたときの状況をうかがい、自社でできる改善内容をイメージし、それが独りよがりでなくお客さまの意向に沿ったものか確認したうえで、「入力ミスがあってもどこがミスなのか全くわからず、ただ先へ進めなくなるところがわかりづらいので、入力ミスがあった項目を赤い矢印で示し、説明がポップアップするなどの工夫が欲しい」(B)と報告したほうが改善につながりやすくなります。
この、(A)から(B)への変換がコールセンターにしかできないことです。お客さまと接しているからこそ、お客さまの状況や気持ちや困りごとを具体的に把握でき、社の代表としての立場だからこそ、極力実現可能な改善案を模索する、これが、インターフェースとしての役目なのです。

人間でいえば耳と口

コールセンターはこのように社内と社外のインターフェースですが、人間の外界とのインターフェースは五感です。

そして会社を人間に例えるなら、電話というコミュニケーション手段に制限されるコールセンターは、五感のうちの、耳であり、口です。この耳と口が優秀であればあるほど、脳は正しい判断ができ、手はより良いものを作り、足は高みへと登っていけるのです。

では、また。

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