医療機関の電話対応~保険証はお持ちですか?
先日、医療機関に勤める知人から受けた相談です。
その内容とは、「新患からネット予約があった場合に、発信して保険証の有無を確認するルールになっているのだが、それがどうしても聞けない」というものです。
「あぁ、それは分かるなぁ」
という方と、
「え?どういうこと?」
と感じる方がいるかもしれません。
今後、もっとデジタル化が進み、予約時に保険証をアップしてもらえるようになればこんな困りごとは無くなるのかもしれませんが、来院前に確認
したいのであれば、とりあえず今は発信して質問するしかありません。
なぜ発信に抵抗があるのか
電話発信が苦手という人は多くいますし、その原因は下記のように複数あります。
・どんな人が出るか分からない
・顔が見えず、気持ちが読めない
・何を言われるか分からず、とっさに対応できる自信がない(特に、クレームになったら嫌だという気持ち)
ほかにもいくつかあるでしょうが、今回は「保険証の有無を聞けない理由」に絞りましょう。
保険証がない=生活保護=かわいそう
まず、「保険証をお持ちですか?」と当たり前に聞ける人の頭の中を想像しましょう。仮にAさんとします。
Aさんにとって保険証の有無は、会計の作業が異なるというだけの話です。個人的な興味はなく、会計時の混乱を減らすために事前に確認したいだけです。
一方でストレートに聞けない人の頭の中はどうなっているでしょう。仮にBさんとします。
こうやって見ると、Bさんはとても普通の一般的な良い人ではないでしょうか。
Bさんの頭の中を整理しましょう。
①保険証の有無に自分の価値判断を絡めている
「保険証がない=生活保護」という単純な図式になっているところも問題ですが、生活保護を利用していることがかわいそうなことであるという自身の偏見を持っており、しかも自覚がありません。
多くの人にとっては生活保護という制度は縁がなく、利用者に対して「働かずに税金で遊ぶずるい奴」という認識を持つよりも「かわいそう」という認識を持っている人のほうがまだよいのかもしれません。
しかし、実際に生活保護利用者に接する人がかわいそうと思うのはどうでしょうか。例えば、ガン患者をかわいそうと思って仕事をしている医師がいるでしょうか。その医師に適切な判断ができるでしょうか。
②質問する主体が違う
Aさんが、病院の代表として業務上必要なことを聞いているだけであるのに対し、Bさんは上からやれと言われたことを目的も分からないままやろうとしており、個人として他人の不幸など見たくないと思っているのです。そしてそんな風に見られれば当然のことながら人は怒るので、自分も怒られると思っているのです。
代表としての自覚をもって質問する
業務としての電話は、それがどんな電話であれ、個人としてではなく代表として対応しています。
人間は、いろんな価値観を持っており、例えば生活保護利用者を「ずるい奴」と思う人も「かわいそうな人」と思う人も、別に何も思わない人もいるでしょう。それは個人の内面の自由なので構いません。しかし、仕事に私情を持ち込んではいけません。
それは、自分にとってストレスになるだけでなく、相手にも失礼です。
それでは、また。
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。