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数理モデルによる“被カウンター”に着目した攻撃時の配置評価。スポーツデータサイエンスコンペティション最優秀研究を解説

こんにちは。

国内外の最先端のサッカーを扱う専門誌『footballista』に、筆者が大学院で取り組んでいるスポーツアナリティクス研究を紹介する記事を寄稿しました。


noteでレアル・マドリーの記事を書き始めてもうすぐ4年(footballista初寄稿からは2年半)、関東サッカーリーグ1部エリース東京FCのテクニカルコーチに就任して1年半が経つ筆者ですが、本業は大学院生(M2)でして、現在修士論文の完成に向けて研究に取り組んでいる最中です。

所属する研究室では、それぞれのメンバーが統計物理学や非線形科学を基盤として生物・社会・経済系を含む幅広いシステムでの集団現象を研究しています。「統計物理学」「システム」「集団現象」などのキーワードはスポーツに関わる様々な対象をデータを用いて科学的に分析する分野であるスポーツアナリティクスとの親和性が非常に高く、筆者は当初からサッカーに関する研究をしようというモチベーションで大学院に入学、研究室の志望届を提出しました(以下は関連記事)。


今回紹介する研究のタイトルは“サッカーにおけるスペース評価に基づく攻撃時の選手配置評価”です。大学の卒業論文のタイトルは“サッカーの選手配置が被カウンターリスクに与える影響”であり、ざっくりと言えば選手がどういう配置を取れば危険なカウンターを受けずにゴールを奪うことができるのかを明らかにし、瞬間瞬間の選手配置の良し悪しを定量化したいという一貫した目標を設定しています。

中でも筆者が重要視しているのは、指標の解釈性の高さです。記事中でも触れていますが、近年は機械学習の手法が発展しているためデータ駆動で選手配置を定量化することは不可能なことではありません。しかし、“この瞬間の配置は80点だ”などと言われても、なぜ80点なのかが明快でなければその80点という数字がいかに正確であろうと現場の意思決定に役立てることは不可能です。現場で意思決定を行うのはあくまで人間であり、そこには誰でも理解できるような論理が必要不可欠です。

そのような観点から、数理モデルによるアプローチを試みたわけですが、自然な発想に基づく仮説からかなり独創的なモデル化を行っている点が今回の研究の面白い点であると思っています。その辺りと現場への応用可能性の高さが評価されたのか、日本統計学会スポーツデータサイエンス分科会、情報・システム研究機構統計数理研究所が主催する2023年度スポーツデータサイエンスコンペティションのサッカー部門で最優秀賞をいただきました。


研究の課題や改善点を挙げればキリがないですが、時間の限り目標に向かって励んでいこうと思います。機会があれば、論文紹介や研究の進捗報告なども記事にしたいと思っています。

また、今回のfootballistaの特集では東大ア式蹴球部時代の先輩である染谷大河氏(X:@agiats_football)の記事、および筆者も籍を置いている東大ア式蹴球部エンジニアリングユニット(X:@ut_football_lab)の記事も公開されているので、こちらも合わせてご一読ください。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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