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アイドルの実存性とエンタメとしてのライブの価値を、愛するNewJeansを初めて生で見て考え直した

一週間前の8月19日土曜日、この日は私にとって約半年前から待ちわびた日でありました。国内最大級の音楽フェス「SUMMER SONIC 2023」の開催日であり、私が人生で一番強烈に推しているK-popガールズグループ「NewJeans」が出演するからです。

https://www.summersonic.com/2023live/detail/newjeans/

NewJeansがステージに登場する5分前、うだるような暑さと密集する人の中で、「これからの45分が私にとって重要な意味を持つことは確定している。彼女らのステージが終わった後、私はこれまで通り生活を送れるのだろうか?」と、高まりきった期待を胸に彼女らの登場を待っていました。

結論、そのステージは、私の高まりきった期待値を超えることはありませんでした。それはただ単に会場の気温が高すぎて満足に楽しめなかったとか、そんな簡単な話なのかもしれませんが、NewJeansを心から愛するファンとして、また、エンタメ領域のサービスへ投資を行い、より良いエンタメが生まれる支援をしたいと考える人として、この感情をきちんと整理する必要があると感じ、文字に起こしてみることとしました。

あくまで超主観の感想ですし、そもそも人生初の夏フェスに対し見当違いな期待を持っていたのは否めないと思います。これは、私が楽しめなかった、夏フェスに向いていなかった、というだけの話としてお読みください。


私が持っていた期待値と結果、その差分

まず、私が今回のステージに抱いていた期待と、実際ステージを見て得た感情にどのような差分があったのか、整理することから始めます。

私が楽しみにしていたのは、主に以下の欲求を持っていたからだと振り返っています。そもそも夏フェスというものが初めてだったので、無知による無駄な期待も多かったのだろうとは理解しています。

  • これまで動画を中心として、様々なメディアで見ていたNewJeansを自分の目で直接見たい(→実存することをこの目で確かめたい?)

  • NewJeansを好きな人達と同じ空間を共有して盛り上がりたい

  • NewJeansの音楽を大きな開放的な空間で、大音量で聞きたい

  • 生で見るからこそのステージのライブ感(例えばMCや、メンバー間の絡みなど、普段動画では見れない部分)を楽しみたい

この期待に対する結果は以下です

  • 実際あの広いZOZOマリンスタジアムのかなり前方で見れたものの、密集する人の中で、かつ基本的に自分よりも身長が高い人の中で、かつイメージしていたよりも低いステージで踊るNewJeansを直接きちんと見ることはかなり難しかった。


  • (当たり前だが)音量・音質に関して、特段不満があったわけではないが、クラブなどで聴く大音量かつ高音質の音楽と比べるとどうしても音自体の満足度はそこまで高くはなかった。ステージ中盤までは、バンドセットで普段聴くことのないバージョンを聴けたのは良かったが、個人的にはそこまで刺さらず。

(余談ですが、NewJeansの楽曲はFuture Bassやエレクトロポップ、HouseといったジャンルのDJに大人気で、クラブで彼女らのトラックが流れることは珍しくありません。実際昨日観たOKAMOTO'Sのオカモトレイジさんのステージでは、彼女らの楽曲のRemix Ver.が6回程度使われていましたね)

  • 自分の周囲の人が、老若男女問わずNewJeansを好きなのは純粋に嬉しかった。こんなにも広く彼女らが愛されているのだと実感を持って知れたのは良かった。韓国の音楽番組ほどではないものの、掛け声もきちんとなされていて、周囲の人と一緒になってステージを楽しめたのは良かった

  • NewJeansのMCについて、全メンバーがかなり流暢に日本語を話していて、日本のこのステージのために時間をかけて準備してくれたことが嬉しかった。

  • 一方で、(超当たり前であるが)韓国語や英語を母語とする彼女らが日本語で話す内容は事前に準備されたものであることが明らかで、事前に決められたMCが淡々と進められている感覚を持ってしまった。(これは本当に仕方なく、自分がK-popアイドルのライブに向いていないということです。。。)

ライブの持つ意味の分類

直近、CDの流通量が減り、音楽の楽しみ方がサブスクに移行する中で、音楽業界の収益構造は大きく変わっています。CDやサブスクなど、モノ・曲に対する売り上げは減っている中で、ライブやフェスなどコト消費は国内全体でみて増えています。

参照:https://www.musicman.co.jp/business/554004#:

余談ですが、韓国最大級の音楽フェスに、今年は日本のアーティストの出演が数件決まっており、韓国国内でのJ-POPの人気がここからも見て取れると思います。imaseや藤井風、あいみょんなどが韓国などでも人気なのは知っていましたが、羊文学やエルレが人気だなんて、なんか嬉しいですね。

日本ではライブを楽しむ文化が広く根付いていますが、観客は音楽ライブに対し何を期待しているのか?をまとめてみます。

  • 視覚的

    • 好きな人を生で自分の目で見れる喜び

    • (大型アリーナ公演やクラブなど)照明などの演出を楽しむ

    • ファンサービスを受けられるかも?

  • 聴覚的

    • その時限りのアレンジなど、ライブならではの音楽を楽しむ

    • いつもよりも大きな音で、あるいは良い音質で音楽を聴ける

  • その他

    • 同じ音楽を好きな人が一体となる空間・空気感を楽しむ

    • 応援するアーティストにお金を落とす手段として

    • 好きなアーティストに自分の思いを伝える場として

その他にも、好きな人をデートに誘う口実として、とか、毎年の風物詩として、とかいくらでもライブに行く理由は考えられますが、その大本となっているのは上記の要素の組み合わせだと思います。

アイドルが実存する意味はあるか

私がNewJeansのステージを楽しみきれなかったのは

  • (超当たり前ですが)彼女らの表情やダンスは、YouTubeで見るパフォーマンスよりも見にくく、満足に見れずもどかしかった。

  • 「彼女らがこの世界に実在すること」に感動しなかった。

  • 音量・音質の両面で、クラブで聴く場合と比べ劣り、物足りなさがあった。

  • そもそも彼女らのパーソナリティが好きなわけではないので、彼女らのMCを楽しみ切れなかった。また、ライブ性の無い日本語でのMCに、プログラミングされた感を感じてしまい、ノりきれなかった。

という要素があると振り返っています。
あまりの暑さに彼女らのパフォーマンスが完璧でなかったこと、などは全く些細な問題です。あの酷暑のなか、フェス慣れしている他のバンドマンですら苦しそうな表情を浮かべていましたが、間髪入れず高いレベルで歌い踊り続けた彼女らは本当に凄いなと改めて思いました。

ここで感じたのは、
「私にとってアイドルが3次元空間に実在するかしないか、目の前でライブをしてくれるかはどうでもよいのだろう」
ということです。

2000年代に初音ミクが登場し、彼女によるバーチャルライブが大きな動員を達成していることなどを見ても、バーチャルアーティストが多くの人の欲求に刺さり人気を博していることは古くから明らかですが、今回の経験を踏まえ、個人的にはバーチャルアーティスト市場にはまだまだ拡大の余地があるのだろうという確信を得ました。

が、感情的な話として、彼女らが実在することに感動しなかった、というのは思い返せば当たり前なことのようにも思えながら、漠然とした悲しさがありました。生で見ることによってより愛着が湧くこと、に対する期待があったのだろうと思います。

あ、別に生で見なくてもいいんだ、って思ってしまった感情は本物だったのですかね、、、?
SUMMER SONICの翌日、彼女らは代官山・中目黒でショッピングや食事を楽しんだようですが、そのことに対しては愛しさというか、「あ、自分の知っている町で、行ったことのある道に彼女たちは居たんだ、、、あわよくば会ってみたかったな、、、」という感情はあるんです。これって何なんですかね?私は彼女らに何を期待していて、どこにカリスマ性を感じているんですかね?

将来の音楽の楽しみ方・タレントの生み出し方について

実際にアーティストに会うことの価値はアーティストの特性によって異なり、例えばアーティストのグローバル公演の形もまだまだ変化していくのだろうと感じます。Fortnite上やVRchat内でライブして多くのリスナーが集まって、という事例は生まれていますが、多様化が進むことは間違いないだろうと見ています。

もちろんロックバンドなど、生で聴く・演奏を見ることの価値が残り続けるアーティストも存在し続けると思います。そのアーティストの形態やファンに刺している欲求によって、それぞれ適したエンターテイメントの提供の仕方があるのだと思います。コンテンツ提供者が、ファンがそのコンテンツの何を好きなのか?を問うことの重要性を再認識しました。

NewJeansの楽しみ方として超個人的な理想を言えば

NewJeansの楽曲を中心に、様々なRemixをDJ・トラックメイカーが良い箱で流して、みんなでNewJeansのPVをスクリーンで見ながら盛り上がる

みたいなイベントがあれば全然お金を払いそうだな、と思っています。NewJeansはビジュアル・楽曲・映像・ダンス・歌など、人を好きにさせる要素の幅が広いと思っているので、その分楽しみ方も幅があればいいのに、そうすればもっとお金を落とすのに、、、と感じたりもしました。

疑問点

・視覚的・聴覚的に分かる卓越したテクニックを目の前で見たいと思うのはなぜか。映像で見るのと何が違うのか?

その分かりやすい例がダンスだと思います。ものすごいテクニックを持つダンスって、生で見るのと動画で見るのとでは得られる衝撃が全く異なると感じています。これは人間の感情のどこに差分を生んでいるからなのか?とても気になります、、、

まとめ

新しいエンタメの形を探すにおいて、「人々が持つどんな欲求に刺すのか?」という問が重要だと考えていて、よくC向けの起業家とのディスカッションでも取り上げたりするのですが、本noteはライブエンタメが刺している欲求について考えてみました。

例えば、Vtuberがここまで大きくなったのは、Vtuberが登場する前から既に大きな現象として生じていた「ゲーム配信・歌ってみた(素人による有名楽曲のカバー)動画」と同じ欲求に刺していて、かつそれを、これまでよりも「かわいいorかっこいいビジュアルとチャーミングなパーソナリティを持つキャラクターが配信する」ことで上書きしたもの、と自分の中では整理しています。

論理的には恐らく穴だらけなnoteでしたが、書いてみて少しは自分の気持ちが整理できたように思います。
ヒットコンテンツをどう作るか?について、一緒にディスカッションさせてください。良ければぜひ私のX(旧Twitter)のDMまでご連絡ください。


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