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『サンクチュアリ -聖域- (Netflix 全8話)』を観ました。

力士のスカウトに九州まで来た親方(ピエール瀧)に札束の入った分厚い財布を見せられ「土俵にはね、金・地位・名誉、全部埋まってるんだよ」と言われて相撲部屋に弟子入りする主人公の小瀬_オセ(一ノ瀬ワタル)。
彼には品性も敬意もないし、努力とか根性とか友情にはまったく縁がないようにしか見えない。

全然強くもないのに、稽古中にも土俵の外でアクビしてやる気のない主人公である。観てて感情移入するにはするが「こんな失礼なヤツは痛い目にあえばいいのに」という感情である。

しっかしムチャクチャ面白くて、一気に8話を見てしまうのはどうしてだろう。「相撲ってスゲえ!」見終わって相撲が面白く見えてしょうがないのはどうしてだろう。

世界的な知名度を誇り、1500年以上も日本の伝統文化、神事として継承されながら、未だ神秘のベールに包まれている大相撲の世界。その戦いが行われる土俵は、異常の上に成り立つまさに“サンクチュアリ”(聖域)。主人公は、才能と体格を猿将親方(演:ピエール瀧)に見初められ、父の借金を返し、大金を稼ぐためだけに入門した、大相撲に一切興味ナシなヤンキー力士・猿桜。

土にまみれ、血と汗がほとばしる苛烈な稽古に、大相撲の聖地である両国国技館の再現、そしてすべてを凌駕する土俵上の大興奮バトル。大相撲ファンにも大相撲を知らない人にも強烈なインパクトを与え、ひとりの“何者でもなかった”若者が体ひとつで登り詰める姿に魂が震える日本発の本作を、世界はどう見るのか。前人未到の”聖域”へと踏み込んだ《強烈作》の行方を見逃すな!

https://about.netflix.com/ja/news/sanctuary-special-trailer-and-display-art-debut

『サンクチュアリ -聖域- 』のここがオモシロイ

1.主人公小瀬がムカつくが目が離せない

すぐに主人公の小瀬から目が離せなくなるが、それは応援したいからではなくてムカつくからだ。全方位的にド失礼だから「こいつが痛い目に遭うのを観るまでは見届けよう」とか思ってしまう。
そんな小瀬だが、集団で弱いものいじめするようなズルいとこはないし、人を落とし入れるようなことをしたりはしない(というか考えるような頭が元々ない)。ド失礼なこともするが、なんだか憎めないところがあるキャラなのである。

2.小瀬の母親の余 貴美子がヒドすぎる

地上波では放送できないようなヒドい母親である。息子が大変なことになってもニヤニヤしながら「保険金とか出るんですかねえ?」などと親方に話すほどのゲスである。ヒドいと引くがヒド過ぎると笑ってしまう。しかしそれを演じる余 貴美子はとても輝いていて、本人もこの役って好きなんだろうなとか思う。

3.松尾スズキと巨漢親方のコンビが悪すぎる

相撲部屋の親方である松尾スズキの悪だくみが本当に「もう許してあげてもらえます」って言いたくなくくらい小瀬や彼のいる猿将(エンショウ)部屋を追い込んでいく。松尾スズキはこういう役がハマるし余 貴美子と同じように本人ノリノリで演じてる感じが楽しい。
巨漢親方は誰かとグルになってズルいことしそうな顔である。これは今作の心地よいところで、どのキャラクターも顔見たら一発でどういう人かわかるようなわかりやすさがある。

4.やはりピエール瀧さん最高です

今作は「ピエール瀧さんお帰りなさい」的な作品になる(本格復帰作)。小瀬の相撲版ロッキー的なお話ではあるが、ピエール瀧さんが再起するお話にも感じてしまい胸が熱くなってしまった。主人公のいる猿将部屋の親方役であるが、この親方と主人公小瀬との関係が「表面でなく深いとこでしっかり繋がってる」感じが出ないと今作は見てられなかったかも。

5.ライバルの静内_シズウチが怖すぎる

不謹慎で適当な主人公小瀬のライバル的存在の北海道出身の静内が超怖い。勝負に勝つか負けるかはその人間の背負っているもので決まるのであれば、ほとんどの人は彼には勝てないだろう。静内の背負ってるものはあまりに重た過ぎる。
かつてにスポーツ根性もののライバルは貧困の逆の裕福なお金持ちでなんでも持ってるキャラだったりしたが、今の時代はこういうものを持っているのがライバルになるんだなと思った。


終わりまで観ると、主人公の小瀬がイラつくものを片っ端から蹴散らしてくれるからか胸がスカッとする。私は人をお金や地位で判断する人とかは嫌いだし、簡単にお金儲けして無理やり自分に言うこと聞かすような人も嫌いだ。そういうのは時代が変わってくることで出てきた、濁ったもののような気がする。
相撲界のダークな部分もちゃんと出てくる。ダークな問題も隠すのではなく、逆にこうやってちゃんと描くことが誠実に感じる。
そういう濁ってしまったものとの対比で「昔からそのまま続いている日本の伝統って大事なところもあるなあ」と再確認するような脚本は見事。

今作は日本相撲協会みたいなところは全く関わっていない。両国国技館もセット(スゲえなあNetflix)であるし、出演者も一年くらいかけて肉体改造して撮影しているそうだ。
こういう不謹慎かもしれないけど観てて元気が出てくる作品を今の日本は待っていたのかもしれない。


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