上映会3つのルール
映画の上映会のルールとしては、以下の3つである。
1. 看板(黒板)に『なんの映画をいつ上映するか』をチョークで書くだけで、知り合いに直接電話するとかSNSを使ってお知らせとかはしない。
2. 上映する作品は『現在60才以上の年代の人が見ていた作品』で、カラー作品だけでなく白黒作品もかなりある(だいたい1950年公開作品で70才くらい)。
3. 自分が見たい作品を見ているだけなので『見にくる人は誰でも無料』である。
私は映画が大好きなので、映画を観るために小さなプロジェクターを買って、100インチのスクリーンで見ている。それに、今私が借りてる家は、以前は飲み屋だったらしくカウンターがあって、一階は靴で入るつくりになっているので、ちょうどカウンターのところにスクリーンを張って、その前に椅子を並べると、まるで小さな映画館みたくなる。
大豊町にも昔は映画館があったが今ではなくて、映画をスクリーンで見ようとしたら、車で1時間かけて高知市に出るか、車で1時間半かけて香川の宇多津まで出るかになってしまう。
以前に働いてたスーパーのイートインにスクリーンを設置してプロジェクターで『幸福の黄色いハンカチ』を上映したことがある。そしたら、なんと10人くらいが見に来てくれたのであった。みんなで観ると映画は緊張感が出てかなり集中して見れるし、なにしろ感動も大きくなり楽しかった。
近所の知り合いに「いつ上映したら見に来やすいか」聞いたら、「土曜日の午後なら」と言うので、土曜日の13時からにしてみた。毎週やってれば定着してくるかもしれないので、なにしろしばらくは毎週土曜日の13時から懐かしの映画を上映してみようかと思った。
初回は知り合いのリクエストもあって『座頭市血煙り街道』を上映したが、土曜日の13時になっても誰も来なかった。リクエストしてくれた知り合いに電話しても出なかった(洗濯機が壊れて買いに行ってたとのこと)。まあ待っててもしょうがないので一人で上映を開始した。前から見たかった作品だったのであるが、この時代の娯楽作品という感じがして面白かった。
黒板を片付ける時に、近所の知り合いのおばちゃんが買い物途中で通ったので「なんか見たい映画とかありますか?」と聞いてみた。すると「昔の映画がみたいねえ」と言うもんだから「『二十四の瞳』とかはどうですか?」って聞いたら。「それなら観るにくる」と言った。
次の週は『二十四の瞳』を上映した。これはNetflixで見れる作品だったからであるが、私も途中までしか観たことがなくて、ちゃんと終わりまで通しで観たかったのだ。
上映時間になったら3人も来た。
近所のおばちゃん(多分私の母親くらいの歳かなと思う)が最初に来て、プロレス見るのが好きな近所のおじさんが次に来て、上映はじまった頃に座頭市リクエストしてくれた人が来た。
結構長い作品ではあるが、みんな集中して観ていた。前半は小豆島の美しい風景や子役の可愛いさに盛り上がり、修学旅行で四国の金刀比羅宮(ことひらぐう)も出てくることに驚き、後半になると戦争で傷つく教え子たちの姿に泣いた。
いい映画であった。近所のおばちゃんは「私ははじめて観たから」とハンカチで目をおさえて言った。テレビのBSとかでは何度かやってたので、てっきり何度か観てるんだと思い込んでいた。私は小豆島で子供たちが大石先生の家に歩いて行くところしか観てなかったので、見終わって興奮していて、「あのシーンは泣けましたね」とか少し感想を話したりしてから、みんな満足した感じで帰っていった。
次の週は『東京物語』を上映したが、座頭市リクエストしてくれた人だけが来た。あらためて原 節子の美しさに見とれた。この人はスクリーンで観るといっそう美しい。
そして、次回は黒澤明の『隠し砦の三悪人』で、もう何度も観ている大好きな作品だ。
この作品のお姫様役である上原美佐さんはこの作品がデビュー作で、デビューから2年後に引退したのをネットで知った(なんと67歳で2003年に亡くなっておられる)。それでスクリーンで観てみたくなったのであった。
さっきプロレス見るのが好きな近所のおじさんから電話があった。「今週はなにをやるんか?、座頭市やるんか?」と聞かれて「今週は黒澤作品の『隠し砦の三悪人』ですよ。三船敏郎ですよ」と言ったら、観にくるようであった。
映画は基本一人で観る派ではあるが、上映会は楽しい。一人も来ないかもしれないし、知らない人が来るかもしれない。そういうのがなんか面白い。
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