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『四季・奈津子(1980)』を観ました。

私は完全に今作を勘違いしていました。すいませんでした。
てっきり烏丸せつこのヌードが売りの、男性向け作品と思っていたのです。
今作は東陽一監督の女性向けの作品だったのでした。

烏丸せつこのヌードは出てくるには出てきますが、エロ目線の男性向けの撮り方ではなく、身体の美しさを描く女性向けの撮り方に感じます。
映像もセリフも面白いと思ったら、シナリオなしでその場の感じでその場でセリフを書くという即興的な作り方をしたそうです。それでこんなあまり観たことない感じに仕上がっていたのでした。

映像の面白さっていうのは、車に乗っている四姉妹の次女・奈津子→精神科の病院で療養中の四女を見舞う→四女が観たいというテントの演劇を見にいく→車で着くと演劇会場は大雨と、映像がどんどんテンポよく進んでいく感じ。

女性向けの作品というのは内容もそうで、地元で仕事や恋人との関係が無難に着地しそうなタイミングで、「東京でヌード写真を取らないか」とカメラマンに言われて、人生が変わり出すというお話。東京に出て自分を試してみたい、もっと違う人生を生きてみたい、そういうのがテーマのお話です。

このお話自体が烏丸せつこの当時の状況とリンクしている。クラリオンガールに選ばれ男性誌のグラビアによく取り上げられていたが、演技はほぼ素人の烏丸せつこが主演で、お話は都会に出て有名になろうとする女性のお話という、なんだかこの瞬間しか撮れないようなドキュメントみたいな作品である。

登場人物が面白いのも魅力で、四女は精神科の病院で療養中で見るからに繊細だし、東京で暮らす三女は学生運動に夢中で自宅にはほとんど帰らないで、奈津子が女優になりたいとか言うと「バッカみたい」と言い捨てる武闘派タイプ。東京に住むケイ(なんと作詞家の阿木燿子)は性に奔放でセックスを生活の一部として考えているし、ケイの友人の写真家はケイの安易な性行動に対して否定的な態度である。
なんというか、物語を進めるための頭の悪い行動をするキャラクターがいないし、無理やりな展開みたいのがないので、見ていて心地よい。

少し見始めたらそのまま最後まで見入ってしまいました。配信(U-NEXTです)でなければ見なかった作品でしたが、私みたく勘違いしている女性の方におすすめしたい作品です。

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