経営推進の要諦

組織全体を同じ方向にもっていくためには、戦略、オペレーション、組織、人材のすべてが全体最適として推進しなければならない。重要なのは、全体最適ということである。よくあるのが、それぞれ個別最適となっていて、戦略とリンクしていないケースがよく起きる。常に戦略がスタート地点である。戦略を実現するためのオペレーションであり、組織体制であり、人材である。

これまでの自身の経験をもとに各観点で要諦を述べておきたい。

<戦略>
目標設定することがまずスタート地点。この目標そのものはある程度感覚的なものでも構わないと思う。マーケットの規模感と自社のシェア、まだ進出していないマーケット規模を鑑み、10年後、5年後の業績の規模感を目標に設定するなどでも良い。ただし5年後、10年後の長期的な目標を設定せず、目先の来年の目標だけを掲げる企業もあるが、個人的にはそれだとこれまでの延長線上の考え方になってしまい、大きく組織を変えるということにはならないのではないかと危惧している。ある程度大ぼら吹きでもいいので、5年後には倍にするなどの野心的な目標を掲げたほうが、わかりやすく推進できるので、中長期の目標は設定したほうがいいと考える。

その上で、この中長期目標と現状のギャップをどう埋めていくかかが戦略であるであると考えている。戦略の立て方は色々あるかもしれないが、私は基本的には現場の情報を集約するアプローチをとっている。現場にどのように達成できるか、達成するために必要なリソースを洗い出してもらったうえで、最終的にトップマネジメントがどこに投資するかを意思決定する。

<組織>
ヒト・モノ・カネなどのリソース配分のことである。
結局のところ戦略を実現するにはこれらのリソースをどう配分するかが重要である。そして、リソースには限りがあるため、選択と集中が必要である。よくある事例としては、単に事業部からあがってきたリソースプランをそのままおしなべて平均的にリソースを配分してしまうことである。事業には濃淡があるはずである。衰退期にある事業はリソースを減らす、あるいは売却や撤退も検討すべきである。一方でこれから成長期に入る事業はヒト・モノ・カネを増やすべきである。このように濃淡をつけたリソース配分が必要であるが、そのためには事業ポートフォリオを分析する必要がある。事業ポートフォリオはいくつかやり方があるが、たとえばもっともシンプルなのは縦軸に成長性、横軸に収益性にして各事業部の状況をプロットする。現状だけでなく、過去5年間の変遷まで見れるようになればどの事業がどういうトレンドなのかまで把握しやすいので、おすすめである。

<オペレーション>
経営管理サイクル、ツール、システムである。
経営管理項目としては、戦略、事業ポートフォリオ、財務管理、生産管理、人材管理などである。これらの項目を定期的にレビューし、目標とギャップがある場合はどうやってそのギャップを埋めるかまで考えて実行する必要がある。

ツールやシステムは生産性向上のためである。極力事務的なことはツールやシステムで効率化し、クリエイティブな仕事により多くの業務量を投入することが目的である。結局のところ一人あたりの業務量そのものは年間で2000時間程度だと思うが、それを事務に回すか、クリエイティブなことに回すか、どちらが重要かと言えばもはや言うまでもないだろう。

<人材>
これが一番重要である。いくら戦略を描こうが、リソース配分しようが、つまるところ最終的に実行するのはそれぞれの現場の人だからである。

人材の目標はシンプルである。現場が、①戦略を理解し、②戦略の中の自分の役割を認識し、③役割を実行するために必要なサポートを提供し、④モチベーションを維持し続けられるようなインセンティブを提供すること、である。

これが全てといっても過言ではないくらい重要である。このためには、コミュニケーションが必須である。組織は基本的にはピラミッド構造で上意下達の体制となっているはずである。この取締役から部長へ、部長から課長へ、課長からスタッフへ、などのように各階層から情報がクロスする際にコミュニケーションが重要になってくる。ここでは必ずコミュニケーションロスが発生する。最悪なのは、「上がそう言っているから」と自分自身理解せず、ただ下に背景を説明せずに押し付けるパターンである。

各現場が戦略とその中での自分の業務の位置づけ、自分の職務を達成するための支援がありさえすればいいだが、そもそもコミュニケーションが上手くいっておらず、そもそも戦略を知らない、職務を遂行するためのサポートがなく力業で何とかせよというのが現状ではないだろうか。これでは各現場がパフォーマンスをしろと言ってもできるはずがない。

人材を最適化するためには以下2点を実施。
1.現状を指標化し改善
戦略を知っていること、戦略の中での自分の職務、職務を遂行するためのサポート、インセンティブ。まずはこの4項目がどれだけ徹底されているかを常に指標化し、改善していくことが重要である。

2.行動変容理論の実践
次にこれを改善していくためには、取締役、部長、課長など各階層の人たち自身が考え方、行動を常に改善していかなければならない。行動変容を促す理論は多くあり、ここ30年研究されてきた。「学習する組織」と呼ばれるが、この理論をいかに実践していくかも明確にあるため、しっかりプログラムすれば作業そのものはそこまで難しくない。


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