組織変革〜個人パフォーマンスと企業業績の相関関係

過去に組織健全度指数と業績の相関関係を掲載したが、そこでは組織健全度指数を測る項目として37項目あり、健全度指数が高い企業は低い企業よりも3倍以上高い業績を上げていることを紹介した。

特に企業の文化やビジネスモデルによって特に重要な項目は異なってくるのだが、どの企業形態でも重要なのがキャリア、インセンティブ、スキル、社員間のコミュニケーションなど個々人の職務環境が共通して重要であることがわかった。

今回は、その「個」の部分をもう少し深掘りして、「個」にとって具体的にどういったことが組織のパフォーマンスに影響するのかを見てみたい。

この調査はアメリカのギャラップ社が2000のメタ分析と8000のビジネスケースを含む自社データベースをもとに調査したものになる(1)

以下の表は、各12項目が離職率・顧客満足度・生産性・収益性にそれぞれどの程度相関しているかを示している。

1. Know what is expected:自分の職務の期待値が何かを理解していること
2. Materials and equipment : 職務を遂行するにあたってのデータ、ツールなどがあること
3. Opportunities to do what I do best : 職務が自分の得意なことであること
4. Recognition/praise : 成果に対する賞賛が頻繁にあること
5. Cares about me : 上司や周囲に親身にサポートしてくれる人がいること
6.Encourage development : 自分の成長を後押ししてくれる人がいること
7. Opinions count : 自分の意見が尊重されること
8.Mission/purpose : 企業のミッションや目的と自分の職務がリンクしていること
9.Committed – quality : 周囲の人が仕事にコミットしていること
10. Best Friend : 周囲がフレンドリーな人間関係か
11.Talked about progress : 組織のミッションや目的を実現するための施策を定期的に共有
12.Opportunities to learn and grow : 自身の学びや成長を共有すること

この12項目の数値が高い企業とそうでない企業を比べた結果、それぞれの効果(離職率、顧客満足度、生産性、収益性)に大きな違いが出た。たとえば生産性の観点でいうと、数値が高い企業とそうでない企業の一人当たりの月次売上を比べた時、80,0000ドルから120,000ドルの差があり、円ベースでおよそ10百万円、年間で1億以上違う。またその成功確率も、高い企業と小さい企業では成功確率が2倍違うことがわかった。

以上12項目が、各職場環境で行われているかを改めて留意してみるべきだと思う。これらの項目は、決して思いつきベースのものではなく、ギャラップ社が過去数百のケース、メタ分析を長年研究してきた結果であり、理論的裏付けが取れている実践法だからである。

これらの項目をしっかり遂行すれば、個々人のパフォーマンスは改善され、それが結果として、離職率や生産性、収益性など具体的な組織のパフォーマンスにつながる。ただしあくまでも長期的な業績であり、短期的に向こう半年や来年成果が上がることを期待すべきではない。また新製品のように目に見えてわかる成果でもない。

組織健全度指数と業績の相関関係で紹介したマッキンゼーのアプローチでは、組織健全度が上がれば業績もあがるとされているが、それは前提としてはあくまでも長期的な業績ということである。

こういった「個」のパフォーマンスが組織にどう影響させているかは目に見えなくわかりづらい。しかし、売上や利益などわかりやすい計数をただ追っていてもそれが向上することは決してない。トップがいくら笛を吹けど現場は動かない。なぜなら、結局のところ組織は人だからである。売上や利益は、それを作るために従業員が見えない努力をしてきた結果にすぎず、結果だけを見てそもそもの根源である人を見ないのは何の解決にならない。数字で推し量れるものほど簡単なものはない。重要なのは、いかに「個」を生き生きと育て、大変ではあるが前向きにひたむきに努力できるバックアップをすることができるか、その仕組みを作るのがトップマネジメントの重要な仕事である。

ちなみに従業員満足度を測るツールは色々あるが、大半は意味がない。なぜなら従業員満足度をアンケート調査したとしても、それが実際の運用に反映されないからである。現状の満足度の数字だけを見て、何となくわかったという程度でしか現状は使われていないのではないだろうか。そういった大げさなツールを使うのではなく、もっと本質的に上記の12項目の重要性をマネジメントが理解し、どうオペレーションとして組織全体に浸透させるのかを考えることが本質的に重要である。

(1)James K, Frank L. Schmidt, Corey L. M. Keyes, ”WELL-BEING THE WORKPLACE AND ITS RELATIONSHIP TO BUSINESS OUTCOMES”

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