組織変革~学習する組織

「学習する組織」は、マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲが提唱した理論です。1990年、つまり30年前に発刊されてから多くの経営者や現場リーダー、組織変革を担う担当者にバイブルとして読まれ続けてきました。

「学習する組織」によれば、組織として変化をする必要があるとき、多くの人は抵抗します。しかしそれは、変化そのものに抵抗しているわけではなく、何の対話もなしに一方的に変化をさせられることに多くの人は抵抗をするのです。

しかしながら、どのように変化すべきかを自分たち自身で考え、変化のプロセスに関与することができれば、抵抗でなくむしろ建設的に物事が動きます。

学習する組織とは、3つの学習する能力を兼ね備えた組織のこと言います。すなわち、1つ目は、複雑性を理解する力、2つ目は共創的に対話する力、3つ目は志を育成する力です。

1つ目の複雑性を理解する力ですが、そもそも世の中は我々には到底理解できないほど複雑です。一つのことをすると、それが他に影響し、場合によっては悪影響を引き起こす可能性があります。目の前の表層的な課題を良かれと思って解決しようとした結果、それが逆に反発をくらい、組織内の関係性が悪化し、余計に組織として機能不全に陥ってしまう可能性もあります。

こういった問題においては、氷山の一角となっている表層的な課題深掘り、真の原因は何かを突き詰めようとする本質的な動きが必要になってきますが、そのためにはこの複雑性を理解する力が求められてきます。

2つ目の共創的に対話する力とは、人は往々にして自分の立場や経験をもとに相手が話していることを判断しがちです。そうすると一方的なコミュニケーションとなってしまい対話ができなくなり、その結果問題解決ができなくなります。そうではなく、自分の考えを一旦脇に置き、お互いの考え、立場、役割をまずは率直に意見しあう。そして、お互いの立場や背景を共通認識をもってはじめて同じスタートラインに立つことができるのです。そのうえで過去の経験やしがらみを取り除いたうえで、真に問題解決のための議論をするという姿勢が必要になってきます。

3つ目は、志を育成する力とは、個人のビジョンや夢、目標をもつことです。組織レベルでもビジョン、目標を持つこと。そうすることが変化する原動力となります。

以上が学習する組織の概略になります。
これは過去の記載したU理論と概ね同じアプローチに類似しています。

U理論では、まずは自分の考えを保留する。データや情報を観察し、お互いの立場を理解したうえで、率直に問題解決のために議論し、試行錯誤することアプローチをとっています。差異としては、学習する組織には個人レベルと組織レベルのビジョンや目標に言及されていることです。

結局のところ、これらの理論をどのように実行することができるかというのが課題だと考えます。
現状の組織体制は、ピラミッド構造になってしまっている。横の構造としては営業や管理、生産があり、縦の構造としては社長、部長、課長などの階層がある。このような中で組織体制でも学習する組織やU理論は適用可能なのだろうか。

結論としては可能だと思います。

まず緊急かつ重要なことに関しては、ある程度は中央集権的に物事を判断しなければならないケースは多いはずです。ここで重要なのはそれらの意思決定が仮の意思決定であるという位置付けにすべきです。重要なことを意思決定した場合、当然影響も大きくなり、想定しえなかった事態が往々にして出てきます。それらの問題をくみ取り、状況に応じた調整をすることが必要です。

一方で緊急的なことではないが、重要なことについてはボトムアップ的に問題解決策を会社として取りまとめることは不可能ではありません。

そのためには、まずはトップマネジメントが行わなければならないならないことは、Whatを決めることである。具体的にどういった課題を解決したいのか、そのテーマを決定するのはトップマネジメントであるべきです。

そのテーマを決定した後は、具体的に解決するための体制を構築する。チーム編成だけでなく、どうすればそのテーマに関する知見をもれなく集約できるのかをそのチームに考えてもらう。ここで重要なのは、常に現場視点が必要であるということです。チーム内で閉じたやり取りではなく、現場も参画してもらい、関係者全員が当事者意識をもってもらうことが重要です。

緊急かつ重要なことも仮の意思決定をしたうえで出てきた問題に応じて順次調整作業を行う。緊急ではないが重要なことに関してはチーム編成をし関係当事者全員を当事者意識をもってもらうように巻き込み、絶え間なく問題解決をし続けるということが重要です。
このように対応していけば、変化に強い組織になれるのではないでしょうか。

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