組織変革~実践

経営施策を推進する際、日本と海外ではスピード感がまるで違う。海外ではクイックに物事が実行されていく一方で、日本では吹けど動かず。

その原因は何か。日本では異なる意見に対して自分の考えを主張することに不慣れな傾向がある。異なる意見に対して、自分の考えを主張するよりも沈黙する傾向にある。そのため、本音ベースで意見の合意を取るのが難しく、その結果面従腹背の状態となり、建前上は進めるふりはするが、実際に本気で進めようとする人がほぼいない状態となり、数字としても成果が表れてこないというのが経験的に感じるところである。

したがって日本的経営としては、トップダウンで物事を意思決定していくのではなく、ボトムアップで意見を集約し、最終的にマネジメントがインパクトのある施策として意思決定するというやり方が現場にもっとも当事者意識を持ってもらいやすいため、施策の中身そのものの精度も高く、且つ実行力があるアプローチだと考えられる。

ボトムアップアプローチをとる場合、もっとも重要なことは「個」のパフォーマンスを改善することである。アメリカのようにトップダウンで経営をする場合はトップの能力がもっとも重要になってくるが、ボトムアップの場合は各個人のパフォーマンスがもっとも重要になってくる。実際、ギャラップ社の数百ケースを分析した結果、「個」パフォーマンス向上が「組織」パフォーマンス向上につながる実践的アプローチも構築されている

もちろん、このギャラップ社が提唱するアプローチを実際に実行していくには各個人の行動変容が必要になってくるが、この行動変容のやり方についてもこれまで多くの研究がなされてきている。U理論や学習する組織などが有名であるが、これらは「組織」よりも「個」の理論になっているため、「組織」の観点が含まれている理論としてハーバードのロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒーが提唱している理論のほうがよりアクションしやすいと考えている。この理論では、組織目標につながる個人目標を作成するのだが、その個人目標を達成するために阻害している心理的要因を深堀し、深層心理を改善することで目標達成するという理論である。

つまり、ギャラップ社の理論とハーバードの理論を実際に実行することにより、組織全体で行動変容を促し、結果として個人と組織のパフォーマンスを向上させていく。具体的なアプローチとしては大きく二つである。

①       トップと組織目標を合意
②       取締役・部長・課長が順次行動変容のトレーニングを実施

行動変容トレーニングの手順
アンケート実施
対象者の部下に現状把握のためのアンケート調査を実施し、現状の組織健全度を指標化。

全体ワークショップ実施
行動変容の全体ワークショップを実施。ワークショップでは、アンケート結果の共有、会社のビジョン・目標・マインドの議論、対象者は改善目標とアクションプランを作成。

アクションプラン実行
定期的にアクションプランの進捗状況を1on1で確認

中間ワークショップ実施
中間時点で全体ワークショップを開き、進捗状況を共有

再度アンケートし効果検証
最後に、アンケート調査を再度実施

取締役のトレーニング後、部長、課長まで順次実施

上記の通り、社長が率先して会社のビジョン・目標・マインドの議論を推進し、その会社の目標を実現するための個々人の目標をセットすることにより、個人の目標達成が組織の目標達成となるようにしている。どういった組織目標を立てればいいのか、どのように行動変容していくのか、いずれも理論的に実証済のアプローチをとることで成功確率を上げる。


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