組織変革~U理論の実践法

ビジネスにおいていくらリーダーが言っても従業員は吹けど動かずの状態でアクションが実行されないケースはよく見かけると思います。こういったときにトップダウンで頭ごなしに指示をしたとしてもほぼ効果はなく、指示が強く範囲が広ければ広いほど、むしろ反発を招きかねません。自分では良かれと思って推進しているにもかかわらず、むしろ事態は悪化しているような状況を経験されたことはないでしょうか。

このようなときに参考になるのがU理論です。この理論は、マサチューセッツ工科大学上級講師、C・オットー・シャーマー博士が、変容やイノベーションを起こすために構築した理論です。約130名の学者やビジネスマン、発明家、科学者、教育者、芸術家からなる革新的なリーダーにインタビューによって原型が作られ、その後実践を通じて現在の理論として体系化されています。

この理論のプロセスとしては以下で構成されます。
①ダウンローディングを保留すること
②観る(シーイング)
③感じ取る(センシング)
④プレゼンシング

①    ダウンローディングとは、過去の経験から物事を判断すること。誰かが話していることも過去の自分の経験から照らして正しいか間違っているかを判断したりするようなこと。この状態の場合、相手の立場などが理解できず、一方的なコミュニケーションとなり、事態を改善するどころかむしろ悪化させることにつながります。そのため、「保留」といい、相手に対して何かしらの自分の考えが頭をよぎったとして、口にせず、客観的に頭の中で自分はそのように思っているんだなと一歩引いた状態で自分を見ておくということです。これは決して相手の考えに従うわけではなく、相手の考えも自分の考えも一旦判断せず、まずは傾聴するのみという状態になります。

②    観る(シーイング)は、目の前の事象をあるがまま見ている状態で、このときも何かを判断せず保留し続けることが重要。現場視察やデータを見るもの有効です。

③    感じ取る(センシング)は、相手の立場になって考えてみることです。これは幼い頃から相手を思いやるなど言われてきましたが、決して簡単なことではありません。相手には様々な背景や立場がありますので、決して相手を100%理解することはできません。しかし、ヒントとしては実際に現場を体験させてもらうなどによって相手の立場をより理解できるかもしれません。ただし相手の立場を理解したうえで改めて問題に立ち向かうことになります。そして、利己的に問題解決をしようとするのではなく、相手への献身的な思いから問題解決をしているとお互いに信頼しあう関係になることが重要です。

④    プレゼンシングは、これまでの過程から過去のしがらみ、お互いの立場の違い、信頼関係を構築したうえで、常識に囚われずに、今まで執着してきたことを手放す勇気が必要です。

⑤    これらの一連の工程は、一度やって終わりではなく、試行錯誤し続けるということが重要です。

以上がU理論の概略になります。

それではここからがより実践となりますが、私なりの実践方法は以下の手順になります。

①       論点設定。現状を観るにあたって必要なデータや情報は何か。それらの情報は誰が持っているのか。そしてそれらの情報をどのように収集するかをまずは関係者で議論することが必要です。

②       ワークショップのための資料作成。上記の工程により必要なデータや情報を収集し、議論できるような形にします。

③       ワークショップ実施。
(ア)  まずはU理論の概要、議論するうえでダウンローディングしないなどの議論するための前提状況を共有。重要なのは何を意見しても許される心理的安全性を担保することが重要になってきます。
(イ)  事前に準備した資料をもとに現状を関係者全員で確認します。
(ウ)  全員でフリーディスカッションし、課題や施策、アクションプランにまで落とし込みます。
(エ)  目先取るべきアクションはすぐに実行する。
(オ)  6ヶ月毎など定期的に情報をアップデートし、同様のワークショップを開きます。重要なのはめげずに試行錯誤することです。決して一度やって諦めるのではなく、継続的に実施していきましょう。この際、前回決めたアクションの状況を皆で共有します。
(カ)  ワークショップでは会議のファシリテーションが非常に重要になってきます。色々な人の意見に対してダウンローディングのように是非を問うのではなく、なぜそのような状況なのかを深堀りできるように問うことが重要です。また、原因を深堀しつつ、それではどうやったら解決できるのかも問うことが必要です。ファシリテーターが解決しようとせず、あくまでも全員で一緒に考えて解決するという姿勢が必要です。

以上がU理論とビジネス現場での実践法になります。

理論や実践法を記載しましたが、結局のところ重要なのは自分の心の持ち方です。自分で問題を解決できるようなことなどほとんどありません。だからこそ開かれた心で常識にとらわれずに色々な人の意見を聞くという態度が必要だと思います。解決案も聞いたから出てくるものではありません。これも皆で頭をひねりながら議論し、実践し、その繰り返しの中で出てくるものです。決して諦めずに議論を止めないことが重要です

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?