3分で読む企業分析

【Sansan】3分で読む企業分析

「海外進出はうまくいくのか?国内の伸び代は?」SaaS企業として6月にマザーズ上場を果たし急成長する名刺管理のSansan。決算や戦略についてまとめた。

【売上】50%成長を続け売上100億円超えの見込み

2016年から継続的に50%以上の売上成長を達成している。主力事業であるtoB向け名刺管理ツールsansanが売上の90%以上を占める。

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Sansan成長可能性に関する説明資料

【提供価値】社内の人脈活用を最大化

サービスには様々な機能が盛り込まれているが、有名なCMのメッセージ同様、顧客にとっての最大の利用価値は「人脈を最大限活用し営業できること」だろう。

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Sansan成長可能性に関する説明資料

未接触キーマンの自動特定・可視化、同僚の人脈の強みの把握といった機能が盛り込まれている。

また、Sansan導入企業の解約率は0.73%とかなり低い水準である(決算参照)。これは、実際に導入した企業が本当にコストカットと営業成績の向上を達成していることの現れと言えるのではないか。

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Sansan成長可能性に関する説明資料

【強み】盤石な顧客基盤と質の高いUX

Sansanは、法人向け名刺管理サービスで82%という非常に高いシェア率を達成している。

これは、Sansanが自ら市場を開拓し早期参入したことにより先行者利益を得たことが起因しているだろう。名刺管理サービスのスイッチングコストは高く、早期に顧客を獲得すれば競合にはシェアを奪われにくい構造なのではないか。

加えて、社長の寺田は三井物産出身であり、商社での経験とコネを生かして質の高い営業組織を作れたため、早期の顧客獲得で成果をあげられたのではないか。また、非常に精度の高い名刺読み込み機能など、質の高いUXを実現したため、競合の追随を許さなかったのだろう。

【国内の伸び代】今後も高い国内シェアを維持・拡大する

上述の背景から、国内では盤石な顧客基盤を形成している。

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Sansan成長可能性に関する説明資料

国内の競合には、LINEのmyBridgeやKDDIの名刺バンクがあるが、Sansanのサービス解約率は低くスイッチングコストも高いため、国内では今後も圧倒的な地位を維持していくと推測できる。さらに、名刺管理ツールを未導入の企業はまだ大量に残っており、名刺管理ツールとしてのブランドを確立させたSansanは確実に今後も売上を伸ばしていくだろう。

ただし、Sansanのような営業ツールを必要とするのは主にtoB事業を行う企業であると考えられる。よって、全ての企業が顧客対象とはならないことに留意したい。

【海外進出戦略①】日本企業とのコネクションを活用

海外進出にあたって最も重要となるのは、日本企業とのコネクションの活用だろう。この既存アセットを活用しやすい国の選定がまず必要になる。

以下の図は、各国における日系企業の拠点数の推移である。拠点数が多い国の方が、既存のコネを活かして進出しやすいと考えられる。

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務省 「海外在留邦人数調査統計」

【海外進出戦略②】米国進出はなぜ難しいか

もう一つ必要な視点は、日本での成功ノウハウを転用できるか。つまり、名刺や営業を巡る文化や慣習が日本と似ているかということである。

この点、米国への進出はリスクがある。以下の記事からも、米国では必ずしも名刺を渡さないことが読み取れる。また、地理的な違いもある。日本は首都東京にほとんどの企業が集中しており、面と向かって営業することがほとんどだが、国土の広い米国ではインサイドセールスも発達しており、名刺の利用は少ないと推測される。

実際にSansanが支社の創設先に選択したのはシンガポールであり、ここを拠点にしてインドネシア・タイ・ベトナムに進出するとのことだ。この妥当性の検証には各国における慣習や競合調査が必要だが、東南アジア全体での潜在市場規模や、法制度・通貨制度などを鑑みれば、中国に比べてもシンガポールは妥当性が高いといえる。

【まとめ】

・Sansanは毎年50%以上売上を急成長させている

・早期参入と高いUXにより顧客基盤を獲得。高いシェアを実現。

・今後も高いシェア率の維持と拡大が見込まれる

・米国への進出には課題があるが、東南アジアでの拡大も見据える

海外各国における競合や勝ち筋については、また改めて詳細に分析しまとめていきたい。

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