10月は3R推進月間、からの・・・? 20211004解説
30年ほど前から、10月はリサイクル推進月間、あらため、3R推進月間として、毎年さまざまなイベント等が行われています。5月30日のゴミゼロの日もそうですが、今は国が音頭をとる官製イベント・キャンペーンとなっていますが、始まりは民間団体、地方自治体が始めたものです。
あらためて、3Rとは?
Reduce、Reuse、Recycle(リデュース・リユース・リサイクル)の3単語の頭文字をとって、3Rです。
環境省のこちらのページを見ると、いろいろとやってるな、ということがわかります。
で、3Rとは何か?ということですが、廃棄物を減らす、3つのやり方です。
Reduce(リデュース)=発生抑制
Reuse(リユース)=再使用
Recycle(リサイクル)=再生利用
Reduce(リデュース)=発生抑制は、そもそも、廃棄物になるものを減らそうよ、ということで、具体的には、過剰包装をやめるとか、もったいない精神で製品を長く使うとか、長く製品を設計・製造するとか、といった活動を行うことで実現します。
Reuse(リユース)=再使用は、要らなくなったものを使いまわすことで、結果として廃棄物にならないようにすることで、クルマや洋服や家財道具などの中古品流通や、牛乳びんやビールびんや一升などの繰り返し利用や、包装紙や印字済みのコピー用紙を裏紙として使うとか、お菓子の缶や箱を収納に使うとか、いろいろ。
Recycle(リサイクル)=再生利用は、要らなくなったものをいったん素材の段階に戻して使うこと(再生資源)で、鉄・アルミ・銅などの金属スクラップ、古紙を、廃プラスチックなどなど。
廃棄物処理の優先順位
2000年の循環型社会推進基本法で、廃棄物処理の優先順位が政策的に決められました。
具体的には次のとおりで、①②③が、3RのReduce、Reuse、Recycle(リデュース・リユース・リサイクル)です。④熱回収は、サーマル・リカバリー(Thermal Recovery)で、焼却して発生する熱を、温水・発電などの形で利用すること。サーマル・リサイクルと言われますが、これは和製英語です。
①発生抑制
②再使用
③再生利用
④熱回収
⑤適正処分
で、①②③④いずれもできないものは、⑤の対象となり、最後は最終処分場に埋め立てられることになります。
3Rでは不十分で、Refuse(リフューズ)=拒否する、Repair(リペア)=修理する、を加えて5Rが大切だ、という意見もあります。
サーキュラー・エコノミーの登場
さて、最近、注目される環境キーワードの1つが、サーキュラー・エコノミー(循環経済)。2010年ごろから、欧州で広がり始めた考え方ですが、日本で言うところの循環型社会とどう違うのでしょうか?
一方通行の大量生産・大量消費・大量廃棄社会は持続可能ではない、というのは、サーキュラー・エコノミーが提唱され始めた2010年ごろにわかったことではなく、循環社会基本法ができた2000年ごろにわかったことでもなく、私が廃棄物問題の勉強を始めた1990年ごろでも、ちょっと勉強すればすぐにわかる話でした。つまり、もう何十年も前から指摘されていたことです。
で、一方通行がよくないわけだから、循環させればいいんだよね、というのも、ちょっと考えればすぐにわかる話です。
ただ、理屈はそうでも、法律に落とし込まれ、経済活動に組み込まれるにはずいぶんと時間がかかったわけですが、それにしても、考え方として、画期的というわけではないわけです。
環境白書などにも、オランダ政府がつくったサーキュラーエコノミーの図が引用されていたりしますが、それを見ても、「そらそうだよね、今さら何を」と、私などは思ったりします。
発生抑制か排出抑制か
しかし、もし、欧州流サーキュラー・エコノミーと、日本流循環型社会の間に違いがあるとすれば、それは3Rの最初、Reduce(リデュース)=発生抑制に対するアプローチではないかと思います。
日本流循環型社会では、Reduce(リデュース)は、たとえば、「使用済みになったものが、なるべくごみとして廃棄されることが少なくなるように、ものを製造・加工・販売すること」と説明されています。
これは厳密にいうと、発生抑制ではなくて、排出抑制です。やや専門的な話になりますが、各都道府県が廃棄物政策を立案するために、産業廃棄物実態調査が行われています。発生と排出はどう違うのかというと、次の通り。
発生量ー有価物量=排出量
「使用済みになったもの」の量(発生量)から、「値段がついて売れたもの」の量(有価物量)を引いて、残ったのが「廃棄物として処理しなければならなかった」量(排出量)ということになります。
発生抑制は発生量を減らすこと、排出抑制は排出量を減らすことなので、イコールではありません。
発生抑制は、「使用済みになったもの」の量(発生量)そのものを減らすことを目指すわけですから、「なるべく使用済みにならないように、ものを製造・加工・販売すること」となります。
3Rでは不十分だとして、RefuseやRepairを足した5Rを主張する意見があることは前述しましたが、これは、もっと発生抑制に踏み込むべきだ、という考え方に基づくものと解することができます。
循環「経済」と循環型「社会」の違い
で、欧州発サーキュラー・エコノミーは、発生抑制をビジネスモデルとして具体化しようとすることに、よりフォーカスしたものではないかな、と個人的には考えています。
いってみれば、排出抑制は廃棄物が発生してからの「出たとこ勝負」、発生抑制は廃棄物を発生させないための「出る前勝負」といった対比ですね。
また、ソサエティ(社会)ではなく、エコノミー(経済)と言っているところから、循環は、企業の事業活動の「外」ではなく、「中」で取り組むものだ、という考え方がベースにある、と見ることもできるでしょう。
循環が、企業の事業活動の「外」で行われるべきという考え方であれば、それを担うのは行政であり、廃棄物政策であり、税金投入は当然、ということになります。
一方、循環が、企業の事業活動の「中」で行われるべきという考え方であれば、それを担うのは企業であり、ビジネスモデル・商品・サービスのデザイン(設計)であり、損益計算の中で成り立つように行うのが当然、ということになります。
すると、サーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方は、OECDのPPP(汚染者負担原則、1972年)から始まる「内部化」の流れの中にあると考えられます。
汚染者負担原則は、環境汚染を予防する費用や、生じてしまった汚染を取り除く費用は、その原因者である汚染者が負担すべき、という、今となっては当たり前の考え方ですが、半世紀前には、当たり前ではなかったので、わざわざ「原則」と銘打って、企業に環境コストを負担させる論拠としたわけです。
この汚染者負担原則から、拡大生産者責任という考え方も生まれました。汚染は、工場でだけ発生するのではなく、工場から出荷された製品の使用後にも発生するよね、企業はそこまで責任を負うべきだよね、それを法律で義務付けるべきだよね、という考え方です。
しかし、循環経済は、外から強制されなくても(強制される前に)、自分たちで進めよう(内部化)、そうすることで、より高い経済的合理性を得よう、という「自主的取組」の性質が強いと思われます。
欧州各国のサーキュラー・エコノミー政策パッケージも、規制的手法というより、企業の「自主的取組」を促す環境づくりという性格の方が強そうです。