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グレタさんが日本を名指し批判したってホント?  20210821解説


日本での報道:グレタさん“日本は世界の子ども苦しめる”~日テレ

元ネタ:This Is the World Being Left to Us by Adults

ニューヨークタイムズへのグレタさん含む4ヶ国4人による寄稿

元ネタではこう書いてある

The 10 countries with the highest emissions, including China, the United States, Russia and Japan, collectively account for nearly 70 percent of global emissions.

最も多く(二酸化炭素を)排出しているのは、中国、アメリカ、ロシア、日本など10か国で、併せて世界全体の排出量のほぼ70%を占めている。

And children in those higher-emitting states face lower risks: Only one of these countries, India, is ranked as extremely high-risk in the UNICEF report.

そして、これら多量排出国の子供たちは低リスクだ:10か国中インドだけが、ユニセフ報告書で極めて高リスクとランク付けられている。

Many higher-risk countries are poorer nations from the global south, and it’s there that people will be most impacted, despite contributing the least to the problem. 

高リスク国の多くが「南」の貧しい国々で、(気候変動)問題に寄与するところが最も少ないにも関わらず、最も影響を受けるであろう人々がそこにいる。

We will not allow industrialized countries to duck responsibility for the suffering of children in other parts of the world.

先進工業国が、世界の他の国々の子供たちを苦めている責任から逃れることを許してはならない。

それを縮めると、そうなる???

日テレ報道の要約では、

スウェーデンの環境活動家・グレタさんが日本を名指しして、大量に排出する温室効果ガスが世界の子どもたちを苦しめると訴えました。

となります。

「要約」というより、「超約」というか、「創約」というか、「変約」というか。

本文では、

寄稿文でグレタさんは、日本を含む10か国が温室効果ガス排出量の7割を占めているとした上で、被害を受ける子どもの多くは排出量の少ない貧しい国々の子どもたちで、不公平だと訴えました。

となっており、冒頭の「グレタさんは」(4人の寄稿ですからね)と、末尾の「不公平だと訴えました」を除けば、上記引用部分の原文に近いですかね。

本来の趣旨は?

しかし、寄稿の趣旨は、タイトルのとおり、「これが、大人たちが私たちに残そうとしている世界なんですよ」で、将来世代である若者から現在世代の大人への批判です。

記事の最初の方には、こう書いてあります。

young people like us have been sounding this alarm for years. You just haven’t listened.

私たちのような若者は、何年も前から警告を鳴らし続けてきました。あなたがた(大人たち)は耳を傾けようともしてきませんでしたが。

SD=持続可能な開発の定義を再確認

SDGsのSD=Sustainable Development=持続可能な開発です。

その定義は、以下のとおり。

「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」

簡潔ですが、抽象度の高いこの定義には、世代間の公平性の概念が明確に含まれており、これにグレタさんらは忠実です。

グレタさんらは、「今の大人たちのやり方では、私たち将来世代のお先は真っ暗、いい加減にしてよね」と言っているわけです。

また、持続可能な開発の定義には、実は地域間(現在世代内)の公平性の概念も含まれています。現在生きているすべての人々の「欲求」が同じように「満足」させられているわけではありません。

寄稿では、ユニセフの報告書を引き合いに出し、このことを指摘しているわけです。

※ユニセフの報告書はこちら。

https://data.unicef.org/resources/childrens-climate-risk-index-report/

ということで、日テレ報道の「不公平だと訴えました」の部分は、大間違いというわけではないのですが、末尾にやはり、次のように書かれているとおり、寄稿のメインテーマは世代間の公平性の方にあると読み取るのが妥当でしょう。

The world’s young people stand with the scientists and will continue to sound the alarm.

世界の若者たちは科学者を支持し、警告を鳴らし続けます。

※科学者が何と言っているかについての解説はこちら。

※20210822タイトル変更

※20210824誤字訂正ほか軽微な補足等の修正


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