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恵文社一乗寺店|10月の本の話 2021

みなさまこんにちは。
今月も遅ればせながら、2021年10月の書籍売上ランキングをご紹介します。

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今回の首位は『翻訳目禄』。精神科医で翻訳も手掛ける阿部大樹さんが"私的なノート"に書き溜める、国や地域、時代をまたぐ味わい深いことばたちをひろく紹介する一冊です。当店では先月、本書に挿画を添えられたタダジュンさんの版画展を開催いたしました。

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「被愛的人」、「Scape goat」、「闘争か逃走」、「セロ弾きのゴーシュ」などインクの深い黒色が印象的な作品の数々。暖炉上の壁面の小さな展示会でしたが、タダジュンさんの表現される幻想的な世界が特別の存在感を放っていました。※11月末日まで当店オンラインにて期間限定の予約受注会を行っております。

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続いて第2位は、詩人・尾形亀之助さんの詩集『カステーラのような明るい夜』。夏葉社より刊行された作品集『美しい街』同様、書籍の絶版等で触れることの難しかった詩の数々を味わうことができます。編集は詩人・西尾勝彦さん。装丁を手がけたのはクラフト・エヴィング商會。そして版元の七月堂や校正を担った航星舎など、携わった人々の努力と熱によって編み出された美しい一冊です。

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第3位は前回ランキングでも2位にランクインした、くどうれいんさんのロングセラー『わたしを空腹にしないほうがいい』。9月には初の童話『プンスカジャム』(福音館書店)を出版するなど、ますます活躍の場を広げてらっしゃいます。

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第4位は『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』。7月の発刊当初は当店でもすぐに売り切れとなってしまいましたが、現在第三版が再入荷しています。本書は、作詞家・松本隆さんが「親子ほどの年齢が離れていても、深い友情で結ばれている」という京都の本屋・ホホホ座の山下賢二さんとの対談集。カフェ火裏蓮花、ジャズスポット ヤマトヤ、イノダコーヒー本店旧館、かもがわカフェ、と京都でおなじみの喫茶店が舞台となっています。ご存知の方は場所の空気を思い出しながら。未訪の方は是非この機会に。珈琲を片手に松本隆さんの言葉に耳を傾けてみてください。

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第5位は、お風呂好きで本好きなひとりから生まれた文庫〈長湯文庫〉の記念すべき一作目『するべきことは何ひとつ』。こちらはなんとお風呂の中で読めるように撥水性の紙を使用してつくられています。収録されるのは『貝がら千話1/2/3』に掲載されたモノ・ホーミーさんの短編。今月26日はいい風呂(1126)の日ですね。長湯にのぼせてしまわないようご注意いただきながら、優しく奇妙でつかみどころのない、湯けむりのようなお話を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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第6位は写真家・奥山淳志さんの新刊『動物たちの家』が再びランクイン。来月12月14日から20日には、本書に収められた写真を中心に未収録作品を加え、当店のギャラリーアンフェールにて出版記念写真展を開催致します。本書と共に、小さな生命たちが放つ、存在の確かな美しさをまっすぐ捉えた作品をぜひお楽しみください。写真展詳細はこちら→奥山淳志『動物たちの家』出版記念写真展

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続く第7位は『のほほんと暮らす』新装ポケット版。詩人・西尾勝彦さんが、自身の掲げる「のほほん」をほんのりとしたユーモアにくるみながら考察した一冊です。店頭では、詩集『歩きながらはじまること』や前述の『カステーラのような明るい夜』などと共に、西尾勝彦さん+尾形亀之助さんの小さなフェアを開催中。大変幅広い年齢層のお客様に手に取っていただいている印象です。そもそも、のほほんとは何でしょうか。本書には、ほんの少し自分を楽にし、暮らしをたのしくする小さな秘訣がちりばめられています。

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第8位は『Subject & Object』。当店では音楽レーベル「flau」のアートワークでもおなじみのイラストレーター・三宅瑠人さんの待望の初作品集です。クライアントが提示するサブジェクト(主題)に、繊細で卓抜した描写力と温かな色彩感覚で描かれた850点に及ぶオブジェクト(対象物)の数々。まるでお菓子箱のような角丸ハードカバーの装丁まで美しく、ギフトブックにもおすすめです。

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第9位には、再び独立研究者・森田真生さんの新刊『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』がランクイン。2020年春からの「混沌」と「生まれ変わり」を記録した、四季折々のドキュメント。リチャード・パワーズ、宮沢賢治の引用にもはっとさせられます。さらに先日、森田真生さんが来店され「Play!」の文字と一緒にサインを入れてくださいました。限定数となりますが、関連本と共に店頭・オンラインにてご用意しております。

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第10位には、当店ロングロングセラー『天文学と印刷ー新たな世界像を求めて 展覧会図録』が再びランクイン。まだご覧になっていない方は是非一度ページを開いてみてください。


このほか、徳島のコーヒー焙煎所・aalto coffeeの庄野雄治さんが編纂した、「コーヒーを飲みながら読んで欲しい近代小説集」の第三弾『コーヒーと短編』(庄野雄治/ミルブックス)や、季節を彩る身近な花について、花ことば、世界の神話や伝説、古典文学や詩歌などのエピソードとともに紹介する『花のことば12ヶ月』(川崎景介/山と溪谷社)、またフィンランド人の著者が、憧れの女性・清少納言を追いかけて旅をする長編エッセイ『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』(ミア・カンキマキ/草思社)もよく手に取っていただきました。

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それでは、次回のランキングもお楽しみに。

(担当 藤林)

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1.『翻訳目禄』阿部大樹(雷鳥社)
2.『カステーラのような明るい夜』尾形亀之助(七月堂)
3.『わたしを空腹にしないほうがいい』くどうれいん(BOOKNERD)
4.『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』山下賢二(夏葉社)
5.『するべきことは何ひとつ』モノ・ホーミー(さりげなく)
6.『動物たちの家』奥山淳志(みすず書房)
7.『のほほんと暮らす』西尾勝彦(七月堂)
8.『Subject & Object』三宅瑠人(グラフィック社)
9.『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』森田真生(集英社)
10.『天文学と印刷ー新たな世界像を求めて 展覧会図録』印刷博物館学芸企画室 / トッパンアイデアセンター / 五柳書院(凸版印刷株式会社 印刷博物館)


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