12月14日-20日|奥山淳志『動物たちの家』出版記念写真展
『庭とエスキース』の著者である写真家の奥山淳志による、新しい動物記『動物たちの家』。その出版を記念し、本書に収められた写真を中心に未収録作品を加え展示・販売します。
幼いころからハムスターやインコ、犬など数々の動物たちと共に暮してきた奥山淳志は、動物たちへとむかう自身の感情の源を丁寧に見つめ続けます。目の前に現れた小さな友だちを想う個人的な経験は、やがて、生命や存在への普遍的でいて新しく、あたたかな思索へと繋がっていきます。
小さな生命たちが放つ、存在の確かな美しさを、まっすぐ捉えた奥山淳志の作品をぜひご覧ください。
※作家の暗室で制作された発色現像方式印画によるオリジナル・プリント約25点展示予定。
※展示期間中に『動物たちの家』をお買い上げの方には、特典として作家制作によるオリジナルフォトカード3種をプレゼントいたします。
『動物たちの家』
昨年のちょうど今頃だろうか。遠い記憶の奥底に手を伸ばすようにして文章を書きはじめた。主な内容は子供の頃に飼っていた犬、鳩、ハムスター、インコといった動物たちについてで、いわば「動物たちとの日々」とでも呼ぶべきものだった。
書いていてずっと頭にあったのは、動物たちに向かう感情の源と行方だ。ふかふかな毛並みや羽毛に包まれ、きらきらと光る瞳を持った小さな動物たちは、存在すべてが奇跡そのものだ。なぜ、この手で抱きしめたいのか、存在のすべてを求めるのか、言葉が生まれる前に惹き寄せられていく。それは一瞬にして心を奪われるような感覚に近い。
しかし、そうやって抱き寄せた動物たちとの日々はやがて終わる。動物たちがいつか去っていくのは絶対の約束だし、この約束が守り遂げられる前に僕たち自身が動物たちから遠ざかっていくこともある。人間にとって動物という存在は忘れ物になっていくこともある。実際、僕自身もそうで多くの動物たちをぞんざいに扱った。
でも動物たちの全身から伝えられたぬくもりは、やがて目を覚ます。あの日、生きていた動物たちの存在感は、火種のように小さくも強い炎を僕の胸の中で灯し続けてきたように思う。それは生命を持つもの、動物に触れた先でしか得ることができない感覚だと思う。
そして動物たちが灯す存在感は記憶のなかにだけあるものではない。ずっとつながっているとしか、あるいは今も求め続けているとしか言いようがないのだが、僕の日々には常に動物たちの存在があって、過去に覚えたあの感覚が新しい息吹をまとい続けているという実感がある。動物たちとの新しい過去と懐かしい現在。そこに見出したかったのは、生命持つものの存在の行方だったような気がする。
動物が目の前に現れると「ああ、動物がいる」と、僕の視界はその存在でいっぱいになる。視界の真ん中にいる動物たちはいつも真新しく、そして温かな奇跡のように思える。
奥山淳志
2021年12月14日(火)-20日(月)
11:00~19:00(最終日は16:00まで)
恵文社一乗寺店ギャラリーアンフェール
奥山淳志(おくやまあつし)
1972年大阪府生まれ、奈良県育ち。京都外国語大学卒業後、出版社に勤務。1998年岩手県雫石町に移住し、写真家として活動を開始。以後、東北の風土や文化を撮影するほか、人間の生きることをテーマにした作品制作をおこなう。
受賞歴に、2006年「Country Songs ここで生きている」でフォトドキュメンタリーNIPPON2006、2015年「あたらしい糸に」で第40回伊奈信男賞、写真集『弁造 Benzo』および個展「庭とエスキース」(ニコンサロン)で2018年日本写真協会賞 新人賞、2019年第35回 写真の町 東川賞・特別作家賞がある。
2018年 写真集『弁造 Benzo』(私家版)、2019年『庭とエスキース』、2021年『動物たちの家』(みすず書房)を上梓。
ホームページ https://atsushi-okuyama.com
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