非常識人−第一章・一話−
AM6:00、iphoneの耳障りなアラームで誠也は目が覚めた。冷蔵庫からブラックの缶コーヒーを取り出し、一気に飲み干す。くたびれたシャツに袖を通し、ネクタイを締める。誰もいない部屋に一人、行ってきます、と小さく呟き家を出る。それが彼の日常だ。
彼−倉本誠也は、大手電波通信事業の営業部に正社員として勤めるサラリーマンである。月収は額面で三十五万円。都内の郊外にて一人暮らし。独身貴族と言えば聞こえは良いが、日々何十項目と更新される本社からの通達に目を通し、新規顧客開拓と既存