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フィリーズレビューを振り返る~多くの短距離馬が生み出した進路~

フィリーズレビューというのは、ある意味簡単な重賞だと思う。

俺はどのレースも基本難しいと思っているし、滅多に簡単という言葉を使わない。当てようが外れようがね。考えられることはほぼ無限にあるわけで。

あくまでその中でも、という限定付きだが、フィリーズレビューは考えやすい。

●フィリーズレビュー過去3年
・18年 33.7-36.1
・19年 34.9-35.2
・20年 33.4-36.0

今年は前半3F33.7、上がり3F35.5。基本的にペースが速くなるのは間違いなく、上がりも掛かる。

予想にも書いたように、フィリーズレビューが開催されるのは3歳3月。まだ適性がはっきりしていない馬が多い。

加えてフィリーズレビューは桜花賞トライアル。牝馬に生まれた限りは桜花賞に出したいのが陣営の本音。仮に短距離馬だと感じていても、桜花賞に出したい、出るには権利が欲しい

短距離馬が桜花賞の権利を得るためにトライアルを使うとなると、マイルのチューリップ賞より1400mのフィリーズレビューのほうが好走の確率が高まると当然思う。だからフィリーズレビューは他の古馬阪神1400m重賞に比べて『短距離馬が多く出やすい』。どうしてもペースは速まる。

短距離馬の先行勢が1200mみたいなペースで前半飛ばした後、最後に直線の急坂が待ち構えている。坂が先行馬を止める。これが毎年続いているものだから、それに合わせて買うだけなんだよね。

実際今年もそういうレースになった。おかげで当たったわけだが、ペースだけでなく、『短距離馬がいたから当たった』と言える箇所が多々あったんだ。

●フィリーズレビュー出走馬
灰 テリーヌ
黒 アンブレラデート
赤 シゲルピンクルビー
白 ポールネイロン
青 ヨカヨカ
紫 ラヴケリー
黄 ヴァーチャリティ
橙 ミニーアイル
桃 フリード
水 スティクス

12.1-10.5-11.1-11.5-11.5-11.8-12.2

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フィリーズレビュー、最初のポイントはスタート後。黄ヴァーチャリティの進路取りだ。

今回休み明けのヴァーチャリティがどういう意図を持って騎乗したのかは分からないが、スタート後のヴァーチャリティの動きがレースに大きな影響を与えることになる

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黄ヴァーチャリティがスタート後内に入っていかないのだ。普通外枠だったら、外から内に入ってていくもの。スタートから直進したことで、この馬より外の二桁馬番の馬たちは、ヴァーチャリティが壁になって内に入れられない状況が生まれてしまっている

この画像だとよく分かる。黄ヴァーチャリティの外、黒線で囲んだ部分の馬たちが内へ進んでいけず、一塊になってしまっている。そうしている間に内の馬たちは自分のポジションを取れるわけだから、この時点で『圧倒的内有利』となる。

9Rの春日特別で逃げたファルコニアが1着、その後ろにいたヒルノダカールが2着だったように、馬場が乾いた阪神は内が走れる状態だった。内が悪ければまだしも、内の馬場が走れる状態でここまでブロックされてしまうと外は辛い。早速レースを分けるポイントがやってきてしまった。

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2コーナー出口でもこんな具合。黄ヴァーチャリティが壁で外はまだ内に入れられていない。

内に目を移すと、赤シゲルピンクルビーは自身から見て左に1頭分以上のスペースがあったりと、内と外で馬群のタイトさが全然違う。フィリーズレビューは内回りの1400だから、当然3コーナーのコーナーは厳しい。内だって締められれば苦しくなるものだが、ここまでフリーにさせては、ロスなく回せる内枠は有利条件でしかない

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しかも向正面で青ヨカヨカが外をブロックするように進んでいたんだよね。外枠の先行馬はヴァーチャリティのブロックを抜け出したと思ったら、今度はヨカヨカのブロックを乗り越えていかないといけないものだから、より脚を使ってしまう。

黒で囲んだ外の先行馬たちは厳しかったと思うよ。早くヨカヨカを交わしていかないと3コーナーが来てしまう。タイトの3コーナーで外を回されるのは避けたい。脚を溜めるところがなく3コーナーを迎えてしまったんだ。

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3コーナー。ここでも勝負の分かれ目がやってくる。

青ヨカヨカが今度は内を締めるように回ってきたんだ。逃げた白ポールネイロン、その後ろに黒アンブレラデートという隊列が固まったところでヨカヨカが締めたものだから、赤シゲルピンクルビーはスペースがない

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3コーナーを横から見るとこんな感じ。

赤シゲルピンクダイヤは青ヨカヨカの締めによって、それまで隣にいた黒アンブレラデートの後ろに押されてしまっている。

それまで自分のポジションをキープしていたシゲルピンクルビーだが、ここで若干揉まれるような形になってしまったんだよね。内回りの上位条件で、内で1つポジションを落とすことは=終わりとも言える案件。

マスクはシゲルとヨカヨカの馬連を持っていたから、買っていた馬が食い合う形になってしまって、このあたりで一旦絶望しかけていた

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徳ってものは積んでおくものだとつくづく思ったよ

昨日避難勧告が出た船橋の競馬場に仕事に出かけて、最後まで残ったことで徳を積んだマスクに競馬の神様は微笑んだらしい。

青ヨカヨカが締めを緩めたのだ。

これは前の馬の動きに起因する。青ヨカヨカの前にいるのは白ポールネイロン、桃フリード、水色スティクス。桃フリードの手応えが3コーナー過ぎからすでに危ういのだ。

フリードは小倉芝1200mでレコードを叩き出したほどの快速馬だが、逆に言えばスタミナには不安がある。そんな馬が3コーナーですでに手応えが怪しい。フリードの後ろにいたいと思うだろうか?

当然いたくはない。内の白ポールネイロンの後ろには入れないとして、フリードの後ろを離れ、水色スティクスの後ろに入るのが現実的だ。ヨカヨカの幸もそう考えたと見ていい。

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おかげで赤シゲルピンクルビーと青ヨカヨカの間、黒い丸で囲んだ部分のスペースが生まれるんだよね。

仮にフリードが強かったり、マイルも持つレベルのスタミナがあったとしよう。そうしたらヨカヨカは別にフリードの後ろを離れなくていいから、シゲルピンクルビーをもっと締める。シゲルの進路が無くなっていた可能性がある。

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青ヨカヨカが水色スティクスの後ろについていったことで、おかげで赤シゲルピンクルビーが位置取りを回復し、黒アンブレラデートの隣まで戻すことができた。このスペースが開いたのは幸運だった

逆に困ったのは黒アンブレラデートの池添だったと思う。白ポールネイロンがいつまで持ってくれるかもわからないし、4コーナー手前で桃フリードはもう脱落しそうな手応え。ポールネイロンが内を締めて回ったら、アンブレラデートの進路はない。

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まー、幸いにもポールネイロンが1頭分ラチ沿いを開けた分アンブレラの進路は開いたのだがね。

直線に入る頃には赤シゲルピンクルビーは青ヨカヨカの後ろに入ることができたし、手応えは十分。あとはもうヨカヨカが捌けばその後ろで進路が開くという状況ができている。

青ヨカヨカは3コーナーでの判断が正解だったよね。桃フリードは直線入口で完全に脱落している。桃スティクスの後ろにいたからこそ、スティクスと、紫ラヴケリーの間のスペースを突くことができる。コース取りとしてはノーミスと言っていいレースだったと思うよ。

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ご覧のように青ヨカヨカは桃スティクス、紫ラヴケリーの間を付けたのだが、ここでラッキーだったのは赤シゲルピンクルビーだった。

たぶんそのままヨカヨカについていってもスペースは開いたと思う。ただここまでヨカヨカのレースを見ると、上がり3F最速の脚を使ったのは新馬だけ。しかも馬場が重かったレースだ。

それ以降のフェニックス賞やひまわり賞、ファンタジーSを見ても、切れ味より持続力が武器のタイプ。一瞬でキレる馬ではない。仮にシゲルピンクルビーがヨカヨカの後ろをついていったら、進路が開くまで待たされる可能性がある

シゲルにとってラッキーなのはここで、自身の左隣にいた灰テリーヌがそんなに強くなかったことだった。仮に直線でも脚が残っているレベルの馬がシゲルの左にいたら、締められていたかもしれない

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テリーヌに脚が残っていなかったからこそ、赤シゲルピンクルビーが灰テリーヌ、紫ラヴケリーの間のスペースを突くことができたんだ。

ここまで書いたようにシゲルピンクルビーは偶然が積み重なって進路が開いている。前にいたのがフリードだったから、隣にいたのがテリーヌだったから綺麗に進路が開いたわけで、正直ラッキーだった感が否めない。徳は積んでおくものだな。

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1着の赤シゲルピンクルビーは距離短縮が間違いなく良かった。それは方々で言われていることだろうから割愛する。その他に良かったのは『今回が3戦目であったこと』だと思うね。

新馬を勝った直後にGIに挑戦した前走。明らかに経験不足を露呈してしまっていた。ただ逆にいい経験にもなったようで、道中ヨカヨカに締められても耐え、色々ラッキーも重なったとはいえ狭いスペースを抜け出せたのは、前走厳しいGIを経験したからだと思う。結果的にGIを使ったのはこの馬にとってプラスだった

ただ今回のフィリーズレビューが桜花賞に繋がるかというとまた別の話。少なくとも桜花賞が今回ほどのペースになることはないだろうし、外回りの上がり勝負になった時の不安は残る

姉は桜花賞2着馬シゲルピンクダイヤで上がり勝負にも対応していたが、すでに外回りで上がりを使った履歴があった。少々姉とは違うタイプだけに、同基準で考えてはいけないように思う。

2着の青ヨカヨカは完璧なレースだったと思う。ほぼほぼノーミスだと思われ、しかも距離短縮でこの内容。今日のところは完敗と言っていい。競馬センスの高い馬ではあるが、少々能力の天井が見えつつあるな。現状は1400m以下、そして上がりの掛かる条件でというところ。

3着の橙ミニーアイルは少々ラッキーだった部分もある。スタート後外枠の先行馬はヴァーチャリティ、そしてヨカヨカの壁を超えていかなければいけなかった。そのため脚を使っている。

ミニーアイルはそうした先行争いに参戦しておらず、外を回した他の7枠を見ながら進められた利があったとも考えられる。元々能力の高い馬ではあるが、ゲートも定期的に出遅れることも考えればまだ信頼感に欠ける

4着アンブレラデートは2着ヨカヨカ同様完璧に運んでのもの。今日は恵まれている部分は残る。5着エルカスティージョも同様。この2頭は内枠がプラスだった。

注目は7着のスティクス。前半3F33.7、上がり3F35.5の前傾ラップを、ヴァーチャリティとヨカヨカの壁を超えて先行して7着に粘っているのはひとえに能力の高さ

前走の数字も優秀。騎乗した隼人が「まだトップギアに一気に入りやすいところがあるので、徐々にギアを上げられるようになれば、さらに良いと思います」と語るように、少々敏感な面がある。現状1400は長いから、1200なら重賞も勝てていい馬だ。

ただ外を回るだけになってしまった11着エイシンヒテンも見直したい。能力は高いが、今回はゲートの中で駐立が悪く、外枠の分外を回され続けてレースになっていない。能力は高い。14着ララクリスティーヌも似たような競馬。今回は度外視。

問題は9着オパールムーンだ。今日も出遅れ。出るタイミング自体は悪くなかったが、そこからの行き脚が付かな過ぎる。ペースが速かったからノリさんはこれでも…と思ったのだろうが、ギアチェンジも遅く、それがレース後、ノリさんの言う「後ろからになったにしても負けすぎ」というコメントに繋がっているのだろう。

それでいて、「だけど、俺の中ではよく頑張ったと思う」とフォローを忘れない。馬にモテるなこの人は…そうマスクは思ったよ。能力はある。二の脚がもう少し速くなってほしいところだね。

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