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22年宝塚記念を振り返る~超えられなかった10秒台の壁~

週中の話さ。マスクは毎日のようにニュースの天気予報を見ていた。お天気お姉さんが目的でも、そらジローが目的でもない。週末の宝塚記念当日の天気が知りたかったのだ。

梅雨時。雨が多い季節で、天気予報も変わりやすい。

Twitterでも少し触れたが、今年の宝塚のキーワードは『11年ぶり』だった。要は、11年前、アーネストリーが作ったコースレコードが破られるなら今年だと見ていたのだ。

阪神の芝2200mというコースはそもそも施行数も少ない。今京都の改修の影響で阪神開催が増えているが、それでもオープンは京都記念、すみれS、宝塚記念、エリザベス女王杯の4つ。京都があれば2つしかない。

京都記念は厳冬期で頭数も少なくレコード更新は難しい。エリザベス女王杯も2年前こそ開幕2週目だったが、昨年と今年は秋の阪神6週目。よほどのことがない限りレコード更新は難しい。

しかし昨年、今年の宝塚は京都開催がない影響で、例年だったら6月開催8日目のレースになるのに、6月開催4日目、まだ馬場がひどく傷んでいない状況で行われている。

昨年の宝塚もメンバー次第ではレコードが出ても…と思っていたのだが、前半1000m60.0という中弛みペースが原因で、アーネストリーのレコードに0.8秒届かなかった。

今年はなにせ、パンサラッサがいる。道中から体調がいい時の京王線特急のごとく飛ばしてくるこの馬がいれば、雨が降らず良馬場でやれさえすればレコードが出るのでは、という読みだったのだ。

実際レコードが出た。今年の宝塚記念の最大のポイントは、この『レコードタイムが出たこと』にある。

●宝塚記念 過去3年のラップと今年

・19年 良 2:10.8(開催4週8日目)
12.6-11.4-11.5-12.4-12.1-11.9-12.0-11.6-11.5-11.4-12.4

・20年 稍重 2:13.5(開催4週8日目)
12.3-10.9-11.4-12.7-12.7-12.4-12.4-12.4-11.9-12.1-12.3

・21年 良 2:10.9(開催2週4日目)
12.3-11.2-11.6-12.4-12.5-12.4-12.3-11.5-11.5-11.5-11.7

・22年 良 2:09.7(開催2週4日目)
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4

太字は、今年も含めた4年で比べた時に1番速い年のラップ。今年のラップの太字の数を見てほしい。なんと5つ計5F、ここ4年で一番速い。しかもそれが前半に集中している

●パンサラッサが作るペース

・オクトーバーS
12.6-11.8-11.4-11.4-12.1-12.2-12.6-11.4-11.8-12.7

・福島記念
11.9-10.8-10.9-11.9-11.8-11.9-12.4-12.4-12.1-13.1

・中山記念
12.7-11.2-11.3-11.1-11.3-11.5-11.6-12.2-13.5

1F11.9以内だった区間を太字にしている。前半からとにかくビュンビュン飛ばして、『実距離より1F短い競馬』をする、それがパンサラッサのスタイルだ。

福島記念はラスト1F、つまりラスト200mで13.1。中山記念は同区間で13.5。大きくラップが落ちている。前半から飛ばして後続との距離を取り、ラスト1Fの標識までに勝負を決めてしまう。『パンサラッサ逃げ』とマスクがよく書いているやつだね。

1800とはいえ、中山記念で11.2-11.3-11.1なんていうラップを刻むのだから、出遅れたり落馬がなければハナ濃厚。今年の鍵の一つには『パンサラッサ逃げに対応できるかどうか』もあったと思う。

●宝塚記念 出走馬
白 ②アフリカンゴールド 国分恭
黒 ④エフフォーリア 横山武
赤 ⑥タイトルホルダー 横山和
青 ⑦デアリングタクト 松山
茶 ⑨マイネルファンロン デムーロ
黄 ⑩ヒシイグアス レーン
緑 ⑪パンサラッサ 吉田豊
桃 ⑫ウインマリリン 松岡
橙 ⑮ディープボンド 和田竜

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スタート。それ以前に、オーソリティがハ行で競走除外となった。元々歩様が凄くいいタイプではないが、いつも乗っているルメールがダメというのだから、ダメなのだろう。

ここでオーソリティがいなくなったことにより、白アフリカンゴールドが事実上最内枠となった。しかもアフリカンゴールドがゲートが開く直前に後ろ扉を蹴ろうとして重心が後ろに下がった結果、軽く出遅れたんだよね。

内枠勢はその隣にメロディーレーン、エフフォーリア、アイアンバローズ、タイトルホルダーと並ぶ。問題はこの4頭中3頭が前走天皇賞春組だったことさ。

天皇賞春が3200m。今回は2200m。1000mの距離短縮になる。それでもテンから行けるタイトルホルダーは凄いのだが、メロディーレーンが短縮で行けるわけもなく、アイアンバローズはスタートから押していくと良くない馬だから主張できない。

つまり、内枠各馬が行けない展開となる。本来周りが行けないのであれば、エフフォーリアのポジションが良くなる。はずなのだが、これは後述。

仮にオーソリティがいたとすると、まともにゲートを切っていれば、ここ最近のレース振りからもある程度先行していたと思う。そのオーソリティはそもそもレースにいない。これで『内に空洞ができた』。

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白アフリカンゴールドが出遅れたことで、ハナは赤タイトルホルダーか、緑パンサラッサによる争いになることがほぼ固まった。まー、そもそもテンの脚は圧倒的にパンサラッサのほうが速いから、アフリカンゴールド逃げ自体想定していなかったけど。

パンサラッサも出負けしてしまったんだよな。斜め前の映像しか残っていないが、若干体をゲートの横の扉に傾ける形になり、気持ち遅れてしまった。

しかもその後、両サイドのヒシイグアス、ウインマリリンに挟まれるような形になってしまっている。

この不利がなくてもたぶん止まっていただろうが、パンサラッサが少し出負けし、その後ハナを奪いにタイトルホルダーに競りかけるようになってしまったことで、スタートから1コーナーまでが若干速くなり過ぎてしまう形になったんだよ


22年宝塚記念 
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4

改めてラップを見てみよう。

今年の宝塚記念は2F目がなんと10.4。中距離とは思えない、まるで短距離のようなラップが刻まれた。この10.4は2F目、つまり200m→400m地点で計測されたものだが、ちょうどタイトルホルダーに、出負けから盛り返したパンサラッサが絡んでいった付近の数字となる。

しかも阪神2200の200m→400mって上り坂のところだからね。上り坂入ってるのに10.4とか信じられないくらい速い。

エフフォーリアの武史がレース後、「ペースが速すぎてついて行くのに精一杯でした」と話していた。

エフフォーリア
これまでの前半1000mと前半2F目

61.8 11.2 1着 新馬 札幌2000
63.4 11.7 1着 百日草 東京2000
61.9 11.8 1着 共同通信 東京1800
60.3 11.7 1着 皐月賞 中山2000
60.3 10.6 2着 ダービー 東京2400
60.5 11.5 1着 天皇賞秋 東京2000
59.4 11.3 1着 有馬記念 中山2500 ※

58.8 10.3 9着 大阪杯 阪神2000
57.6 10.4 6着 宝塚記念 阪神2200

※有馬は2500のため100→300m区間。前半1000mは推定。

実に分かりやすく、この馬、ここまで負けた3戦全てで2F目が10秒台なんだよな。『置いていかれてしまう』のだ。

前半1000mで比べてもここ2走と、それまでのレースに差があることが分かる。エフフォーリアのレースは、昨年末まで、推定の有馬記念以外全部、前半1000m60秒以上掛かっていた

それがここ2走は大阪杯の前半1000mが58.8宝塚の前半1000mが57.6。200m→400mはどちらも10秒台前半。これまでやっていたレースとは違い過ぎる。武史の「ペースが速すぎてついて行くのに精一杯」というのはウソではなく、その通りのことをただ話しているだけなのだ。

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おかげで黒エフフォーリアは、黄ヒシイグアスにも前に入られてしまった。イグアスだってそんなにテンが速いわけではないのにね。

もちろんこれはレーンの出し方も上手かったんだけど、いいスタートを切ってエフフォーリアの前に入っただけでなく、出遅れたアフリカンゴールドや、そもそも行けないメロディーレーンなど、並びもあってタイトルホルダー以外の内枠勢より前のポジションに入ることができたんだ。

ここでヒシイグアスのほうが前になったことが、エフフォーリアにとって後々響いてくる

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1周目直線の半ば。ここで桃ウインマリリンの松岡マサミくんが内を見ているのが分かる。

彼としては、パンサラッサがハナに行こうとしているから、パンサと黄ヒシイグアスの間のスペースが空く→内に行こうというプランだったのだろう。

黄ヒシイグアスの後ろには黒エフフォーリアがいる。なんだか嫌な予感がする

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桃ウインマリリンが内目に1頭分入った結果、右後ろにいた黄ヒシイグアスが内ラチ沿いのほうへ、1頭分押し込まれる形になる。玉突きみたいな感じだ。

それによって、内ラチ沿いで白アフリカンゴールドの後ろにいた黒エフフォーリアが、前にヒシイグアスに入られて1頭分後ろに下がってしまったんだよ。

この1頭分がデカい。そもそも「追走が忙しい」と言っているのに、他馬の進路変更のアオリを食らってポジションを悪くしてしまった

仮にアフリカンゴールドの後ろのままなら、アフリカンゴールドをどう捌くかを考えながら乗れる。この形だと『アフリカンゴールドを捌くヒシイグアス』も捌いていかねばいけない。武史は考えることが増えてしまった

だからといって、前半2F目が速過ぎてテンについていけていない状況だから、自分からポジションを取りにも行けない。困ったよな武史。もう負けられない状況なのに、1コーナーを迎える前に苦しくなってしまっている

一方、橙ディープボンドは若干ポジションが良くなった。その前までの画像を見てもらえれば分かるが、ウインマリリンの更に外、内ラチから数えて5頭分外を回っている。

仮にそのまま外の5頭目を回っていれば大幅な体力ロスになるわけで、早々とマリリンが内目に入ってくれたことで、外の3頭目になりロスが軽減されたのは大きかった。まー、それでもロスはあるけど。外枠だから仕方ない。

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1コーナー。ようやく緑パンサラッサがハナを奪って、赤タイトルホルダーが内の2番手という形になる。

・22年宝塚記念
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4

改めて宝塚記念のラップを見てみよう。2F目が10.4短距離のようなラップになったと先ほど書いた。

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これは阪神内回りの高低図。1コーナー地点は残り1600m前後にあたるから、宝塚のラップでいうと左から3、4つ目の11.0-12.1付近にあたる。

つまり、その前の10.4という区間は『タイトルホルダーが逃げて、パンサラッサに絡まれているところ』。なぜ2F目で10.4などという短距離のようなラップを自分で刻みながら、ラスト1F12.4でまとめているのか、意味が分からない(褒めてる)。

高低図を見てもらえれば分かると思うが、阪神の内回りは1コーナー前から残り200mまで平坦区間と下り坂区間しかない。これはよく予想に書く話だが、平坦と下り坂しかなく、向正面が300m程度しかないことでベースアップが早くなりやすい

そんなコースで、前半から11秒台で飛ばすパンサラッサがいたらどうなるかって、それこそパンサラッサがペースを落とす以外で緩む方法がない

●パンサラッサの逃げ

・21年福島記念
11.9-10.8-10.9-11.9-11.8-11.9-12.4-12.4-12.1-13.1

・21年有馬記念
6.9-11.3-11.6-11.5-11.9-12.5-12.6-12.2-12.4-12.4-12.2-12.0-12.5

距離も場所も違うのになぜ比較しているのかというご意見が飛んできそうだが(実際来る)、福島記念は中盤10秒台と11秒台を断続的に刻んでハイペースで飛ばしたパンサラッサが、有馬記念では中盤1F12秒台半ばを入れながら逃げているのが分かる。

乗っているのはどちらも菱田。つまり、菱田は『距離不安』だから有馬記念で中盤緩めた。今回マスクが少し懸念していたのはここ。

2000mだといわゆるパンサラッサ逃げができる。これは福島記念などで証明済だ。2500だと距離が長くてできない。では、2200mの宝塚記念ではどうなのか?

距離は気持ち長いが、自分のペースで行くだけ」と事前に聞いていたこともあって、まー、たぶんパンサラッサ逃げでいくのだろうなとは思っていたが、さすがに2200mで前半1000m57.6は速いよね。ローエングリンが飛ばした07年アドマイヤムーンの宝塚記念を思い出したよ。

別に俺はこのペースが悪いとは思わない。超ハイペースだが、パンサラッサにとっては平均ペースなのだろう。こういう型なのだから、距離が多少長くとも自分のペースで行ったほうがいい。

序盤1F10.4が入るレースで、その後ハナに立ったパンサラッサが豪快に飛ばしたことにより、道中は超ハイペースのサバイバル勝負になった

普通セオリー的には、『ハイペースは差し有利』となりやすい。実際前述の07年宝塚記念はローエングリンが前半1000m57.5の超ハイペースを作った結果、断然差し有利になった。メイショウサムソンでも動くのが早すぎて負けたほど。

・07年宝塚記念 2:12.4 稍重
12.1-10.5-10.9-11.9-12.1-12.3-12.7-13.0-12.3-12.2-12.4

・22年宝塚記念 2:09.7 良
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4

15年前と決定的に違うのは、馬場状態に加え、800m通過から緩みだした07年に対し、今年はほとんど緩まず進行したことだろう。

道中緩んで後ろも脚を溜める区間があった07年と違い、今年はまったく脚を溜めるところがない。

6着エフフォーリア 横山武史騎手「ペースが速すぎてついて行くのに精一杯でした

14着アリーヴォ 武豊騎手「ペースが速くてついて行くのに精一杯でした

15着アフリカンゴールド 国分恭介騎手「ペースも速かったですね。抱えていく感じの方が良いですね

軒並み負けたジョッキーがついていくのに精いっぱいと言う気持ちも分かる。緩まないんだもん。ハイペース=差し有利ではなく、ハイペース過ぎ=差し不利というレースになってしまったのだ。たまにあるんだけどね、こういうレース。

4コーナーのポジションが二桁だった馬
10番手 6着エフフォーリア
11番手 9着ステイフーリッシュ
12番手 11着ポタジェ
13番手 12着グロリアムンディ
14番手 17着キングオブコージ
15番手 13着メロディーレーン
16番手 15着アイアンバローズ
17番手 13着アリーヴォ

まー、見事にみんな大敗した。道中いかについていけるか勝負だったんだよな。こうして見るとエフフォーリアって結構頑張ってるんだよね。結構頑張ったではもう許されない立場なのも分かるが。

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パトロールに戻ろう。正直、パトロールで細かく取り上げたいシーンがそう多くないのも実情。

川田もルメールも乗らず、福永はほぼノーチャンスな馬で後方、武さんは追走に手間取っていて、細かいポジションのやり取りがそうなかった。

ただ向正面の黒エフフォーリア武史は取り上げておきたいね。向正面に入った時点で、内ラチ沿いは白アフリカンゴールド、黄ヒシイグアス、黒エフフォーリアという並びだ。

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ところがここで、黒エフフォーリアの武史が外に動いて、青デアリングタクトのほうに寄っていくんだ。これはデアリングをナンパしに行ったわけではない。

武史としては、やはり詰まりたくない。すでに黄ヒシイグアスに1列前のポジションを取られてしまっているから、動けるスペースが限られてくる。

Twitterの中で人気だからあまり声を大にして言いたくないが、アフリカンゴールドはどうやってもこのメンバーではテンも足りず、数字面が足りない。パンサラッサが作る超ハイペースに対応できるとはとても思えず、客観的に見て早めに下がってくる可能性が高い。

そうなると、内ラチ沿いにいては下がってくるアフリカンに巻き込まれてしまう可能性がある。よく言う『強い馬の後ろ』はこの手の先行馬の下がりを気にしなくていいメリットがあるんだよな。

だから武史はここで内を捨てて外に行こうとした。

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黒エフフォーリアの武史としては、茶マイネルファンロンと青デアリングタクトの間のスペースに入っていきたい。

黄ヒシイグアスに前に入られなければ、わざわざこんなスペースが選択肢に上がることはなかった。序盤で書いた『ヒシイグアスのほうが前になったことが、エフフォーリアにとって後々響いてくる』がこれ。

かといって、デアリングタクトはそのままエフフォーリアに進路を譲るわけにはいかない。仮に譲ったとすると、デアリングは更に外1頭分を回される。これ以上外を回るわけにはいかないし、定石的には内から出てくる馬を締めないといけないところ

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三冠牝馬の意地を見た気分さ。青デアリングタクトが外からガッチリ締めて、黒エフフォーリアにスペースを与えていない。

正直、靭帯やってしまって1年休んでいた馬が、一度使ったからとはいえここまでやれるとは思わなかった。相手は前走大敗したとはいえ、昨年のGI3勝馬。よくぞ締め切ったなと思う。

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前から見るとこんな感じ。青デアリングタクトが茶マイネルファンロンとの間のスペースをそう開けずに回っている。

これだと黒エフフォーリアは簡単には出ていけない。早めに進出したい、しかしできない。もどかしいよな。武史は相当焦ったと思うが、焦っても仕方ない。強引に外にはじき出すと馬を傷める可能性もある。無理に動けない。

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これが仮に、エフフォーリアが黄ヒシイグアスのポジションを取れていた場合。

白アフリカンゴールドはやはり早めに下がってきたのだが、うまくパスしてやり過ごした。しかもアフリカンが下がっていったスペースに、桃ウインマリリンが入ってきたんだ。

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正面から見るとこんな感じ。桃ウインマリリンがラチ沿いに移動することで、黄ヒシイグアスの進路が完全に開いた。

一方後ろを見ると、青デアリングタクトが黒エフフォーリアを完全にブロックしている。エフフォーリアは動けていない。

結果論でもあるが、ヒシイグアスにポジションを取られたのは本当に痛かったね。仮にヒシのポジションにエフフォーリアがいたとしたら、あとはもうタイトルホルダーについていくだけ。もっと着差は詰まった可能性がある。勝ったとは言わないけどね。

ところがヒシにポジションを取られたため、ただ惰性に外を回して外からは締められるという、かなり厳しい形になってしまったのだ。


仮にヒシイグアスのポジションにいたとして、エフフォーリアがもう少しロスを抑えた競馬をしても、あって2、3着だったと思う。根拠としては、中盤から手が動いているように、反応しきれていない。つまりジョッキーの言うようについていけていない。

エフフォーリア
これまでの前半1000mと前半2F目

61.8 11.2 1着 新馬 札幌2000
63.4 11.7 1着 百日草 東京2000
61.9 11.8 1着 共同通信 東京1800
60.3 11.7 1着 皐月賞 中山2000
60.3 10.6 2着 ダービー 東京2400
60.5 11.5 1着 天皇賞秋 東京2000
59.4 11.3 1着 有馬記念 中山2500 ※

58.8 10.3 9着 大阪杯 阪神2000
57.6 10.4 6着 宝塚記念 阪神2200

※有馬は2500のため100→300m区間。前半1000mは推定。

これは先ほど出したデータ。改めてここに載せさせてもらうが、ここ2走、2F目が10秒前半というマイルよりも速いラップになって大きく崩れていることから、『追走力が足りない』or『追走力に問題が出てきた』と考えられる。

エフフォーリアの近走ラップ

・天皇賞秋 1着 前半1000m60.5 
12.8-11.5-11.9-12.0-12.3-12.0-11.8-11.1-11.1-11.4

・有馬記念 1着 
6.9-11.3-11.6-11.5-11.9-12.5-12.6-12.2-12.4-12.4-12.2-12.0-12.5

・大阪杯 9着 前半1000m58.8
12.3-10.3-12.0-12.2-12.0-12.1-11.7-11.5-11.8-12.5

・宝塚記念 6着 前半1000m57.6
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4

念のため書いておくが、コース形態も違う、距離も違うこの4走に対して、マスクはペースの速い遅いを比較するために出したのではなく、どんなパターンのラップだったかを参考としてもらうために書いている

最近こういう注釈つけないといけなくなったんだよね。違う条件なのにラップタイム比較できませんよねってお便りが平気で届く。いや、それはそうだしマスクも分かってる。

天皇賞では序盤がそこまで速くない。このコースはスタートしてから割とすぐに2コーナーがやってきて隊列が固まることもある。有馬の場合は前半だけ見るとそれなりに速いのだけど、中盤に12.5-12.6という落としどころがある。

問題はここ2走だ。スタート後200mとラスト200mを除いた道中、大阪杯で一番遅いラップは12.2。宝塚は12.1道中の中弛みがほとんどない

そもそも、今回エフフォーリアはブリンカーを着けてきた。ブリンカーという馬具は周りの視界を遮り、前と横だけ見えるようにすることで集中力を上げたり、前進気勢が高まる効果が期待できる

もちろん効くかどうかは馬によるが、『前進気勢の強い馬にブリンカーなど着けなくてもいい』のだ。なのに、わざわざブリンカーを着けている。

1週前追いの際に武史に笑顔がなくてね。師も「ズブくなってきた」と言うように、だいぶ前進気勢が落ちてきている。歳を重ねてズブくなる牡馬は珍しい話ではなくて、結構いるもの。これに関しては珍しい話ではない。

前進気勢が足りない馬に大阪杯の2F目10.3、宝塚の2F目10.4は速過ぎる。完全に置いていかれてしまっているからね。

仮に次、天皇賞秋に進むとすると、前述したように2コーナーが近い分、2F目が10秒台という可能性は低い。実際ここ10年の天皇賞秋で2F目が10秒台だった年はなく、シルポートでも11秒前半だった。

ただシルポートは12年、12.5-11.2-11.1-11.2-11.3というハイラップで逃げている。前半1000m57.3。あくまでも仮に、パンサラッサも天皇賞に出てくるとなると話が変わってくる。2F目が10秒台でなくても、その後11秒前半を刻まれるとエフフォーリアは付いていけない可能性が出てくるのだ。

  続くジャパンカップ。距離は2400m。パンサラッサの吉田豊がレース後「2000mくらいがベスト」と言っているように、たぶんジャパンカップは出てこない。

ただ、ジャパンカップというレースは高額賞金の影響などもあって、『1コーナーは戦場』と呼ばれるほど主導権争いが激しい。おかげでスタート後2F目で10秒台というレースが、ここ10年で3回もある。前述のエフフォーリアの傾向からすると、彼にとってはちょっと速過ぎる。

もちろんメンバー次第だから何とも言えないところはあるが、単純に秋、東京に変わるからいい、という問題ではない。『誰が出てくるか次第』なところがある。今のズブさなら有馬くらい距離があったほうがいい感じはあるがね。

馬体面でいうと、ここ最近続いているコズミが完全に取れていない。裏話にも書いたように、まだここまで最高のデキだった天皇賞秋のレベルに到達していない

昨年秋に天皇賞を勝った後にクギを踏んで立て直しに時間が掛かり、1月の調教も立ち上げが遅れ、調教進度が遅くなっている馬。なら巻けばいいやんという話になるかもしれないが、元々脚に難点があるだけにゴリゴリ仕上げるわけにもいかない。

今回ディープボンド陣営が「短縮でもついていけるよう、調教からかなり強く攻めて前向きにしている」という話をしていたのだが、エフフォーリアはこれができない。それもあってのブリンカー投入だろう。

非常に難しいところだ。天皇賞の数字などから弱いなんてありえない(本当に言っている人間がいることに驚く)。能力は非常に高いのだが、現状その能力を100出し切れない状態、状況であることに留意して秋に臨みたいね。

今回のポジション取りがジョッキーの責任になるかというと、正直俺とすれば武史がかわいそうではある。ハイペースでポジションを取りに行くほどの行き脚がなく、ハイペースになることは明らかなメンバーで強引に出していくと止まる可能性もある

ただまだ我々は『横山武史のエフフォーリア』しか見ていない。ここで一度手を変えて、他のトップジョッキーを配してもいいかもしれないね。前進気勢の足りない馬を技術で前づけされてくる方々に代わった場合、エフフォーリアの競馬がどう変わるのか興味がある

もちろん俺も1頭に1人というオペラオースタイルはドラマ性もあっていいとは思うが、状況を変えていくなら手の一つとして大アリだとも思う。


ちなみにTwitterでも触れた『エフフォーリアが早熟だから負けた』というご意見には、まったく同意できない。これに関しては本当に意味が分からない。

というのも、この馬が調教の強度を上げられるようになったのが昨年の秋というレベルで、体がまだ未完成。確かに大型の割にできているほうだとは思うが、身体面の完成はようやくこれからと言ってもいいくらい

エピファネイア産駒は早熟、というお便りもいただいた。

エピファネイア産駒の年齢別成績
2歳 勝率11.4% 連対率21.7%
3歳 勝率8.0% 連対率16.6%
4歳 勝率8.1% 連対率16.7%
5歳 勝率4.2% 連対率7.3%
※6月27日時点

2歳の成績がいいのは頭数が少ない新馬、未勝利があるから。中長距離はどうしても頭数が少なくなる分、好走しやすい側面がある。その分高い。

5歳は初年度産駒にあたるのだが、この世代は全体レベルがそう高くない。今年4.3.7.82で勝率4.2%と低調だが、全体96走中、3番人気以内だったのは10Rだけ。残る86走中、6番人気以下だったのが73走。そもそも勝負になる馬が少ない。

注目したいのは3歳時の成績と4歳時の成績がそんなに変わらないところだ。『古馬になると尻すぼみになる』なんて言われ方をするが、果たして本当にそうなのだろうか。

あと質問のお便りをいただいたところで『牝馬のほうが古馬になっていい』という話もあった。

エピファネイア産駒の性別成績(6月27日時点)

・2歳 勝率11.4% 連対率21.7%
牡、セン馬→勝率10.3% 連対率23.0%
牝馬→勝率12.4% 連対率20.6%

・3歳 勝率8.0% 連対率16.6%
牡、セン馬→勝率8.9% 連対率18.0%
牝馬→勝率7.2% 連対率15.3%

・4歳 勝率8.1% 連対率16.7%
牡、セン馬→勝率10.5% 連対率19.4%
牝馬→勝率5.4% 連対率13.7%

・5歳 勝率4.2% 連対率7.3%
牡、セン馬→勝率5.0% 連対率10.0%
牝馬→勝率3.6% 連対率7.1

予備知識として俺も古馬だと牝馬のほうが劣ることは、数字を確認した上で知っていた。だから不思議だったんだよね、牝馬のほうがいいって話。4歳になったらより牡馬のほうがいいんだよね

まー、これは重賞の戦績だけを見られて言われているのだろう。確かに4歳以上の牡セン馬の重賞成績は1.1.0.13、対して4歳以上の牝馬だと0.4.4.10となる。

こんなに産駒がいるのに重賞だけ見て何を判断するのだと思うが、アリストテレスは超タフ展開菊花賞→不良馬場のAJCCが応えて、反動が残ってしまってその後しっかり攻められていない。同様のローテだったヴェルトライゼンデもパンクしている。これは以前から書いている話。

オーソクレースは脚元が悪くてこちらも攻められず、太いままAJCCに出て負けて引退した。エフフォーリアも釘を踏んだり色々ある。こちらも裏話に書いている。これで早熟と呼ぶには無理があり過ぎる。

元々、いわゆる当たりはずれが大きいタイプの種牡馬だから、どうしても上下差がある分、より個体で見る必要のある種牡馬。○○産駒は~のようにひとまとめにすることの恐ろしいところだ。


さて、話を戻そう。わざわざこんな注釈を書いたのだから読み飛ばされていないことを願うばかりだね。

2着ヒシイグアスはエフフォーリアの一つ前に入れたのが最大の好走要因。内枠がタイトルホルダー以外へこんでポジションを取りやすかったのもあるが、遥か前に書いたように、1周目の直線でウインマリリンが1頭分内に寄った際、流れで内ラチ沿いに収まったのが大きかった

予想にも書いたように、例年6月開催8日目で行われる宝塚が、京都改修の影響で昨年、今年だけ6月開催4日目に行われる。その分まだ内が掘れつくしていない。その恩恵を一番利用した馬だった。

●2021年中山記念 1着ヒシイグアス
12.5-11.2-11.2-11.4-11.5-11.8-11.7-11.5-12.1

※22年中山記念 1着パンサラッサ
12.7-11.2-11.3-11.1-11.3-11.5-11.6-12.2-13.5

もちろん馬場の恩恵だけではない。エフフォーリアになくて、ヒシイグアスにあるもの、追走力だ。ヒシイグアスは昨年の中山記念で前半12.5-11.2-11.2-11.4-11.5とひたすら流れた中山記念を勝っている。要は、パンサラッサ逃げの耐性がある。

先月末までは調子が上がらないこともあり、宝塚記念を回避するプランもあった馬。よくこのハイラップに対応できるまでに状態を上げたと思う。スタッフさんのレベルが高い。

昨年秋から右トモが万全ではないこともあり、ここが万全ならもっと詰めていた…かもしれないね。これだけ長い期間良くないあたり、今後戻る気はしないが、力があることを再確認するレースではあった。天皇賞より香港カップのほうが適性がある。暮れが楽しみ。

戻る気はしないといえば、3着のデアリングタクトだ。正直調教からフォームが狭まって、いい時に比べてピッチ走法になってしまっている。ケガの影響は大きい。見ていてもいい時のフォームが今後戻ってくる可能性のほうが低そう。

その状況で、このハイラップを外目を回って3着なのだからよく頑張ったと言っていい内容だろう。強い競馬だったと思う

ただし、語弊があるかもしれないが、回顧だから書いておくと、確かに青デアリングタクトは外外を回っている。が、この厳しいペースを外先行で最後まで粘っていたディープボンドのほうが、より内容が濃かったのではないか、という説は頭にある。

もちろんあれだけのケガからここまで戻ってくること自体凄い話なのだ。マスクが言いたいのは『本当に完全復活と言っていいのか』という部分。マイル上がりで2F目10秒台の速い流れにも慣れている。逆に慣れていない馬たちが垂れた中、経験値も生きた部分はありそう。ピッチが速くなったことで内回りのコーナーを苦にしていない側面もある

今後天皇賞あたりに出てきそうだが、今のピッチだとコーナーは狭いほうが良さそう。東京の2000で外目の枠を引いたら下げたいかな、現状は。2400m東京も3歳までのストライドとは違うことを考えると、正直まだ疑問

念のため何度も書いておくが、立派な話なのだ。ここまで立ち直るには馬も、人も相当苦労しているはず。形になって表れたことに敬意を表したい


4着ディープボンドは展開面を考えればかなり負荷が掛かった競馬だった。超ハイペースを外目の前受け、相当しんどかったと思う。それでも僅差4着は豊富なスタミナによるものだが、それ以前に2F目10.4なんていうラップでよく3番手まで行けた(前走天皇賞の2F目は11.9)。

距離に対応するために中間調整を工夫した効果はもちろん感じたが、天皇賞も大外からかなり負荷のかかる競馬だったのに、よくここまで持ち直したと思う。体調の変動が小さい馬にしろタフ過ぎる

早々と手が動いているあたり、パンサラッサが逃げる2200は忙しい。それでこの内容。つくづく前走で内枠を引いていれば…と思ってしまう。体調の変動が少ないというのは武器。暮れの2500m、並びとメンバー次第で楽しみになるんじゃないかな。

マイネルファンロンは外を回って5着。サバイバル戦だった天皇賞春でも最後ジワジワ伸びて6着だったように、サバイバル戦が合う。加えて外を回したほうがよりいいタイプだけに、枠の並びも良かった

非常に気難しく、枠やコース条件に左右される馬。狙いは前が止まり最後に上がりが掛かるレース。道悪の北海道シリーズの外枠でどうでしょう。

7着ウインマリリンはここ最近で一番まともな状態だったのも大きい。肘とはもう引退まで付き合っていかないといけない。症状の良し悪しで成績も変わるね。

4コーナーでマサミが内に寄せていったように、直線近くにラチがあるとよりいいタイプ。また肘が悪化しない前提で、オールカマーの内枠に入ったら楽しみがある。

8着パンサラッサは若干出負けし挟まれたが、騎乗した吉田豊が「スタートはこういう時もあります」と話しているように想定内だったと思う。たまに危うい。

その後「自分のペースで淡々と行ってはいるんですが、ラスト1Fで止まっているという感じではありません。最後は伸びるというよりは踏ん張るという感じですからね。そこまでにセーフティーリードが欲しいですからね」と続けているのだけど、ここがポイント。

・22年中山記念 1着パンサラッサ
12.7-11.2-11.3-11.1-11.3-11.5-11.6-12.2-13.5

中山記念もそうだったが、パンサラッサ逃げは前半から飛ばして、残り1Fまでに勝負を決める。最後の1Fはただひたすら踏ん張る逃げ方なんだよね。つまり、このラスト1Fのところですぐ後ろに馬がいる状況になることが苦しい。

タイトルホルダーは3コーナーですでに2馬身ほど後ろにいる。これだけ飛ばして真後ろに馬がいることがそもそも変な話。相手が悪かったとしか言いようがない

今後、パンサラッサが現状の逃げ方を変えてくるとは思えない。このやり方で結果が出ているからね。海外遠征に行くかどうかだが、秋、天皇賞に出てきたらエフフォーリアは困っちゃう。

東京2000は2コーナーでセーフティリードを作りやすいコースであること、シルポートより更に締めて粘れる馬だけに、天皇賞でも要警戒。たぶん今年もそうだが、天皇賞秋はコース変わり週なんだよね。より粘れる環境がある。

まー、この馬のよりいい条件は小回り1800だと思う。日本には小回り1800GIがないんだよなあ…『自分でペースを作れる』という大きな武器があるだけに、馬場と体調さえ合えば海外でも楽しめるタイプの馬。

11着ポタジェは大阪杯で内を使えた馬。2200延長で大外は苦しい。それ以上に体もモッサリしていて、大阪杯ほど動けていない。立ち上げが遅れたあたり、反動が取り切れなかったかな。コーナー4つのコースで、もっと内枠を待ちたい。

13着アリーヴォはそこまで速くないゲート。その後無理せず控えたあたり、武さんの読みはパンサラッサが飛ばしてタイトルホルダーがついていく超ハイペース。実際そうなったのだが、こちらの脚も削られて伸びきれないパターン

かといってもっとポジションを取りに行くとハイペースの影響で止まる可能性もある。どっちが正解だったかは何とも言えないところ。2200も少し長いかな。ローテ的にも小倉記念に出てくれば楽しめそうだね。


さて、勝ち馬タイトルホルダーの話をしよう。1万5000字も書いて今更かよと思われるかもしれないが、今回の回顧、これが最後の話になる。

元々持続力に関しては現役トップであることは、これまでの数字からも分かる。天皇賞春で前半半マイルを12.7-11.9-11.9-12.0-12.0-11.9-12.2-12.8と1F12秒前後のペースで飛ばしながら、ラスト2F目のところで11.7を出せる馬。

今回の課題は前半からハイペースで突っ込んでいくパンサラッサの番手でついていけるか、ここに尽きた。

●宝塚記念の通過タイム
1000m 57.6
1200m 1:09.7
1600m 1:33.4
2000m 1:57.3
2200m 2:09.7(コースレコード)

阪神2200mは、2000m通過時でまだ上り坂がやってこないから一概に比較できないが、阪神2000m内回りのコースレコードはストロングタイタンの1:57.2。

序盤、条件戦の1200mとほぼ同等のタイムで1200m地点を通過し、マイルも1:33.4に近いタイムで通過しながら、2000mを1:57.3で通過する、ちょっと意味が分からない。レース前に追走できるか心配していた自分を恥じたくなる。

・宝塚記念 前半1000m57.6 後半1000m60.0
12.5-10.4-11.0-12.1-11.6-12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4

前述したが、前半2F目の10.4はタイトルホルダーが出したもの。中盤ほとんど緩めていないパンサラッサについていき、ラスト1Fを12.4で上がられては後ろはどうしようもない。

正直、理想的な競馬だと思う。2番手の馬がこのペースでラスト1F12.4で上がっては、歴史的名馬でも差し届かなかったのではないかな。バテない、心臓の良さを最大限生かす競馬。和生が馬を完全に信頼している

日経賞こそ僅差だったものの、デキがかなり悪かった時の話。その時より良かった天皇賞より、今回は更に状態が良かった。持続力に加えて追走力まであるとなったら、死角は更に少なくなる

次は凱旋門賞が予定されている。今のところ直行。これまで中10週以上だった時は弥生賞1着、セントライト記念13着、日経賞1着。セントライトは道中外から被されて動けなくなり自爆したことを考えれば、間隔が開くことについてはそうネガティブにとらえていない。あれだけデキが低調だった日経賞でも勝つくらいだからね。

問題はコースと馬自身の気性。ロンシャンの2400mは前半から1000m近い上り坂がある。持続力とパワーに関してこの馬は日本一だと思うが、ラップのバランスが異なってくるため、前半やや緩まった時にどうかというネックはある

そして気性。以前は前の馬を追いかける悪癖があったものの、今回はパンサラッサを前に置いて運べていた。成長の跡が見られる

ただ今回、返し馬に入るあたりで動かなくなり、キングオブコージに誘導してもらう一面があった。単独でフランス遠征を敢行した場合、何かトラブった時にどうするか、ここは考えるところ。

同厩からノルマンディー、岡田スタッド系で派遣できる馬がルナエルモッサくらいで、たぶんそれはないし、ドウデュースと一緒に行けるならいいが、単独調整となると若干不安がある

逃げ馬を好まないフランス競馬に慣れているジョッキーに頼むとペースを落とされたりする可能性があり、和生継続は賛成。

どのくらいラビットが出てくるか現時点では分からないが、ハイペースのテンの行き脚があることも今回分かった。収穫しかない一戦だったと思う。

凱旋門賞が全てだとは思わないが、どのような日本馬が凱旋門賞を勝てるのか、というのはマスクも非常に興味があるところ。この手のタイプが凱旋門賞に遠征することがそうない。非常に貴重なケースになってくるだろう。

タイトルホルダーは中期育成を厳しい環境の襟裳で行ったことで知られているが、仮にタイトルホルダーが凱旋門賞を勝つとなると、今後の社台ノーザンの中期育成環境なども変化し、日本のサラブレッドの質自体が変わっていくのでは?という思いも少しある。

和生がレース後「成長してすごく良くなってる途中」と話しているように、まだこの先がある馬。常に新たな一面を見せてくれるタイトルホルダーが、正解のない舞台であるパリロンシャンで、どのような一面を見せてくれるのか、一競馬ファンとして楽しみでならない。







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