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21年エリザベス女王杯を振り返る~実力馬の弱点が引き起こした大波乱~

別の記事に載っていたのだが、今年のエリザベス女王杯の3連単配当339万は、これまでの中央GIでは6番目の高額配当なのだという。

上には上がいることを改めて考えさせてくれるが、今回より高配当だった5R中、3Rが牝馬限定なんだよな。

ミナレットが残って大荒れだった15年ヴィクトリアマイルが歴代1位。ブラックエンブレムが突き抜けてプロヴィナージュが残った08年秋華賞が歴代2位。レジネッタが差し切った07年桜花賞が歴代4位。

いずれも記憶にも記録にも残る大荒れGIだが、今年のエリザベス女王杯も記憶に残るGIとなった

牝馬限定GIが荒れやすい理由は多い。それこそ実力が伯仲していることも一因。当日のテンション面に左右されることも一因。牝馬にはフケもあるし、ちょっとしたことでエサを食べなくなる馬も多い分、コンディション調整も難しい。

人気なんぞは人が決めるものだから、あくまで参考記録。当日のコンディションが反映されたものではない。それだけに難しいレースも多い。

しかも昨年に続きタフな阪神2200mでの開催。人気馬それぞれにネックもあり一筋縄には決まらないと見ていたが、実際そうなった。

万全でレースに臨む難しさ、細心の注意を払って調整しても少しのボタンの掛け違いで全てが崩れる難しさ。牝馬限定という条件の難しさが凝縮された一戦だったと思う。

大波乱の裏にあったそれぞれの出走馬の思惑、現状を、パトロールなどを見ながら確認していこう。

●エリザベス女王杯 出走馬
白 ①レイパパレ ルメール
金 ②クラヴェル 横山典
黒 ③アカイトリノムスメ 戸崎
水 ④イズジョーノキセキ 和田竜
赤 ⑤ステラリア 松山
紫 ⑥ランブリングアレー 吉田隼
青 ⑦シャムロックヒル 団野
銀 ⑧テルツェット デムーロ
黄 ⑨ウインマリリン 横山武
緑 ⑫デゼル 武豊
茶 ⑬リュヌルージュ 富田
橙 ⑭ロザムール 池添
灰 ⑮ウインキートス 丹内
桃 ⑯アカイイト 幸

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まずスタート。ゲートが開いた直後に桃アカイイトが出遅れている。幸がレース後「スタートではうまくゲートを出せなかった」と話しているが、元々そんなにスタートが速くない馬。

そういう意味では外枠も良かったのかもしれない。今回仮に真ん中の枠だと、出遅れた時に両サイドに挟まれる可能性がある。

16番枠だと、左右に馬はいるが、隣の17番コトブキテティスは大外枠。馬は誰もいない方向に飛び出しやすい分、コトブキが内の、アカイイトのほうに飛んでくる可能性は低い。出遅れても巻き返しやすい枠だったと言える。

内を見ると、白レイパパレがそんなにいい体勢ではないが、ある程度まともなゲートを切っていた。

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戦前、陣営からは「スローペースにしたくない、そうならないためにもある程度速いラップで運びたい」と聞いていた。ルメールも中盤緩めないようにという指示が出ていただろう。

ルメールとしては、行ければ行きたかっただろう。ただこれまでの調教に乗って「ちょっと距離が長い」と言っていたように、すんなりと、自然な感じでスピードを乗せて、ハミを過度に噛ませずに行きたかったはず。押して出して行くなんてもっての他。

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スタートして6秒付近で、白レイパパレのルメールが外を見ている。青シャムロックヒルが逃げる態勢を取っていたことにここで気づいた。ルメールの選択肢は2つある。

●ルメールのとりうる手
A.出していってシャムロックヒルを行かせない
B.シャムロックヒルを行かせて溜める

Aだとシャムロックに絡まれた場合、想定以上にハイペースになってしまう。距離不安のあるレイパパレにとって、外から絡まれることだけは避けたい。

そこでルメールはシャムロックを行かせて、よどみないペースを番手で追走するプランに切り換えた。これに関しては妥当な判断だったと思う。

ここで『逃げ』という選択肢を取れないあたり、レイパパレにとって2200mは長い。適正距離であればまた違うのだがね。

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白レイパパレにとってはやはり最内枠もアダになった

金曜に枠順が出た際にこのように書いたのだが、まー、こうなるよなという展開だ。

青シャムロックヒルにハナを譲ったとして、外枠ならすんなり外の2番手を確保できる。ところが最内だった分、外から来られると包まれてしまう

シャムロックだけでなく橙ロザムールも外から前に行った分、すでに周囲を囲まれてしまっている。最内ということで逃げやすいという論調もあったが、シャムロックも速い。

●エリザベス女王杯のラップ
12.2-10.7-11.2-12.5-12.4-12.3-12.1-12.2-12.2-11.8-12.5

前半600m 34.1
前半1000m 59.0

●宝塚記念 前半600mベスト5
07年 33.5
11年 33.6
97年 34.3
04年 34.3
12年 34.3

シャムロックヒルの作ったペースは前半600m34.1。これは過去の同コース宝塚記念と比較しても、歴代3番目に速いタイムだ。このペースで入ったシャムロックを制してハナに行っていたら33秒台は間違いなかっただろう。昨年のエリザベスも34.9だったからね。

逃げたらハイペース、控えても囲まれる…レイパパレは最初の直線ですでに難しい競馬になっていた

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一方、2番人気だったアカイトリノムスメのポジショニングは良かった。最初は

これは最初の直線。黒アカイトリノムスメは黄ウインマリリンの真後ろで、白レイパパレを斜め後ろから見られるポジションだ。正直、通常であればこのポジションはいい。レイパパレは控えたとはいえ簡単には垂れないだろうし、マリリンはオールカマーで牡馬相手に完勝する実力がある馬だ。

よく回顧に『強い馬の後ろは絶好位』と書いているように、普通に考えたらアカイトリノムスメのこのポジションはいいんだ。

ただ今回、事前の裏話にも書いたようにレイパパレは距離不安、そしてウインマリリンは中間肘の腫れが再発して状態が悪化している。

本来であればベストのポジションが、この2つの不安要素のアオリを食らってしまう悪いポジションになることを、この時の戸崎はまだ知らない

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さすがにルメールもトップジョッキーさ。アカイトリノムスメにとって、今回不運だったのは、内にいたもう1頭の人気馬レイパパレの鞍上がルメールだった点だろう。

これは1コーナー。1つ前の写真と見比べてほしい。白レイパパレのポジションが1つ後ろになっているのがお分かりだろうか。

●エリザベス女王杯のラップ
12.2-10.7-11.2-12.5-12.4-12.3-12.1-12.2-12.2-11.8-12.5

前半600m 34.1

これはつまり、先ほど書いたラップの影響だ。前半600mは34.1と、牝馬限定のGIにしてはかなり速い。それを体内時計で正確に把握したルメールは、このまま前で付いていくとハイペースに巻き込まれてしまうことを察知して、1列ポジションを下げたのだ。

これによって白レイパパレは黒アカイトリノムスメの真横に来てしまう。これもアカイトリノムスメにとっては痛かったんだよ。

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これは向正面。よく見てほしい。白レイパパレが、真横のポジションに来た黒アカイトリノムスメを、自然な感じで外に押し出している

その影響で、黄ウインマリリンの後ろにいたアカイトリノムスメからレイパパレに変わっているのだ。

ルメールとしては1列ポジションを下げていることから分かるように、もうハイペースだと体内時計が訴えかけている。ハイペースになったら青シャムロックヒルなど問答無用で下がってくるし、もしかすると早めに落ちてくる可能性も十分ある。

内で控えることになってしまったレイパパレにとって、一番怖いのは内で包まれることさ。だからこそここで早めにアカイトリノムスメをはじき出して、シャムロックヒルの下がる道を作ってあげたんだよ。

困るのはアカイトリノムスメの戸崎さ。当初回っていたところより2頭分外を走らされてしまっているのだから。

直線部分なら問題ないとして、ここからやってくる3、4コーナーで、元々のポジションより2、3頭分外を回される可能性が出てきてしまったわけだからね。個人的には勝負の分かれ目になったポイントだと思う。

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これは先ほど掲載した1周目の直線。この馬群の形ならまだ良かったのだ。このポジショニングのままコーナーを回って向正面に入れば、白レイパパレが外に弾きだすのは、真横にいる黄ウインマリリンだろう。

黒アカイトリノムスメの前は、自然と白レイパパレになる。アカイトリノムスメにとって好ポジションが向こうから勝手にやってくるのだ。

ところがルメールがペースを察知して考える競馬をやってきたことで、アカイトリノムスメのほうが外に弾き出される形となってしまった

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難しいところで、戸崎がちゃんとしろレイパパレを締めて内に閉じ込めておく手もなくはないのだが、この画像を見れば分かるように内目の芝はだいぶ荒れている

●エリザベス女王杯の開催日程

・20年11月15日
開催2週目、Aコース2週目 開催4日目

・21年11月14日
開催6週目、Aコース6週目 開催12日目

昨年は10月末まで京都開催を行ったため、11月2週目のエリザベス女王杯は開催4日目での競馬だった。

ところが今年は京都開催自体が存在しない。そのため阪神開催が10月頭から12月末まで、3カ月の超ロング開催となっている。阪神の芝はAコース、Bコースだけであることから、11月末までAコースを使って、ギリギリまで馬場を持たせる設定なんだ。

そのため今年はAコース6週目、開催日数にすると12日目のエリザベス女王杯。昨年に比べたら圧倒的に内が走りづらい

仮にアカイトリノムスメが内を締めたとしても、荒れた馬場を走ってしまうことで消耗してしまう。

加えて今日のアカイトリノムスメはパドックからゲート裏まで、前走時よりテンションが高めだった。ゴリゴリ内を締めると自分も折り合いが付かなくなる。強引に内を締めなかったのはその影響もあるのだろう。

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一方で、後ろに目を移すと、緑デゼルの真後ろに桃アカイイトがいる。

昨夜遅くにTwitterに、『今回のポイントは福永、川田がいないこと』と書いた。加えてソダシもいない

何度もこの回顧を見てくれている人間は分かるだろうが、強力な先行馬であるソダシや、馬場を読んでなおかつ技術のある福永、川田両名の後ろはレースを進めやすい。

ところが今回はその1頭+2名が遠征だったりローテの問題で不在。抜けて強い馬も少なかったことから、『後ろにつけられる馬&人が少ない』という問題があった。

数少ないターゲットマンとして武さんがいたのだが、武さんはデゼル。しかも今回は後ろから行くことが目に見えていたから、武さんの後ろを確保できる人馬は限られていたんだ

見事武さんの後ろというポジションを確保したのがアカイイトだったんだよ。スタートで出遅れたことも幸い?して、流れのままに武さんの後ろを確保できた。

何がいいかって、武さんの体内時計を自分も使えることだ。あの天才の体内時計はとんでもなくて、正確にペースを刻んでくる。つまり武さんはペースが速ければそのポジションで動かず脚を溜めるし、遅ければその分早めに動かしていく。

その真後ろの馬はペースが掴みやすい。自分の折り合いに専念できるというわけなのだ。ある意味アカイイトは好位につけられた、とも言える。

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ちょうどこのあたりの動きを横から見てみよう。白ルメールの足元、鐙の位置が、前を走る黄ウインマリリンの武史より前に来ているのが分かるだろうか。

更に言えばルメールの肘、隣の黒アカイトリノムスメ戸崎の肘が、前のウインマリリン武史や、後ろのリュヌルージュ富田より後ろに引けている。

動画ではないから文章にして説明したが、要は馬が行きたがっている。行きたがる馬を抑えるために肘は後ろに引くし、重心が後ろに寄る分、自然と前脚が前の方に出てしまうから、鐙の位置が前方に来る。

●エリザベス女王杯のラップ
12.2-10.7-11.2-12.5-12.4-12.3-12.1-12.2-12.2-11.8-12.5

前半600m 34.1
前半1000m 59.0

左上に55と書いているように、ちょうど太字の部分、1000m通過地点手前のあたりだ。確かに他のポイントよりラップは遅いとはいえ、それでも12.4。しかも前述したように前半600m34.1とハイペース。1000m通過も59秒フラットと速い。

なのにこの人気馬2頭は持っていかれているのだ。レイパパレはずっとこんな調子だったね。もちろん馬の『走りたい意志』と、ジョッキーの『抑えたい意志』の正反対の意志がぶつかるわけだから、当然体力を消耗する。ハイペースの前目でこんなことをやっていては脚も溜まらない

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掛かって抑えきれないこの2頭の壁になっていたのが黄ウインマリリンだ。白レイパパレは掛かってウインの内から、黒アカイトリノムスメはレイパパレに弾き出されたことで、マリリンより外を回っている。

ハイペースで内と外、どちらを走ればロスがあるかって言ったら当然後者。アカイトリノムスメはこの時点でかなり厳しい競馬になっている

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すると、3コーナーではこのような形になる。白レイパパレは内目を走れているが、弾き飛ばされた黒アカイトリノムスメは黄ウインマリリンの更に外。

お忘れかもしれないが、黒い帽子を被っているようにアカイトリノムスメは3番スタートだ。もうこの時点で内枠の利を何も生かせていない

代わりに白レイパパレの後ろは紫ランブリングアレーとなる。本来であればランブリングアレーはいいところに入れたんだがね。

桃アカイイトを見てくれよ。とんでもないところを回っている。これに比べれば全然いいポジションだ。

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なんでこんなに外を回っているかって、アカイイトから見て斜め前の馬たちの動きによるものなんだ。

灰ウインキートスがアカイトリノムスメの後ろに入りにいったことで、赤ステラリアが外に飛ばされる。

その影響で茶リュヌルージュが更に外を回されることで、桃アカイイトがとんでもなく外を回る羽目になっているんだよ。正直、これがいい乗り方なのかと聞かれるとマスクは答えに詰まる

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幸にとってラッキーだったのは、馬群が3コーナーから一気に詰まったことだった。

●エリザベス女王杯のラップ
12.2-10.7-11.2-12.5-12.4-12.3-12.1-12.2-12.2-11.8-12.5

ちょうど3、4コーナーだからこの太字のあたり。前半からペースが速かったことで、先行馬のペースが上がらず、後ろの馬が追いついたんだ。

馬群が詰まったことで、桃アカイイトが後ろからでも捕まえやすい形になったんだよな。縦長だと捕まえるのも大変だが、一団だと前と後ろの距離が近い分動きやすい。

幸がレース後「内回りコースということもあり、早目早目に上がって行きました」と話しているように、ここで動いたのが最大の勝因。内の赤ステラリアを絞るように動いて、早めに黒アカイトリノムスメにとりつくことができた。

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これは赤ステラリアの口向きの悪さも味方したね。ステラリアは以前から口向きが悪い。これは裏話にも書いた。その分コーナーを曲がる際に慎重になっていることで、外からアカイイトが一気に締めることができたとも言える。

一方この4コーナー手前でもったいなかったのは水イズジョーノキセキだ。外からアカイイトが上がっていったようにレースが動いたポイントで、黄ウインマリリンが動かないものだから立ち上がりかけている。

マリリンは前述通りデキが悪い。運悪くそんなマリリンの後ろになってしまったイズジョーは、ここがスムーズだったら3着はあったと思う。

実際騎乗した和田は「4コーナーでゴチャついて踏み遅れました」と話している。パドックのデキは正直一番良かった。裏話通りデキもかなり良かっただけに、もったいなさがあるシーンだよ。

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4コーナー。俺が道中「ランブリングアレーいいポジ」と租界に書いたのだが、それはこの手前で、白レイパパレの後ろに紫ランブリングアレーが入れたから。

橙ロザムールがハイペースの影響で早くも止まり、白レイパパレが内から抜け出したところで、その真後ろをついてこれている。正直、これ以上ない展開だよね。

ここまで見ていて、あ、ランブリングアレー来るなと一瞬思ったほど。そこから手応え通り伸びなかったあたり、距離なのだろう。2200は若干長いということなのだと思う。

実際騎乗した隼人も「狙ったところでかからずスムーズに運べました。これならと思いましたが追って伸びなかったのは距離でしょうか」と話しているように、レース自体はうまくいっていた。隣で水イズジョーノキセキが、黄ウインマリリンが邪魔で動けていないのとは対照的だよ。

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直線入口で上手いと思ったのが、金クラヴェルのノリさんだ。

前を走っていたのは銀テルツェットのデムーロ。クラヴェルにとって、空いているスペースは銀の丸で囲んだ、テルツェットの左側だけ。

テルツェットがすこーしずつ、内目に寄っていってるんだよね。だからデムーロは右ムチを叩いて、内目に寄らないようにしている。

それを真後ろでノリさんが見ているんだ。デムーロが右ムチを叩いても内に寄りつつあったテルツェットが、逆に外に戻ってくる可能性は薄い。一瞬でそれを判断して、少しずつ追い出しながらギアを上げて、完全に前が開くのを待っている。

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これはパトロールを見てほしいところで、銀テルツェットが完全に内のほうに寄った瞬間、金クラヴェルのノリさんが左ムチを叩いている。まるで無駄のない動きだった。たぶんここで焦っていると、その動作分4着だった可能性がある。ソフトフルートが3着でもおかしくない。

普通だったら開いているところに早めに飛び込みたくなるが、ミスステップの原因にもなる。どうせ前が開くと狙いを絞っているノリさんの精神力が凄い。

以前ノリさんがUMAJO用のサイトで『競馬はギャンブルだ』と書いていたが、こういうギャンブルに見えて、実はよく見られ考えられている進路取りが横山典弘の真骨頂だよ。

ノリさんがレース後「皆さんが思っているより難しい特殊な馬を、よくスタッフが作ってくれました。すごい脚を使っているように見えますが、一歩間違えれば掲示板もないような馬です」と話しているように、この馬は本当に仕掛けどころ、合わせどころが難しい。細心の注意を払った好騎乗だった。

ただ今回うまく行き過ぎたのも事実。どうしても乗り難しく、GI3着だからと、次牝馬限定のGIIIなどに出てきても取りこぼす可能性は十分ある。乗り難しいのはポトリザリスの牝系によくあることで、乗り手を選ぶ血統。『うまく乗れれば』という前提条件がつくことを忘れたくないね。


対して勝ったアカイイトは、ハイペース、そして道中デゼルの後ろに入れたり、3コーナーで馬群が詰まって動きやすくなったなど、全てがかみ合った。

デキも良かった。裏話で「どうしても体に弱いところがあったからこれまで調教もセーブ気味だったけど、そんな状態ではGIでやれないから今週しっかり攻めた。これだけ攻められるようになったように体質も強くなったし、成長している。掲示板くらいは狙えるんじゃないか」と書いたように、今回はここ最近で一番のデキと陣営も豪語していたほど。

●アカイイトが勝った垂水S
12.7-11.0-11.3-11.5-12.0-12.1-11.5-12.3-12.2

これはアカイイトが勝った今年の垂水S。中弛みしないペースを豪快に差し切ったように、中盤ある程度流れて上がりの掛かる展開を好むのはよく分かる。

とはいえ、大外を回って勝ったのも事実。力もつけている。今後は牡馬一線級が相手ではなく、中盤流れるレースでまた買いたい。もう少しゲートが上手くなってほしい

2着ステラリアは3コーナーでアカイイトに締められる展開も痛かった。ただ逆に言えば締められてしまう現状でもある。秋華賞も1コーナーで締められていた。

口向きがもう少しスムーズになってコーナリングが上手くなれば、よりやれそうな気配はある。スタッフさんも言うようにまだまだ完成途上。成長待ちとはなるが、広いコースの牝馬限定戦なら今後も気にしていきたい

3着クラヴェルはもう書いたから、4着ソフトフルート。2200m適性の高さを改めて見せて形だが、今回は道中後方でノープレッシャー、直線も前が適度に開くなど、若干恵まれた面もある

スタッフさんの評価もなかなか高い馬で、牝馬限定重賞なら手が届く馬だが、1800は短く、2000m以上の牝馬限定戦はかなり少ない現状を考えると当分ヒモ候補となりそう。

5着イズジョーノキセキは前述した通り。パドック抜群、4コーナーでスムーズならと思わせる内容だった。こちらはここ最近、走るたびに数字、内容が良くなっている。今が成長期。時計の掛かる良馬場なら重賞も勝ち負けが狙える。来年春が楽しみだね。


6着レイパパレは先ほど道中掛かっている画像を上げたように、完全にリズムを崩していた。それでこのペースを早めに動きながら6着だから、実力だけならメンバー中NO.1だったと思う。

まー、一番強い=勝てるとは限らないのが競馬だ。陣営が天皇賞に行きたかったのに都合上2200を使ったり、最内に入ったり、過程も全てチグハグ。

ただ、ここでしっかり負けたことで、裏話にも書いたようにこの先大幅な距離短縮プランが実行される可能性が高い。兄シャイニングレイも中距離重賞を勝ちながら、歳を重ねて折り合えなくなり短距離馬となった経緯を考えると、大幅短縮一発目でいきなり結果が出ておかしくない

年末、楽しみにしたいね。本質はマイル以下の馬だろう。

7着アカイトリノムスメもレイパパレ同様道中折り合いを欠くシーンがあった。中3週で再度の阪神輸送なんだからテンションが上がるのはもう仕方ない。休み明けから走れる気性がアダとなってしまった。

今回詰めた分また間隔を開けて年内は使わないだろう。器用な馬でコースを選ばない、平均点の高いタイプ。牡馬相手にGIIを勝ち切れるかは疑わしいが、中山記念あたりで相手には入れておきたい馬。

現状の気性を考えるとヴィクトリアマイルに短縮すると面白そうだね。それこそに夏を超えて、歳を重ねるごとにスピード色が増したアパパネの血が出てきた感触。

8着デゼルは展開、ペースを考えたらもっと詰めていないといけない馬。夏場に蹄を傷めたり夏負けした影響が尾を引いてしまっている。今日のパドックも微妙で、立て直しにはもう少し時間が必要だと思う。府中牝馬から中3週程度で変わるレベルのデキではない。

同厩の9着ランブリングアレーは上手く乗られていた。前述した通り距離だろう。マイルはやや短くペースによるとなると、結局中山牝馬Sまでチャンスがなさそうな気配があるね。


さて、今日のラストは16着だったウインマリリンを取り上げる。

今日は本来のウインマリリンではありませんでした」と武史は言う。この言葉に尽きる。

Twitterにも書いているが、オールカマーのあの内容の時点でエリザベス女王杯も勝ったと思ったよ。それだけに、レース後肘の腫れが再発してしまったのが残念でならない。

狙ったレースに、万全の状態で使うことがいかに難しいかがよく分かる。ゲームにはない現実世界では、どうしてもこういうアクシデントは起こりうる。

腫れの切開手術を夏場に行った後、直行でエリザベスだったらこのような問題は起きていなかったかもしれない。ただそれは結果論。オールカマーを使っても腫れが再発しなかったかもしれないし、これはもうやってみないと分からない。

パドックのデキも、いい時のマリリンを見ているだけにこの状態で走るのかと心が痛くなる思いは正直、あった。ただ腫れた後、陣営が手を尽くしてきたのも見ているから、消さず、マリリンもヒモで買った。

情を入れた買い方はしてはいけないと常日頃自分に言い聞かせながらも、またやってしまった。反省はしているが、後悔はしていない。

マリリンがいい馬なのは明らかで、今回の大敗で何か評価が下がるわけでもなく、参考外でいいだろう。持病だからこれからも腫れと付き合っていくことになるだろうが、万全の状態ならGIも勝てる実力はある。来年の宝塚、エリザベスで期待したいね。

普通だったらこのレベルの疾患は、俺らが知っていても外には漏れないことが多い。それでも陣営は腫れの再発を公開した。

ハーツクライのジャパンC前のノド鳴りの時といい、堂々と公開した手塚厩舎のスタッフさん、先生に敬意を表したい。



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