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中山金杯を振り返る~最悪の誕生日~

新年最初のレース回顧をお届けしようと思う。

元々このコーナーは基本的にGIだけにしようと思っていたのだ。何て言ったって、書くのに時間が掛かる。平気で2時間くらい時間を取られる。GIならまだしも、普通の重賞で書くにはさすがにコストが掛かり過ぎるのだ。

まー、今回の中山金杯は今年最初の重賞でもある。年末の有馬記念の回顧も反響を頂いたことだし、中山金杯についても回顧を作成することにした。

書き出してから改めて感じたよ。やっぱり時間も労力も相当掛かる。

今回もしっかり、読み込んでほしい。

●中山金杯 前提

紫 ロードクエスト 西村淳
白 テリトーリアル 石川
黒 ココロノトウダイ 丸山
赤 ショウナンバルディ 津村
水 カデナ 三浦
青 リュヌルージュ 中井
黄 ヒシイグアス 松山
緑 ロザムール 北村宏
桃 ウインイクシード 戸崎
灰 バイオスパーク 池添

個人的には、予想外のペースだった。

12.5-11.4-13.1-12.4-12.6-12.1-11.8-11.5-11.3-12.2

●中山金杯 過去5年前半3F
16年 37.2
17年 36.1
18年 36.5
19年 35.6
20年 36.5

21年 37.0

マスクは予想の前提としてこのメンバーなら36秒前後で入ると思っていたから、この時点で誤算ではあった。

予想を見てもらえれば分かるが、マスクの◎はショウナンバルディ。

『何より大きいのは内枠を引けたことだ。例年有馬記念は中山Aコースで行われ、金杯からCコースの開催が始まる。だから金杯は内枠が穴を開けやすい状況が生まれるんだ。昨年11番人気で3着のテリトーリアル、2年前9番人気で3着のタニノフランケルは共に最内枠だったのがそれ』

予想にこう書いたように、Cコース変わり最初の日で、より内枠の利が大きくなると踏んでの予想だった。ちょっと自信があった。

騎乗するのは津村。今日、1月5日が誕生日。34歳。早いもんだ。あの津村がもうまもなくアラフォー。信じられないね。

しかも津村は今、JRA通算499勝。ショウナンバルディで勝てば、通算500勝とバースデー重賞Vを中山金杯でどちらも達成する快挙を果たすはずだったんだ。

ところがだ。

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スタート後。赤ショウナンバルディがスタート後外に飛んでいってしまっている。おかげで水色カデナの進路を潰した。これでまずカデナが終わった。

ただこれ、戒告は取られていない。スタートを出た直後の動きだから、不可抗力でもある。馬をまっすぐ前に出すって本当に難しい作業だからね。世界のトップジョッキーだってスタート後ヨレることはある。

この時点で何か嫌な予感はした

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中山金杯は2000mだが、今回の中山金杯は、スタートして400m足らずで結果が決まってしまったようなレースだった

注目したいのは緑ロザムールの動き。

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緑ロザムールの内を締めてくるタイミングが早いのだ。普通、もっとじわっと内を締めてくるものだが、ロザムールはかなり早い段階から内を締めにいっている。しかも急速にね。

ハナを切りたい気持ちは分かる。この動きがわざとかどうかは分からないが、後ろの黄ヒシイグアス松山が手綱を引いている。もう少しタイミングが悪かったら、ヒシイグアスより内の馬たちはみんな手綱を引いて不利を受けていただろう。今のところ制裁は掛かっていないが、このハナの取り方は正直、マスクとしてはナシ。これで内枠の馬はかなり厳しくなってしまった

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時は15時36分。パトロール見なくても分かるこの不利により、マスクの嘆きが雑談板に記録として残っている。

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ロザムールがあまりにも一気に締めるものだから、赤ショウナンバルディは完全に手綱を引いて下がってしまっている。

バルディにとって不運だったのは、最内にいた白テリトーリアルの石川の意識だ。

これを見ると分かるように、白テリトーリアル石川がラチから3頭分開けている。Cコース変わり初日だから決してラチ沿いは悪くなかった。走れる状態だった。

テリトーリアルは前走の中日新聞杯で同じく内枠からラチ沿いにいたら、外からバラックパリンカ、シゲルピンクダイヤに締められて、自分のタイミングで動けなくなっていた経緯がある

石川はその中日新聞杯の反省を生かしたかったのだろう。ラチ沿いが走れる状態でも、あえてラチから1、2頭分開けることで、締められてポジションをなくさないようにしたかったんだろうね。

最内テリトーリアルが上位の経緯から内を開けたことで、ロザムールとの間に挟まれた馬たちが、より行き場をなくしてしまう、そんな状況が生まれてしまったわけだ。伏線は中日新聞杯にあったと考えると面白い。

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結局ロザムールは1コーナー前にテリトーリアル以外の全馬を締め切り、内にいた馬たちはポジションが下がってしまっている。

ここでポイントとなったのは、『内枠の位置関係』だ。租界の雑談板でも丸山を褒めたんだが、赤ショウナンバルディは完全に下がったのに対し、黒ココロノトウダイ丸山は締められても、なんとか内のポジションをキープしようと頑張っている

これが大きかった。ココロノトウダイは過剰にポジションを下げず、ショウナンバルディら他の内枠の馬に対してラチ沿いの前目に付けられたのだ。

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向正面。上記、黒ココロノトウダイ丸山が1コーナー前でポジションをキープした結果、こうやってココロノトウダイが白テリトーリアルの後ろにいる。

赤ショウナンバルディはその斜め後ろ。前にリュヌルージュ。リュヌルージュが自分から動いて勝てるような強い馬だったら話は異なるのだが、まー、このメンバーに入れば力上位ではなく、キレもしない。すでにショウナンバルディ津村のポジションは他馬に比べてだいぶ悪い

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3コーナー。黄ヒシイグアスに注目してほしい。

この1つ前の、向正面の画像を見ると黄ヒシイグアスの外に8枠のバイオスパーク、ダーリントンホール、そして6枠ディープボンドと3頭馬がいる。

ところが3コーナー。黄ヒシイグアスの外を見てくれ。誰もいないのだ。

ヒシイグアスはそれなりに器用だが、やはり外から締められたくはない。うまく外に出したいと思っていたはずだ。これは間違いないと思う。

向正面で3頭、外に馬がいたのに、偶然その3頭がバラけたのだ。灰バイオスパークの池添は早めにポジションを上げていき、ダーリントンホールはデキ不十分のためついていけず、ディープボンドの加速もイマイチだったからこそこの状況が生まれたのだが、非常にラッキーだったと言っていい。誰からも外から被されることもなく、プレッシャーを受けない位置にいる

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改めてこの画像を見てほしい。内はどうか。

黒ココロノトウダイは白テリトーリアルの後ろ。テリトーリアルが1コーナーまで内にスペースを開けながら回ったことで、この時点でもまだ内ラチとの間に余裕がある

対して赤ショウナンバルディの前は相変わらずリュヌルージュ。条件が好転していない。津村は内心やばいと思っていたはずだ。リュヌルージュが自分から馬群を割るとは考えにくいし、このままだと詰まるだろうなって。

画像10

4コーナー手前。ここで青リュヌルージュが外に少し動いたため、黒ココロノトウダイの左右のポジションが1頭分開いた。これでココロノトウダイは左右に動ける。

対して青リュヌルージュの後ろにいる赤ショウナンバルディは未だに前にリュヌルージュがいるおかげで進路が定まらない。『リュヌルージュの後ろにいるか、隣にいるか』がこのレースで最もポイントになった箇所で、結局この位置取りが決まったのは1コーナー前、ロザムールが締めた箇所。

俺が序盤に書いた、『今回の中山金杯は、スタートして400m足らずで結果が決まってしまったようなレースだった』というくだりは、ここに掛かってくる。すでにこの時点でココロノトウダイのほうが、ショウナンバルディに対して明らかに動けるポジションにいるわけだからね。

外を見ると相変わらず黄ヒシイグアスの外には誰もいない。今日の中山芝は4コーナーで機動力が生かせる馬場。ジュニアCも、6Rもそう。4コーナーで動ける位置にいたかどうかが勝負を分けたと言っていい。つまりこの時点でショウナンバルディの負けはもう確定している。

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直線入口。スペースを見つけてそこに入った黒ココロノトウダイに対し、赤ショウナンバルディは黄ヒシイグアスの通った進路の後ろを通って行くしかない。すでに後手に回っている。

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決定的だったのがラスト。直線で内にいた青リュヌルージュが外に寄ってきて、外にいた紫ロードクエストが内に寄ってきた。おかげで赤ショウナンバルディがまた進路を無くしている。最後まで今日の津村は運がなかった。

まー、最初の直線でもっと抵抗していれば状況は変わった可能性があるし、ココロノトウダイとショウナンバルディの枠が逆でも状況は変わったかもしれない。枠が抽選で決まっていく競馬において仕方ないことではあるのだが、1つの動きが最後まで影響を与えてしまう競馬の恐ろしいところでもある

ペースが遅かったのもあるんだよな。

12.5-11.4-13.1-12.4-12.6-12.1-11.8-11.5-11.3-12.2

前半に13.1なんていうラップが入って前の馬の息が入ってしまったことから、馬群が詰まって前が簡単に開かない展開になってしまった。息が入って、しかも前に誰もいなかった逃げ馬ロザムールが4着、2番手ウインイクシードが3着だったのもそれ。

Cコース変わり初日でラチ沿いも走れる状態だったことから、『内前有利』レースだったことは間違いない。そう予測してショウナンバルディから買ったのにな。こういう展開かとレース中からすでに落ち込んでいた。

逆に考えれば、この内前有利で不利なポジションを回ってきた馬は次評価を上げることになる。大外から早めに動いていった10着バイオスパークはこれ。

4コーナーで後方から外を回っていって7着だったシークレットランも、展開、馬場を考えればよくやっているほう。スタートでショウナンバルディにやられ後手に回った11着カデナ、そして13着だったショウナンバルディは次見直し対象だろう。

さすがにGIほどではないが、重賞ともなれば1つのミスで競馬が終わってしまう。中山金杯は改めてその事実を我々に教えてくれたレースだったと思う。


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