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21年チャンピオンズCを振り返る~新たな帝王の勝因と白毛の女王の敗因~

つくづくトゥザヴィクトリーは凄い馬だったのだなと思うね

86年以降のダートGIにおいて、初めてのダート競馬で好走したのは01年フェブラリーS、トゥザヴィクトリーの3着、ただ一度だけ。

加えてドバイワールドカップ2着、逃げても追い込んでも競馬ができて、桜花賞でも有馬記念でも好走するなんて、今考えるとバケモノだ。繁殖牝馬としても重賞勝ち馬3頭を送り出してしまうのだから、間違いなく日本競馬史に残る名牝と言っていいだろう。

稀にクロフネなんていうオバケもいるが、年々日本競馬は専業化している。短距離は短距離馬、ダートはダート馬のテリトリーと、それぞれ独立国家のようになってきた。

中にはグランアレグリアやアーモンドアイのように3階級制覇する名牝も現れるが、芝、ダートの両方でGIを勝つ馬は86年以降6頭だけ。間違いなく偉業だ。

今回、その偉業に挑んだのがソダシ。

クロフネという血統背景でダートもこなすという論調はあった。とはいえクロフネ牝馬は上位条件のダートでそこまで強くない。それでもソダシはクロフネ牝馬の中でも例外的存在なのも事実

今のソダシのフットワーク、ここ最近のレースぶりから、ソダシがどこまで走るのか、マスクはある意味楽しみにしていたんだよね。

木曜、枠順を見て驚いたよ、ソダシが最内に入ったのだから。今のソダシの精神状況で最内枠に入れるとか、競馬の神様も面白いことをするなと思ったものだ。

今回はソダシ含め、枠の並び、隊列がポイントになるレースだったね。ジャパンCとはまた違う見所が散りばめられたレースを振り返る。

●チャンピオンズC 出走馬
白 ①ソダシ 吉田隼
茶 ②カジノフォンテン デムーロ
紫 ③サンライズノヴァ 松若
黒 ④インティ 武豊
赤 ⑥テーオーケインズ 松山
青 ⑦サンライズホープ 幸
黄 ⑨オーヴェルニュ 福永
灰 ⑩ケイティブレイブ 内田
緑 ⑪アナザートゥルース 坂井
橙 ⑬チュウワウィザード 戸崎
桃 ⑯カフェファラオ ルメール

今回、マスクが一番気にしていたのは外の隊列だった。

というのも、1枠にソダシ、カジノフォンテンという先行馬が入ったからだ。ソダシは初めてのダート。カジノフォンテンは元々揉まれたくない

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スタート。白ソダシ、茶カジノフォンテンが両方悪くないスタートを決めることができた。

発走寸前にダノンファラオが暴れて、他馬は余計にゲートの中で待たされてしまった。ソダシもゲートの中で外を見ていたり、危ない空気を醸し出していたのだが、前走ほどゲートの中で暴れる素振りはなかった

中京ダート1800mは構造上出遅れが多い。昔コパノリッキーがチャンピオンズCで出遅れたことがあるんだけど、坂の真下にゲートを設置することで後ろ脚が滑りやすいんだよな。これはもう気を付けて出すしかない。

ゲートの中で暴れやすいソダシが、一番ゲートの中に入れられる最内枠で、なおかつ出遅れ率の上がる中京ダート1800となれば、かなりの確率で出遅れるのではないかとマスクは見ていた。

隣のカジノフォンテンも同様。今回が初めての中央競馬。普段、所属している南関競馬では『尾持ち』という制度がある。

ゲートの中に入った馬の尻尾を、後ろにいるスタッフさんがスタート直前まで持っていられるという制度だ。中央では認められていない制度だから、見たことない人も多いかもしれないね。

尻尾なんか持つだけで変わるのかと思われそうだが、これが変わるのだ。ゲートの中で後ろ脚を下ろそうとする馬には非常に効果的。

話は飛んだが、この尾持ちをカジノフォンテンはやっている。中央では使えない分、今回出遅れる可能性があったんだよ。

以下、想定される2パターン。

①ソダシ 吉田隼
②カジノフォンテン デムーロ
⑦サンライズホープ 幸
⑨オーヴェルニュ 福永
⑪アナザートゥルース 坂井
⑭ダノンファラオ 横山武
⑯カフェファラオ ルメール

1枠2頭が先行するパターン(A)
    内ラチ
ーーーーーーー
      ①→
      ②
     ⑦
     ⑨
     ⑪
    ⑭
    ⑯

もし仮に1枠2頭が行くとすると、サンライズホープが外の3番手、オーヴェルニュが外の4番手になって、アナザートゥルースやダノンファラオは更に外を回される可能性がある。

カフェファラオなんてもうノーチャンスだよね。ただでさえ内目を通る馬が有利になりやすいコースで、こんなに外を回されたらいくらカフェファラオが強かろうが厳しい。

1枠2頭が先行できないパターン(B)
    内ラチ
ーーーーーーー
   ① ⑦→
   ② ⑨
     ⑪
    ⑭
    ⑯

仮に1枠2頭が先行できなかったパターンになると、こんな感じ。誰がハナを切るかは置いておいても、⑦サンライズホープあたりがハナに行って、⑨オーヴェルニュや⑪アナザートゥルースは前述のパターンの外4、外5番手に対し、もっと内目を回れる。

だからこそ、1枠2頭が出られるかどうかが重要だった

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白ソダシ、茶カジノフォンテンの2頭がある程度いいスタートを切れたことで、パターンAに近い形になったんだよね。

こうなると、黒インティも先行すれば、青サンライズホープが外の4番手、緑アナザートゥルースが外5番手、その外にいる馬は更に厳しくなる。

普通だったらこれで外の先行馬はジ・エンドのはずだった

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ところが、茶カジノフォンテンのデムーロがなぜか下げちゃったんだよね。

レース後デムーロが「馬混みが良くなかったです。あとから映像を見ても、耳を絞ったり、尾を振ったりと、いつものこの馬の走りではありませんでした」と話していたが、これまでのレースを見ていたのかな。

かしわ記念で4番手から進んだ時は外目を回っている。内で揉まれていい馬でないのは、過去のレースを見れば分かる。少なくともいつも乗っている張田昂は内に入れない。

ここで下げて内に入れてしまったことで、カジノフォンテンが自爆してしまったんだ。

おかげで黒インティが外の2番手、サンライズホープが外3番手、アナザートゥルースが外4番手に入った。

これ、カジノがそのままポジションをキープしていたら、アナザートゥルースが外5番手になる。アナザーは1頭分得した形になる

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他にも恵まれた馬たちがいる。内で脚を溜める馬たちだ。

というのも、大外の桃カフェファラオが積極的に行かなかったんだ。パドックからテンションが高かったから、スタートから出して行くと掛かる可能性があった

この馬は『揉まれなければいい』というタイプで、中団から差す競馬もできるタイプ。ルメールも無理せず中団から運ぶ作戦を取った。

もしカフェファラオが積極的に先行すると、その内の先行馬が絞られて、内で脚を溜める馬たちが1列以上後ろに下がる可能性がある。赤テーオーケインズのポジションも、もっと後ろになってもおかしくない。

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加えて赤テーオーケインズにとってラッキーだったのは、カジノフォンテンが謎に下がっただけでなく、自分の前が黒インティの『武豊』だったこと。

以前から回顧で触れているように、レースにおいて頼りになるポジションは強い馬の後ろか、武さんの真後ろ。武さんは体内時計が正確だから動くタイミングを間違えない。

そしてその卓越した技術力から、左右にフラフラしたりしない。後ろの馬の邪魔になることがそうないんだよな。自分が騎手だとして、前の馬がフラフラしていたら乗りにくいじゃん?だから武さんの真後ろは絶好位になる。

しかも前述したように、武さんは『体内時計が正確』。武さんを外からまくるように動くということは、=オーバーペースと言っているようなもの。

今回の場合は外の3番手に青サンライズホープ幸がいる。あまり展開を壊さないタイプのジョッキーで、武さんを締めに行くようなタイプではない。テーオーケインズは接触の多い1コーナーに、プレッシャーが少ない形で入ることができたんだ

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黒インティの武さんが上手いと思わされるシーンがもう1つ。

これは2コーナーのパトロール。逃げる白ソダシの真後ろが少し空いているのがお分かりだろうか。半馬身だけラチとの間にスペースを取って回っているんだ。

これがラチ沿いをぴったり回ると、外から動いてきた馬に完全に締められてしまう。インティもそこまで揉まれたくない。常に外に出せる状況を整えつつ、外を回し過ぎない、絶妙なラインを回っている

武さんとしては、インティが4番枠を引いた時点で『揉まれない競馬』がテーマだったと思う。たまに悪いゲートもしっかり決めて先行策も取れたし、たぶんここまでは武さんのイメージ通りの競馬だったはず。

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ただ黒インティは、向正面で少し掛かり気味だったんだよね。レース後武さんが「道中力んで走っていて、それが痛かったです」と話しているように、若干ハミを噛み気味の走りだった。

これはパトロールビデオを見てくれれば分かる。インティが力んで、頭を下げ気味になっているんだ。2コーナーまでの入り方が完璧だっただけに、この掛かりがもったいなかった。距離延長だし仕方ないんだけどね。

もう一点、気になった点がある。青サンライズホープの内に、1頭分のスペースが空いていた点だ。1、2コーナーから空いていた。この点に関しては後述。

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引き続き向正面。外の差し馬にとって不幸だったのはここ。

白ソダシがちょっとずつ外に寄り始めたんだよね。それに合われて、斜め後ろの黒インティが次第に外目に寄っていく。こうなると青サンライズホープより外、桃線をつけたあたりの馬たちは、青サンライズホープが動かない限り、動きにくい。

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橙チュウワウィザードはポジションが良くなかった。ソダシ、インティの動きで更に外が動けないことから、進路がなくなってしまっている。

レース後チュウワの大久保調教師が「テーオーをマークして、と伝えていたんだけど、展開的にそれができなかった」と話しているのだが、赤テーオーケインズの真後ろを黄オーヴェルニュに取られてしまっているんだよな。おかげでオーヴェルニュの外を回されてしまっている。

レース後オーヴェルニュの福永は「勝ち馬の後ろについて行きたかった」と話しているように、福永とチュウワ戸崎の狙いは『テーオーケインズの後ろ』で一致していたんだよな。

ただテーオーの真後ろを取れるのは1頭だけ。オーヴェルニュは⑨番、チュウワウィザードは⑬番。⑥番を引いたテーオーにより近いのはオーヴェルニュのほう。チュウワは外枠を引いたのが完全にアダになっている

タラレバになってしまうけど、これ、オーヴェルニュが⑬、チュウワウィザードが⑨だったら、チュウワがテーオーの後ろにいた可能性が高い。勝ち馬の後ろをついていけていたら、少なくとも6馬身も離されて負けることはなかっただろうね。

テーオーケインズ大勝の理由の一つになったシーンだった。

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橙チュウワウィザードは苦しいよな。これは3コーナー。

チュウワが動くには、前を走る桃カフェファラオが動かないといけない。カフェが動くには緑アナザートゥルースが上がっていかないといけない。でないと、カフェはアナザーの外から動いていかないといけないだろう?

チャンピオンズカップのラップ

・18年 良 1:49.3 ルヴァンスレーヴ
12.8-11.2-13.1-12.5-12.3-12.3-12.3-11.7-11.9
前半1000m 61.9

・19年 良 1:48.5 クリソベリル
12.8-11.3-12.5-12.1-12.1-12.0-12.0-11.6-12.1
前半1000m 60.8

・20年 良 1:50.1
12.7-11.1-12.7-12.0-11.8-12.0-12.1-12.0-12.9
前半1000m 60.3


・21年 良 1:49.7
12.5-11.1-12.9-12.8-12.1-12.3-12.2-11.8-12.0
前半1000m 61.4

前半1000mは昨年より1.1秒も遅い。8Rの1勝クラスの1000m通過は62.2。1勝クラスと0.8秒差と考えれば、そんなに速くないことが分かってもらえると思う。

そんなに速くないペースを追走しているのだから、アナザートゥルースあたりも十分脚は溜まっている。下がってくるとは考えにくい。

仮に外から上がっていってアナザーを締めに行っても、まだ余力のあるアナザーに張られてしまうのは明らか。カフェファラオは動かない。その影響でチュウワウィザードも動けない

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一方、内目に目を移すと、青サンライズホープと黒インティの間が半馬身空いているのがお分かりだろうか。

これ、前述したように2コーナーからそんな感じだったんだよね。サンライズホープが曲がれてないんだ。この件に幸は言及していないのだが、赤テーオーケインズはずっとこの『少しだけ空いているスペース』を見ていた。

先ほど書いたように、今年のチャンピオンズはそこまでペースが速くない。どの馬も脚がそれなりに残っている状況から、スペースが簡単に開かないことが推測される。

馬群の中にいたテーオーケインズの松山は『どう捌くか』を考えながら乗っていたと思う。

サンライズがずっと締める形だと進路もなく、直線もっと考えないといけなかっただろう。ずっと空いていたからこそ、松山は進路の狙いを定めることができたんだよな。大きい半馬身だったと思う。

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直線。青サンライズホープが内目を若干空けてしまったことで、赤テーオーケインズは黒インティとの間のスペースを狙っている。

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しかも赤テーオーケインズにとってラッキーなのは、自分の前が黒インティの『武豊』だったことだった。これさっきも書いたな。

武さんはインティが少し外に行きかけていたんだけど、すぐに右ムチを叩いてまっすぐ走らせようとしているんだ。これでインティは内ラチの方向に寄っていこうとする。

そうなると赤テーオーケインズの進路が空くわけだ。最初半馬身しかないスペースが、武さんのコントロールのおかげで1頭分のスペースに化けた

さすがにサンライズを少し挟む形になってしまったが、この程度では裁決には掛からない。テーオーケインズの勝因は内目の枠ということに加えて、『武豊も内枠だった』ことが挙げられる。

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武さん的には誤算というわけではないと思うけど、白ソダシが垂れるのが早過ぎたのも4着の原因の一つだったろうね。

これ、逃げたソダシがもう少し粘っていれば、インティはソダシと併せながら直線を進めたんだよ。残り400mで先頭に立ってしまって、目標物がなかった。併せる形ならもう少し粘れていた可能性はある。

俺は予想に書いたようにインティからの目も組んでいたから、目標がなくなった時点で嫌な予感はあった。

去年と今年のチャンピオンズカップ

・20年 良 1:50.1
12.7-11.1-12.7-12.0-11.8-12.0-12.1-12.0-12.9
前半1000m 60.3

・21年 良 1:49.7
12.5-11.1-12.9-12.8-12.1-12.3-12.2-11.8-12.0
前半1000m 61.4

一部で早仕掛けが敗因と言われているが、改めて昨年のペースと比べれば分かるように、今年は昨年に比べたらだいぶ楽なペース

単純にソダシが早く垂れすぎているだけなんだ。相対的にインティが早めに仕掛けたように見えるだけなんだよな。ちょっと掛かった以外は完璧に運べていただけに、あと一つ、運がなかった。

ただ、一番いい時のインティはゆったりしたペースを番手で追走したら、多少掛かろうが勝っていたはず。パドックのデキは素晴らしかった。あのデキでこのペース、最後止まったのは現状の実力だろう。少しずつ衰えが見えてきているね。


2着チュウワウィザードは道中テーオーケインズの後ろを取れず、外を回ったことを考えれば仕方ない2着。ペースを考えればよく差している。

ポジション1つで6馬身つけられることはなかっただろうが、少なくとも逆転はなかったと思う。こちらは能力減退というより、道中の反応が鈍くなりつつある。手応えも少々うさんくさい。

キングカメハメハ産駒によくいるが、歳を重ねると反応が鈍くなってしまう面が出てきたように見える、もう6歳だもんな。これだけ一線級で戦ってきてまだ戦えていること自体凄いのだが、全盛期を100とすると95くらいになったように思う。川崎記念なんていいんじゃないかな。

3着アナザートゥルースは外外を回ったことを考えれば立派な3着。こちらももう7歳。セン馬の競走寿命は長いとはいえ、キョウエイトルースの仔はサウンドトゥルーといい本当に長持ち。

ペースが少し緩めだった分もあったと思うが、何より揉まれなかったことが良かった。揉まれると別馬のように脆い。次も外枠なら。内枠ならハナが欲しい。東海Sでまた会おう。

4着インティは前述した通り。予想はインティとテーオー中心だったから馬券的には悔しいところなんだが、掛かったとはいえこの乗り方で4着なら諦められる。GIIレベルなら、揉まれなければ単まであっていいと思う。ただGIだと揉まれなくてももう単までは苦しいな。


5着サンライズノヴァはもったいない。坂路でものすごい動きをしていたように調子の良さは伝わってきたが、パドックは過去最高。7歳でここまで上がってくるかと思うほど素晴らしいパドックだった。

人気としては13番人気だったものの、あの風格、歩き方はまるで1番人気。それくらいのデキで、これはもう乗り方次第だと思った…のだがね。

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これは向正面。紫サンライズノヴァは馬群の真ん中、後方を追走している。内枠なのに真ん中あたりにいるのは、内で締められたり進路をなくさないためだろう。

確かに、この段階では内を突くのも怖い。ソダシとカジノフォンテンが垂れてくるかもしれないし、外には人気のカフェファラオやチュウワウィザードがいる。外に気があるのもまだ分かるよ。

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でもそうやって橙チュウワウィザードの後ろで迷っているうちに、外から灰ケイティブレイブが動いてきたんだよ

もちろんサンライズノヴァよりケイティのほうが長く脚が使える。ノヴァより早く動き出すのは分かる。

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それによって直線入口で、紫サンライズノヴァは灰ケイティブレイブに進路を締められてしまったんだ。

前には反応がそこまで速くない橙チュウワウィザード。完全に詰まってしまっている。内のスペースが空いているのは結果論だから内を突けとは言わないが、本当にそこしか進路がなかったのだろうか。

待つだけ待っていたら、外からやってきたケイティに締められるなんて不完全燃焼もいいとこ。マスクはレース後Twitterで松若に怒っていたのだけど、それはこのポイントについてのことだった。単純にもったいないよね。

ここがスムーズだったとして、3着まで届いていたかは分からない。ただし、少しずつギアを上げていく中で一度完全にブロックされて減速しては、最後の伸びに影響してしまうのは明らか。

別に俺は自厩舎のジョッキーを乗せることに関して否定する気はないが、昨年の武蔵野Sを勝った後の松若の騎乗がどれも良かったかと思うと疑問。しかも乗り変わった前走の吉原が凄まじい騎乗で2着だった直後だからね。

吉原は制度上呼べないとして、そろそろ手変わりするべきだと思ったね。もう7歳。これから、今日以上のデキでレースに臨めるかは分からない。もう一戦一戦が勝負になるのだから、悔いのないレースをしてもらいたい。自分の馬券関係なくこれは思う。

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6着の黄オーヴェルニュは判断が難しい。道中、そして4コーナーまでは赤テーオーケインズの真後ろという絶好のポジション。

福永がレース後「テーオーの後ろが欲しかった」と言っているように、これは作戦通りだったと思う。実際道中は良かった。

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ところが直線入口では、赤テーオーケインズと黄オーヴェルニュの間にエアスピネルが挟まってしまっている。

これ、オーヴェルニュの反応が鈍いからなんだよな。「勝ち馬の後ろについて行きたかったのですが、勝負どころでタイトになって、ついていけませんでした」と福永が言うように、エアの入り方も厳しかったと思うのだが、もう少し反応が早ければエアを入れずに済んだ可能性はある。

ここでエアに間に挟まれてしまったことで、直線の進路がなくなってしまったんだよな。

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脚はあったものだから、福永は進路を探して3000里、もないか、3000ミリくらい外に旅して、チュウワウィザードの内という、なんら道中と関係ない進路に辿り着いてしまった。当然、ロスは大きい。

オーヴェルニュは裏話にも書いたように、コーナーで自分から見て左側に張る悪癖がある。コーナーを気を付けて回らないといけないから、自分から積極的に締めたりできない。仕方ない6着だったと思う。

高速馬場は得意だけにフェブラリーSが高速馬場なら侮れないのだけど、左回りだと内ラチが近くにあったほうがいい。圧勝した中京・平安Sは5番枠だったように、今後大きなレースでは枠順を選びそうだね。今日のレースを見ていても、前に行ったほうが持ち味は生きそう。

7着メイショウハリオは「外を回ってよく追い上げてきました。ただずっと左手前で走っていました。右手前にどこかで変えられていれば良かったのですが…最後も左にモタれていました」と浜中がコメントしたような内容。

大外にいたのに、モタれて一気に馬場の真ん中あたりまで行ってしまった。これだけモタれてしまったのは、左回りの一周が初めてだった影響、相手強化の影響など様々だろう。

逆に言えば大外を回って、これだけモタれてしまったのに7着まで来た、とも言える。かなり強くなっているんだよね、この馬。本来左回りが駄目とは思えないし、年明けから期待している馬なんだ。重賞、あと2、3は勝てる馬。

10着カジノフォンテンは序盤に書いたように、せっかく外の番手にいたのに引いて、インで溜めに行ったのが痛い。なんのためのデムーロだったのか。揉まれて話にならなかった

東京大賞典は使わないようだし、南関の左回りでジョッキー戻してもう一度出直し。ここ2走で力が通用しないと決めるのは早計。

11着カフェファラオは馬としては大外はいいんだろうが、このコースの大外は厳しすぎる。「4コーナーからは進んでいきませんでした。反応しなかったです。なぜだかは分かりません」とルメールは話しているが、同じく8枠から勝った中京のシリウスSとは相手が違うのだから、伸びないのも妥当なところ。

前走の函館記念もノーカンとすれば、フェブラリーSで普通に巻き返してくる。ただワンターンの左回りGIは日本だとフェブラリーしかないのが辛い

今年の秋にブリーダーズカップの遠征プランもあった馬。春から夏にかけて、来年は海外遠征があるかもしれないね。日本には適鞍がなさ過ぎる。今日は走っていない。


このカフェファラオと、12着ソダシに関しては、個人的に今回は完消し。買う要素がなかった。

ソダシに関してはまず最内という時点で消そうと思ったが、芝スタートのワンターンからダートを試してほしかったのが正直なところ。来年フェブラリーだと古馬の牡馬と斤量差が縮まるから使いたくなる気持ちは分かるんだけど、中京ダート1800の力勝負に対応できる感じがなかった。

肝心のダート適性だが、ダート適性自体はあるね。ない馬はそもそもあれだけスムーズにハナに行けない。ただ追い出された後、直線でフォームがおかしくなっている。重心が上に行って、脚が空回りしている

つまり体を上手く使えていない。調教ではダートの走りが良くても、調教と実戦では走る距離と、タイムも違う。追われてからフォームがバラバラになったあたり、ずっと芝を使ったことで、走り方が芝向きになっている感じはある。と予想にも書いた。

芝スタートのワンターンだったらもっと前半からスピードに乗せていけるだけに、話は違った可能性はある。なら次、フェブラリーSを使ってきたら買いたいかというと、今回の結果を見る限り購入意欲は減退した。

単純にダートが合わなかったらもっと早く垂れている。4コーナーでの手応えなどを見る限り、自分から競馬をやめている素振りがあるんだよね。

前走のゲートの大暴れといい、今回の失速といい、馬が『競馬は辛いもの』だと頭で覚えてしまって、セーブしてしまっている感じがあるんだよね。こうなると牝馬は難しい。

それこそソダシの得意舞台を使ったとしても状況は変わらない可能性が高い。だって『競馬は辛いもの』と頭で覚えてしまっているのだから。中山記念あたりから始動になると見ているのだが、舞台は合うと思う。今のお気持ちをまず一度リセットしないと、今後の上がり目はないかもしれないね。

賢い馬なのだと思うよ。競馬と調教の違いを分かっているのだから。だからこそ厄介。いい意味で、いかに馬をだませるか、いかに馬に自分を追い込ませられるか、難しい課題に直面していると思う。


さて、今日のラストは、当然ここまで書いていないテーオーケインズだ。いくら序盤がスローだったとはいえ、上がり3Fは35.5。メンバー中ダントツの1位だった。

しかも、この馬モタれながらこのタイムを出している

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これは直線。赤テーオーケインズが、残り200m手前から内にモタれて、内に内に寄っているのが分かる。

おかげで黒インティは前にテーオーが入る形になってしまった。砂を被ると進みが悪くなるから、武さんはテーオーの外に切り返す形になったんだ。

アナザートゥルースとインティの差が差だけに、この切り返しがなければ…とも思ってしまう。まー、仕方ないね。割り切ろう。これはテーオーケインズがモタれているという話だ。

4コーナーも、直線入口も、なんだか動作が怪しい。その状況でダート1800mで上がり3F35.5。ただただ強い。課題がある中でこの走りだから、今後更に伸びる可能性はある。

もちろんモタれてラチを頼りにいく今の課題を解決しての話だが、サウジアラビア、ドバイに行ってみてもいいかもしれないね。こんな馬でも出遅れがあったとはいえJBCクラシックであっさり負けるのだから競馬は面白い。


Twitterにも書いたのだが、テーオーケインズは昨年の夏、村山厩舎で発生した火事に遭遇している。結果5頭が亡くなった惨事だが、多くのスタッフさんの尽力で、他の在厩馬たちは命が救われた。

高柳厩舎は村山厩舎の隣。中尾厩舎同様、厩舎の一部が焼けた。その影響でテーオーケインズも当週の新潟競馬を取り消している。もう少し火の勢いが強ければ、テーオーケインズ自体この世にいなかった可能性がある

そもそも前週のレパードSで除外にならず、無事使えていれば厩舎にいることもなかったはず。たぶん短期放牧に出ていたのではないかな。

別に俺は、亡くなった村山厩舎の馬たちの分も頑張ってくれとか、そういう話はしない。ケインズの走りに一切関係のない話だからね。

ただ、そういうちょっとしたボタンの掛け違いで、もしかすると今、チャンピオンズカップ優勝馬テーオーケインズは存在しなかった可能性がある、ということは頭に入れておきたい。

火事に限らず、競走馬にアクシデントは付き物。ひとつ間違えれば目の前にいない、なんてことはよくある。

今、自分の目の前にある光景が当たり前ではないこと、偶然の積み重なりによって成り立っていることを覚えておきたいものだよ。それもまた、競馬のの面白いところなんだけどね。


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