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高松宮記念を振り返る~1年前のミスを踏まえた『考えない騎乗』~

昨年は申し訳ない結果に終わったので、無事にいい結果を得られたことが何よりです

高松宮記念をダノンスマッシュで勝った後、勝利ジョッキーインタビューで騎乗した川田将雅の発した言葉だ。

彼の言う『昨年』とは、昨年の高松宮記念のことを指す

川田というジョッキーは日本でもかなりの欧州寄りのジョッキーと言っていい。追い方というより、考え方が非常に欧州寄りなのだ。以前欧州遠征をしてから明らかに意識が変わった。

よくジョッキーが注目されるのは直線の動き。英国の名手・ムーアなんかがそうで、激しいアクションはいかにも馬が動いているように見えるし、実際馬は動いている。

しかしよく見るとムーアは4コーナーでほぼほぼ勝負圏内にいるんだよな。4コーナー後方のまま回ってくるほうが珍しいくらいだ。これは欧州競馬の特性による

欧州競馬は郊外に柵を立てた競馬場が多く風が強い。馬群は固まり、スローになりやすい。後方一気よりは4コーナーで好位にいたほうが圧倒的に勝てる。欧州の上手いジョッキーは4コーナーで内目の好位につけられるよう序盤から激しくポジションを奪い合う

川田は欧州遠征を経てこの点に気づいたのだろうね。スタートで多少遅れても好位を確保しにいって4コーナーを迎える。その姿勢はポジショニングの鬼と言ってもよく、ムーアら欧州トップジョッキーの動きに共通するものを感じるよ。

ただそれがどのレースでも成功するわけではない。競馬なんて馬場や天候、ペースなどで結果は大きく変わるわけで、『絶対この乗り方が嵌まる』なんていうことはない。ポジショニングの鬼である川田でも当然ミスすることはある

それが昨年の高松宮記念だったのだ。

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これは昨年の高松宮記念。白ダノンスマッシュがスタート後バランスを崩し、鼻づらが地面に付くのではないか?と思うくらいの状態になっている

まー、ダノンスマッシュは大してゲートが上手くないから、たまにこういうことはある。よく落馬しなかったなと改めて思うよ。問題はこの後。

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ゲートで失敗しても、いつものように出していって好位に取りつこうとしていた白ダノンスマッシュなのだが、周りを囲まれてしまって内に行くか、外に行くかで迷ってしまった

川田はかなり馬場を読む。過去のマスクの振り返りを見てくれれば分かるが、馬場の色が変わる部分のほぼ真上を通して、ギリギリのラインを攻めてくるんだ。

昨年の高松宮記念デーの中京は重馬場。その2つ前の大寒桜賞で外差し競馬だったように、川田の意識は若干外を向いていたのだと思う。結局3コーナーで内、外で進路を迷った結果、外を選ぶことになった。

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そうしたところ、外を走っていたナックビーナスに締められてしまったんだよな

この画像を見ると、外のナックに締められバランスを崩している白ダノンスマッシュが映っている。

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スタートで躓いただけでなく、4コーナー前でも外から締められバランスを崩し、直線入口では囲まれてしまったことで、白ダノンスマッシュは完全にリズムを崩してしまった

結果は10着。あくまで結果論だし昨年の高松宮記念は話の導入に過ぎないから細かく言及はしないが、川田としては『完全なる失敗騎乗』だったと思う。

レース後のコメントはわずか1行。「結果を出せず、申し訳ありません

俺も仕事でコメントを取っているからよく分かる。川田はコメントを多く出すジョッキーではないが、通常時はもう少ししゃべる。馬を褒めるか、馬の課題を1つくらい言うタイプのジョッキーだ。そんな彼がわずか一言しかしゃべらなかったあたり、昨年の高松宮記念は、本人の中で相当納得のいかない騎乗だったと推測される


さて、話を今年の高松宮記念に移そう。

●21年高松宮記念出走馬
紫 レッドアンシェル
黒 ライトオンキュー
茶 モズスーパーフレア
赤 ダノンファンタジー
黄 インディチャンプ
水 ラウダシオン
薄緑 カツジ(ヨネジ)
緑 セイウンコウセイ
灰 トゥラヴェスーラ
橙 ダノンスマッシュ
桃 レシステンシア

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昨年のリベンジを誓う川田は明らかに慎重にゲートを出していた。相変わらず駐立の怖い馬で、開いた瞬間脚がハの字に開いているが、よくゲートを出したと思う。

ここで出遅れなかったことがまず今回の大きなポイントとなった

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ゲートを出た後、昨年は好位を自ら取りに行った。ところが今年は桃レシステンシアが外から内に切り込んでいくのを待っている。今年は前年とは違い、出たなりの位置で脚を溜める作戦を選択したのだ。

これに関して川田はレース後のインタビューで、「あえて、何も考えず、馬の走りたいように走ってこようと選択した」と発言している。

これは面白いなとマスクは思ったよ。前述したように川田はポジショニングの鬼。自分から好位を取りに行き、「馬よ俺についてこい」スタイルだ。

そんな彼が、GIという大舞台で「あえて、何も考えず、馬の走りたいように走ってこよう」と言ったんだぞ。らしくないと思うじゃないか。今回は昨年と違い、ダノンスマッシュのリズムを守ることを徹底した作戦だったと考えられる

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ダノンが控えたことで、桃レシステンシアはその前に入ることになった。デキは抜群、パドックでもいかにも最高の仕上がりを誇示していた2歳女王にとって、誤算だったのは緑セイウンコウセイのポジショニングだったと思う。

誤算というと語弊があるか。枠の並びがちょっと良くなかった。楽に外を先行できればベストなんだが、セイウンコウセイが内から出て行ったことで、セイウンの更に外を回るか、セイウンの前に付かなければ距離をロスして外を回されることになる。

確かに馬場は外伸びだった。本日それまでのレースを見ても9Rの大寒桜賞も外差し決着だったし、外を回ることのロスが通常よりは少ない馬場だった。それにしても短距離において外外を回されるのは避けたい

セイウンとレシステンシアの枠が逆だったら、この位置関係は逆になっていただろうし、レシステンシアは欲しかったポジションをセイウンに取られてしまったと考えていいと思う。着差が着差だけに、レシステンシアとしては痛かったと思う。結果的に並びが良くなかった。

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並びが良くなかったと言えば、内枠、黒ライトオンキューだった。こちらもパドックを見る限りデキは絶好。調教などの動きから、たぶん今日が生涯最高のデキだったんじゃないかな。

昨年のこの時期はドバイ・アルクオーツスプリントに挑戦を予定し出国したら、まさかの開催中止。何もせず日本に戻ってきてしまった。充実期に入りつつあっただけに、その中で7カ月も棒に振ってしまったのは痛いどころの話ではない。

今年でライトオンキューも6歳。脚の関係で仕上げきれてないこともあった馬。6歳をラストチャンスと位置付けたか、陣営も心を込めた、魂の仕上がりを施したのだと思うよ。

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デキが良くなり過ぎると、馬は体がいつもより動くようになるから掛かりやすくなる。ノリさんも相当ソロっとソフトに乗っていたが、紫レッドアンシェル、赤ダノンファンタジーに軽く挟まれた瞬間、頭が上がって掛かってしまった

実にもったいないシーンだったが、競馬が複数頭数で行われている以上、避けては通れぬ道ではある。

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黒ライトオンキューが挟まれて下がってきた時、困ったのはその後ろにいた黄インディチャンプだった。

騎乗した福永も相当馬場を読むタイプなのは、過去の回顧シリーズで触れている。2つ前の大寒桜賞で騎乗したアナレンマを外に持ち出しているあたり、中京は内がギリギリ、外の方が伸びると判断していたはず

インディチャンプは9番枠。ちょうど真ん中の枠を引いた。内過ぎない分外に出しやすいから、どこかで外に出してやろうという狙いだったのだと思う。

スタートから3コーナー手前まで、たぶん福永の想像以上にいい感じにレースは運んでいたと思うよ。それまでの画像を見ても、インディチャンプ福永の両サイドからマークしてくるような馬はいない。プレッシャーをかけられない位置で、あとは上手く外に出せれば、という感覚だったと思う。

問題は右斜め前にいたのが黄緑カツジ、租界名ヨネジであったこと。カツジが上がっていくか、下がっていくかしないと、それこそインディチャンプが自分から位置を下げて、カツジの後ろを回すしか外に出す方策がない

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3コーナーのワンシーンだが、ここで興味深いやり取りがあった。

黄インディチャンプは2パターン選択肢がある。内をそのまま走るか、外に出すか。内が良くなくなっているのは、ジョッキーの中で最も馬場を読む福永だったら分かっていたはず。本心では外に出したかっただろう

そうなると黄緑カツジの後ろを通っていくしかないんだが、そのインディチャンプの外出しルートを、橙ダノンスマッシュが遮っているのが分かるだろうか。

本当に細かい進路の話だからよく見ないと掴めない部分なのだが、川田はインディチャンプの動きを見てたし、仮に内の馬がインディでなかったとしても、カツジとの距離を詰めてコースを塞いでいたと思う。ポジショニングの鬼だからね。

これが、インディチャンプの右前がカツジではなくレシステンシアとかだったら話は違ったと思うんだよ。もちろん競馬である以上出走全馬にチャンスはあるが、客観的に見て、直線でカツジが馬群を割って伸びて好勝負になるだろうか。

カツジの強弱というより、確率論、前がレシステンシアとかそのレベルの人気馬のほうが前を割ってくれる可能性は高いし、その後ろに進路ができる。

しかしこの時インディ福永の前にいたのはカツジ、そして鞍上は中井。一瞬のミスが命取りになる短距離戦において、カツジの後ろはリスクが高過ぎる

馬場が悪い内で前が開くのを待つか、それか開くのか分からないカツジの後ろに入っていくか、福永は迷ったと思うな。結果、馬場の荒れてきた内で待機作戦を取った。これが最後影響したと見る。

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一方、外を見ると桃レシステンシアが困っていた。緑セイウンコウセイも客観的に見て、自力で動いて前を捉えに行くとは考えづらい。もしかしたら自力で動いてくれるかもしれないが、動けない可能性のほうが高い。

レシステンシア浜中は困ったと思う。雨で馬場が重たくなっている以上、自分から外を動いていってしまうと、最後の直線の坂、そしてその後の長い直線で脚が上がる可能性がある。

まして浜中は今回がテン乗りだ。北村友一や武さんといったこれまで騎乗したジョッキーが騎乗していれば、『レシステンシアはどのくらい脚を使うか』が分かる。初めて騎乗した浜中はそれが分からない。

もちろん癖は武さんなり、北村友一なりから聞いていただろうし、厩舎スタッフさんたちからも話は聞いていたと思う。しかし『どのくらい長く脚を使えるか』は乗ってみないと分からない。当たり前だ。

レシステンシアにとって不幸だったのは、『外過ぎてセイウンコウセイが自身より内枠にいたこと』『武さんがアクシデントに遭ってテン乗りになってしまったこと』だったのではないかな。まー、競馬ってそういう1つ1つの細かい要素の積み重なりだからね。こういうことを言い出すとキリがなかったりする。

ただ少なくとも、セイウンコウセイとレシステンシアの枠が逆だったら、セイウンコウセイのポジションにはレシステンシアがいたと思う。ゴールした瞬間のレシステンシアとダノンスマッシュの差はクビ。枠順の妙が生み出したポジションの差が、最後に響いた感は否めない

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しかも水色ラウダシオンのデムーロが、馬場を考慮してちょっと内を開けてるんだよね。ぴったりとダノンファンタジーを締めていないだろう。その分、緑セイウンコウセイが更に外を回されてしまっている。

ラウダシオンがもっと内を締めていれば、セイウンコウセイはもう1頭分は内を回っていただろうし、更に外にいた桃レシステンシアはもう1頭分内を回っていたかもしれない。タラレバだが、複数の要素が絡み合ったポジション取りだったと思うよ。

ここでその後ろに目を移すと、橙ダノンスマッシュのその後ろに、ぴたりと灰色トゥラヴェスーラがくっついているんだよ。これ、過去の画像をさかのぼると分かるんだが、向正面からずっと、トゥラヴェスーラはダノンスマッシュの半馬身後ろにいる。いつでもダノンが開けた進路に、一緒にくっついていける態勢なんだよね。

騎乗していた(鮫島)克駿は、枠順抽選で隣がダノンスマッシュになった時点で最初からダノンをある程度視界に入れて競馬するプランだったのではないかな。結果その作戦は大当たりだった。後述する。

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直線。橙ダノンスマッシュの前には、緑セイウンコウセイと桃レシステンシアがいる。形としてはダノンスマッシュの前に進路はないから、外に出していくことになるだろうか。

しかしここでもダノンスマッシュの川田は冷静だった。前をよく見ているなと唸った部分だよ。

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これは直線入口なんだけど、緑セイウンコウセイの幸が右手にムチを持っていることが分かる。そのまま右からムチを叩けば、セイウンコウセイは逆、自身から見て左手のほうに動いていく。

橙ダノンスマッシュの川田はそれを見たか、一度はセイウンコウセイと水色ラウダシオンのスペースを突きかけながら、それを取りやめてセイウンコウセイの外に動いているんだ。パトロールを見ると分かる。

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実際緑セイウンコウセイは幸が右ムチを叩いた直後、内の水色ラウダシオン側に動いていった。そうして桃レシステンシアとの間に生まれたスペースに、橙ダノンスマッシュ川田が突っ込んでいった。

ほんの一瞬、コンマ一秒の世界だが、その瞬間も前のジョッキーのムチの持ち手をしっかり見ている、川田の冷静さに驚くよ。

もちろんダノンスマッシュが強く、脚があるからこそできる進路取りだが、最後レシステンシアとの差はクビ差。この進路判断が勝利に直結したのではないかな。

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橙ダノンスマッシュが進路を開けてくれたことで、その後ろで脚を溜めていた灰色トゥラヴェスーラも自動的に進路が開く。

この戦法のメリットは進路が自動で開くこと。デメリットは、ついていく馬が自分より強い場合、その馬に先着できないこと。要は勝ちに行く騎乗ではない。どちらかというと一つでも上の着順を取る、決め打ち作戦だ。だってダノンが進路開けられなかったらトゥラヴェスーラも詰まるからね。

マスクはその作戦が悪いとは思わない。人気薄に騎乗した時、人気馬の後ろについていくっていうのは常套手段だからね。トゥラヴェスーラの4着はダノンスマッシュに連れてきてもらった4着と言っていい

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茶モズスーパーフレアが最後まで粘って5着に粘り込んでいるんだけど、外伸び馬場で粘ったからいい内容というより、外の人気薄たちが差し込めなかった分残れたという感覚はある。

それまでのレースを見ていても、雨の影響で『内はギリギリ走れる、もっと走れるのは外』という状況だったと見ていいはずで、同じく内を通った黄インディチャンプも、無事外に出せていたらもっと走れていたと思う。1頭だけ内から差してきたインディチャンプ、ダノンスマッシュに連れてきてもらったトゥラヴェスーラでは明確に差がある

だからこそ、改めてインディチャンプは実力があるなと思ったよ。3複は3着インディチャンプだろうが3着トゥラヴェスーラだろうが当たったんだが、インディ3だと22倍、トゥラヴェスーラ3なら355倍。圧倒的にトゥラヴェスーラ3のほうがいい。

それでも前述のように、通った馬場の差、展開面を考慮するとインディとトゥラヴェスーラに明確な差があったから、この3、4着の着順の逆転を望むのは少々無理があると思う。仕方ない。

2着レシステンシアはインディチャンプに比べ馬場の恩恵があったとはいえ、セイウンコウセイの更に外を回されてしまったことは事実。諸々考慮するとかなり頑張っている。

パドックでは素晴らしいデキだった。走ろうとする気持ちが漲っており、1歩1歩の歩様の柔らかみ、歩き方、全てが良かった。今日のレシステンシアはたぶん状態面だけで言えばMAX。いいパドックを見せてくれたことに感謝したいくらいだよ。

5着モズスーパーフレアは、レシステンシアに比べたら全然見栄えがしなかった。お腹も子持ちシシャモのように膨れており、正直もっと絞れると思う。本来あと4~6kg少ない体重でいいと思う

昨年高松宮記念を勝って以降500kg以上の出走が増えたあたり、年齢を重ねて簡単に絞れなくなったのではないかな。牝馬あるあるとも言える。まだ力はあるものの、全盛期ほどかというと、やや力に陰りが見えるな。

デキの良さという意味ではライトオンキューも素晴らしかった。前述したように生涯最高のデキに見えたし、攻めに攻めた結果、張り詰めた糸のような状態まで上がっていたと思う。

難しいよな、完璧に仕上げるって。レースから逆算して当日MAXになるように作らないといけない。こちらのプラン通り馬は状態を上げてくれない。その点まで踏まえると陣営は完璧な仕事をしたと思う。

掛かって、加えて鼻出血という発表が出た。タラレバは禁物だが、もっと外枠だったらどうなっていたか…。結果的に内枠がアダとなったと思う。土曜の馬場は内も伸びていただけに、雨で馬場が変わってしまったのが痛い。しかもライトオンキューの場合、馬場が降雨で重くなっても大丈夫というジレンマを抱えていた

競馬は難しいよな。MAXで作っても、他の一つの要素で結果が変わる。繊細だし、運要素も強い。運を味方につけるだけでなく、運のほうから味方になってくれないといけない部分がある

勝ったダノンスマッシュは外枠を引けたのが良かった。しかも後入れ偶数。ゲートの駐立の悪い馬としては、昨年の高松宮記念のような内枠より、後入れ、外枠偶数のほうが都合はいい。

加えて雨で外伸びが加速した。土曜よりダノンスマッシュに追い風が吹いた馬場だったと思う

では馬場の恩恵があったから勝てたのかというと、まったくそう思わない。それこそダノンスマッシュという馬は3歳時代、短距離の先行馬だった。

気性面が成長するにつれて溜めが利くようになり、逃げて自分でペースを落とした京王杯スプリングCのような競馬もできるようになった。身体面だけでなく、精神面の成長が影響した部分は大きい

そもそも前に行って粘る形から、再度溜める形に戻したのが19年キーンランドカップだったと思う。川田がダノンスマッシュにテン乗りだったレースだ。レースに対するアプローチの面から変えていった、転換点だったと思う

コンビを組んで初めて臨んだのが昨年の高松宮記念。師匠である安田隆行師が管理する馬ということもあって、川田は勝ちに行った。言い方を変えると、『自分の型にダノンスマッシュを嵌める形の競馬をした』とも言える。そして失敗してしまった。

今年、ダノンスマッシュと再度コンビを組んで高松宮記念に臨んだ川田は、自分の形に嵌めるのではなく、「あえて、何も考えず、馬の走りたいように走ってくる」という『馬任せ』な乗り方をチョイスした。

それは普段から自分の、欧州的な形に持ち込みやすい川田からすると真逆のベクトルを行く騎乗だが、今回の騎乗は昨年の高松宮記念から学び、そして香港スプリントのムーアの騎乗から学んだ、川田なりの『答え』だったのだと思う。

デビュー当時の師である安田隆行師への恩を今も語る彼は、人一倍師への思いが強い。ダノンザキッドでホープフルSを勝った際に涙したのもその表れだが、ホープフルで師とのタッグでGIを勝ったからこそ、今回『制約のない競馬』を成し遂げることができたのではないか、そう思えたレースだったよ。

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