見出し画像

【この作品いいよね!】 マンガ「左ききのエレン」のすすめ

「左ききのエレン」を読んだからnoteを書いている
1年と少し前、本屋の少年マンガの試し読みコーナーで、「左ききのエレン」(ジャンプコミックス版)を手にとった。読み進めると、「左ききのエレン」がただの少年マンガでないことに気がついた。

https://www.amazon.co.jp/左ききのエレン-1-ジャンプコミックス-nifuni/dp/4088812980

まず、主人公がだいぶ大人である(時間軸が過去に戻って高校・大学時代が描かれることもあるが)。ページをめくると、目に飛び込んできた「朝倉光一(26)」という文字。「ジャンプマンガの主人公なのに俺より年上じゃん!」と思った読者も多いのではないだろうか(俺もその一人です)。

マンガや小説を読む際、登場人物が読者より年下すぎると感情移入がしづらくなる、という話を耳にしたことがあった。確かに社会人数年目の俺にとって、学生が主人公の物語は、どこか遠いものと感じやすくなっていたかもしれない(もちろん好きな学園モノもあるが)。けれども「左ききのエレン」では、主人公「光一」と俺の立場は似通っていた。大卒後に働き始めて数年目という点だけではなく、うだつが上がらないところも似ていた。決して仕事の出来が良くはないところ、自分中心に見てしまいがちな視点…。
そして、ストーリーが進む中、登場人物たちが仕事や才能に向き合いながら発する言葉・抱く思いは、凄まじく真剣でありかつ、圧倒的な熱量を伴う。仕事を舞台としているため、ジャンプの王道マンガと読み味は異なるが、熱さは全く引けを取らない。
「左ききのエレン」はまさに社会人が読むのにピッタリの少年マンガだ。

その後、ジャンプコミックス版はリメイクであり、原作がcakes(noteの姉妹アプリ)に掲載されていることを知った。これをきっかけに俺はcakesやnoteのコンテンツを読むようになった。「左ききのエレン」を知らなかったら、noteに投稿することもなかったかもしれない。

ストーリーの概要

天才になれなかったすべての人へーー。
朝倉光一は、大手広告代理店に勤める駆け出しのデザイナー。いつか有名になることを夢みてがむしゃらに働く毎日だったが……。
「フェイスブックポリス」で一躍話題になり、「cakesクリエイターコンテスト」で特賞を受賞した、かっぴーさん初の長編マンガ、堂々連載開始!

画像2

「オレは、オレの事ばっかりだ」左ききのエレン|第1話 | 左ききのエレン | かっぴー | cakes(ケイクス)天才になれなかったすべての人へーー。 朝倉光一は、大手広告代理店に勤める駆け出しのデザイcakes.mu

出所:左ききのエレン かっぴー

※現在「左ききのエレン」第二部が連載中です
※以下、ネタバレを含みます。この記事をここまで読んで、ネタバレをされたくないと思った方は、いったん「左ききのエレン」を読んで頂いて、その後にこの記事の残りを読んで頂けたら嬉しいです。

才能を描くマンガ 主人公は凡才

「左ききのエレン」では、広告・デザイン・アートに携わる人物の生き様(仕事の様)を描いている。特に、主人公の光一が感情移入しやすくて好きだ。他の登場人物と比べて、光一は「凡才」である。エレンやあかり、威風、柳さん、神谷さんなどの天才はいうまでもなく、みっちゃんやさゆりなど秀才ポジションにいる人物にも、光一の能力は及ばないだろう(特に26歳くらいまでは)。

しかし、そんな凡才の光一が本作の主人公である。光一は天才と関わり、その実力を目の当たりにする。光一はあかりと交際し、神谷さんとともに働き、柳さんのもとでは苦しみながらも力をつけていった。何より、エレンに「描くこと」を促した。高校卒業後エレンは光一と話すことはほとんどなかったが、エレンの創作を支えるモチベーションの一つが、光一の言葉であったのだろう。

そんな凡才「光一」もエリートである

光一は天才たちと関わるなかで、劣等感にさいなまれる。しかし、ここで強調したいのは、作中で凡人として描かれている光一も、日本全体でみればごく少数のエリートであるということだ。光一は美大に現役合格し、在学中にファッションショーを行う団体の代表を務め、その後大手広告代理店のデザイナーとして働いている。光一は努力を重ね、熾烈な就活戦争を勝ち抜き、デザイナーの激務を全うしているのだ。デザイナーになるという夢を叶えているのである。

けれども、光一は有名なデザイナーである「何者」かにはなれなかった。能力を身に付けた結果、取り換えのきく有能にはなれたが、オンリーワンにはなれなかった。優秀なサラリーマンにはなれたかもしれないが、それは代替可能な存在であった。

天才を間近で見て言葉を交わしてきた光一にとって、天才になれなかったことは、苦悩でしかなかっただろう。

そんな苦悩をかかえながらも、これまでがんばってきた光一に対して、エレンは「何でも無いお前を誇れよ」という言葉を贈る。俺がこのマンガで一番好きなシーンだ。

俺は光一ほどがんばったか

もし俺が「光一ほど努力をしたのか?」と誰かに尋ねられたら、首を横に振るだろう。

小学生のころに好きな小説があった。俺は作家になりたいと思った。読みたいこと、思ったこと、読者の心を動かすことを書きたかった。ストーリーを紡ぎたかった。小説を書きたかった。しかし、綴った小説はごく短いものでしかなかった。ほかには日記と随想のようなものしか書けなかった。それでも何かを書きたかった。表現したかった。けれども、何かを言い訳にして、書くことを先延ばししているうちに、ちゃんとした小説どころか、仕事以外では文章を書くことすら少なくなった。

今でも小説やマンガを読む(最近はマンガが多いが)。読んで好きになった作品がある。その作品のどこが面白かったのか、どう感じたのか、何を思ったのか、そういったことを伝えたいと思った。だからこの記事を書いている。

「左ききのエレン」は、俺に「書けよ!」と伝えたのだ。これからも作品の感想やレビューを執筆し、いずれは小説を投稿しようと思う。
書いて、書いて、書き続けよう。文章を書くことは、俺にとって「いつか思い出して誇れること」だから。それが小説であれば、なおさら誇れる。たとえ文章が脚光を浴びなくても、書きたいことを書くこと自体が俺の夢だったのだから。

がんばりたいことがあったすべての人へ

「左ききのエレン」を読めば、あなたは以前の夢(やりたかったこと)を思い出すかもしれない。そして、その夢に少しでも未練があるのなら、夢に向かって歩むきっかけになれば幸いである。がんばった後に諦められるその日まで。

※かっぴーさんのトークイベントレポートのnoteも書いています!お時間あれば、ご覧いただけると嬉しいです!


この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?