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「箱根ガラスの森美術館」と「ヒメゴト」の輝き

週末の休みに、サラリーマン三年目のミズノは箱根を訪れた。彼は、友人と6人で箱根旅行に来ていた。
新宿から乗車したロマンスカーを箱根湯本駅で降りた後、昼食に湯葉丼とり、お土産屋を散策した。
その後、曲がりくねった山道をレンタカーで走行し、ガラスの森美術館に向かった。 

午後の日を浴びて、ガラスの森美術館は綺麗な光を放っていた。ガラスの粒は光を反射し、赤、青、緑と様々な色を帯びた。

 美術館を散策するうちに、六人は三手に別れていた。まず、演奏会を聴きたいと思った友人が、もう一人と連れ立って会場に移動した。次に、四人のうちの二人が小さな雑貨屋に足を運び、ウィンドウショッピングに興じ始めた。 

手持無沙汰になったミズノは、残った一人と広場にあるベンチに腰を下ろした。目に映ったガラスの森美術館は、冷たい空気の中で相変わらず輝いていた。 

【この作品いいよね!】 マンガ「ヒメゴト~十九歳の制服~」のすすめ 

「あんなに苦しくて輝いていた夏は、二度とこないだろう」というフレーズが登場するマンガがある。「ヒメゴト~十九歳の制服~」の最終巻にて、主人公の由樹はその想いを抱く。

 ストーリーの概要 

周囲から男っぽく見られている女子大生・由樹(ユキ)。彼女は誰にも言えない秘密の儀式を行っていた――。燻り続ける己の欲望に苦悩する日々を送る由樹。一方、同じ大学に通う佳人(カイト)と未果子(ミカコ)の2人も他人には明かせぬ「秘密」を抱えていて――。「ヒメゴト」を持つ3人の19歳が繰り広げる「ヨクボウ」と「セイフク」の物語――。 

出所:アマゾン ウェブサイト

※以下、ネタバレを含みます。この記事をここまで読んで、ネタバレをされたくないと思った方は、いったん「ヒメゴト~十九歳の制服~」を読んで頂いて、その後にこの記事の残りを読んで頂けたら嬉しいです。

 誰にでも秘密はあるし、ばれることもある 

由樹、佳人、未果子の三人の視点で物語は進む。三者はそれぞれ秘密を抱えている。そして、それらの秘密は、だんだんと他者に知られていってしまう。ただし、他者に明らかになるタイミングには時間差がある。たとえば、未果子が売春しているという秘密は、中盤で佳人が偶然目撃することで、佳人と共有される。しかし、由樹には終盤に佳人経由でその秘密が伝えられる。

 秘密が交錯したストーリーとなっており、「心の理論」が存分に用いられている。 

※心の理論については下記で詳細をご覧ください。 

スロースターターの恋愛はうまくいくか

 由樹は大学一年生にしてようやく、女性らしくなること(服装や化粧など)を学ぶ。その結果、終盤でカイトと結ばれる。 

一方で、もし男性が男性として目覚める(例:女性と恋愛・交際したいことを自覚する)のが遅ければ、その後彼の恋愛はうまくいくのだろうか?
好意を寄せる女性へのアプローチ方法やデートにうまく誘う手段、異性からの好感度が高い服装や髪形の整え方、話すべき恋バナのストック……。そういったものを一朝一夕で身につけることは難しい。恋愛に挑み、失敗も含めて経験していくことで、なんとか積み上げていくのではないか。そのような男性が、由樹と同様のハッピーエンドな展開を迎えるには時間がかかりそうである。 

灯りがともり始めたガラスの森美術館

日が傾き始め、オレンジ色の光を浴びたガラスの粒が一際輝く。ミズノはベンチに座って友人と話していると、演奏会を聴き終えた二人が戻って来る姿が見えた。雑貨屋から戻り、こちらに向かう二人の姿も目に入った。友人たちと合流するため、ミズノはベンチから立ち上がった。

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