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墨汁のような色の 小さなクロデメキンは 水槽の中で 動き回り 躍動する その姿を 上から…
例えば モロッコの水売りのことを 知りたいと思ったら 指一本で 様々な情報が 目の前に…
暑さの中 シジミチョウが 庭で 舞っている シジミチョウが こんな風に 踊り狂うように …
何処かの 庭園に トケイソウの 花が 次々に 咲いて 時計が 生まれ 光る 妖しい か…
昔住んでいた町には 金魚屋さんの 大きな金魚池が 水田のように 幾つも 広がっていた 池…
近所の 横断歩道は 赤信号が 長くて 退屈だから 傍らの 植え込みで動く テントウ虫を …
シュロは 一見 地味な木だ 同族のヤシのような 南国のアイコンにもなれず ソテツのような どっしりした存在感もない シュロは ホウキや縄になる木というイメージかもしれない でも シュロの葉とアマガエルは アジサイとカタツムリよりも相性が良いし 雨が降ると閉じ晴れれば開くシュロの葉は 表情豊かだ それに シュロが自生する森は どこか謎めいて見える それから シュロは 枯れても倒れても 絵になる木だ 高所から手招きする 枯れたシュロの葉は妖しく 横たわる幹は 昔の立ち姿を呼び
押入れを開けると 古い振り子時計が 仰向けに寝ている 仰向けの姿にも どこか 威厳があっ…
もう 十二月なのに 踏切の近くに アサガオが咲いている 夏に見た時より小さな アサガオの…
アサガオは バンザイするように あどけない姿で 地上に 現れ それから 頼るものに沿うて…
ある日 皿を洗いながら 窓の外を見ると 生まれて間もない ちいさなカマキリが 塀の上で 春の…
幼い日 迷い込んだ 近所の空き地には シダが群生し 所々に 十薬の花が咲き シュロの幹が…
アラベスクの流麗に見とれて 冷たい彩色タイルに凭れると 微熱がひいて 中に吸い込まれてい…
昔の通学路に 並行する裏通りは アーケードのある 古い商店街だった 一度 その中の店で 925が疑わしいような 銀の指輪を 買ったような気もするけれど もう その記憶も物も 何処かに埋もれてしまった あの裏通りも 区画整理されて 今は 跡形もない あの頃 暗くて狭くて寂れているから 裏通りを避けていたのに 今になって その暗い雰囲気が 何より良かった気がして 裏通りの思い出が ほとんど無いことが 悔やまれてならない かつて存在して 今はないものは 何故こんなにも 愛お