日本コーヒー文化学会 第30回年次集会をオンラインで視聴して

 日本コーヒー文化学会は生豆輸入業者から焙煎業者、喫茶・カフェ経営者、研究者、コーヒー愛好家、学生など多彩な会員からなる団体である。
 学士会館で開催された30周年記念年次集会ではコーヒーブレイクの後、「みんなで考える日本コーヒー文化学会の未来」をテーマに座談会が行われた。
 会長をはじめ6名の分科会委員長が登壇、司会は常任理事の小山氏であった。以下、簡単な感想、というよりも気になったキーワードを挙げたい。

珈琲の品質低下と消費拡大による輸入価格の高騰

 コーヒーの消費量が生産量を上回るようになり価格が上昇している。生豆の輸入価格は2倍、モノによっては5倍上昇、病害に強いロブスタの生産量は拡大している。
 昔、美味しかった品種が、新たな品種に置き換わってきている。
 消費が伸びる一方で、若年層はコーヒーを飲まない傾向がある。
 生産者への負担が強まっている。植え替えをするにせよ収穫には3年待たねばならない。肥料価格も上昇している。離農する人も出ていて、ペイバックできる仕組みが必要である。
 市場に任せると悪豆が拡がり、良い豆が減少するだろう。

環境の変化への対応

 SDGs、2050年問題から環境が重要になるので、環境問題関係者との連携が必要だ。
 ブラジルが霜害を受けた時も生産エリアが変化し、危機を乗り越えてきた。
 温暖化で北海道でおいしいコメが採れるようになってきた。将来はコーヒー栽培も可能になるかもしれない。

珈琲は嗜好品 「おいしい」「良い・悪い」の評価はむずかしい

 「おいしさ」もそれを評価する感性も社会的価値観で変化する。簡単に「おいしい」を判断すべきではない。知的に解釈することが重要である。
 品種にこだわらず、あるものを飲めばいい。環境の変化があって風味が落ちてもブレンドという知恵がある。
 近年、話題の「健康」の観点からコーヒーが語られることがあるが、コーヒーは嗜好品、健康のために飲むものではない。一人モノの飲み物ではない。大勢が集まって楽しむもの。
 我々にできることは限られているので、悪いほうに加担しないことが大切ではないか。

学会の今後

 今後、学会もサイバー空間で行われるようになるかもしれない。
 この学会には論争がない。学会によっては活発な論争が行われている。

感想

 文系と理系で分けるなら、本学会は学会名にあるように文科系。
 理系の学会に参加した経験のある筆者にとって、学会のメインは日頃の研究の成果を発表する場、もちろん、講演会や座談会はあるが。
 一般に理系の学会誌に載る論文は査読を受ける。査読のない論文の評価は低い。また、投稿規定が定められ、総説、短報、意見など論文の種類と長さが定められている。学会によっては、学会員の推薦が必要なところもあ。
 日本コーヒー文化学会の門戸は広く開かれている。この特徴を生かしつつ学会誌については投稿規定をゆるく定めてはいかがだろうか。

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