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迷走と功績

私がしているバイトは接客業で、お客様に一週間後の日付を伝えることが多々ある。
今日は、「一週間後の3月19日で…え?」と思わず言葉が詰まった。

一週間後、3月19日。
ここ最近、FANTANIMA関連に時間を使っていたのであまりよくわかっていなかった。もうすぐ個展が始まるじゃないか。大変だ。
次から次へとやることが出てくる。搬入前日は歯医者とバイトだ、ちゃんと逆算しないと間に合わない。

大変だ、といかにも焦っているようなことを言いつつも実際はそこまで焦っていない。
変な焦りは余計な仕事を増やすことになると身体が理解しているのかもしれない。
やるべきことを淡々とこなしていく。カレンダーの過ぎた日付にスラッシュを入れるような正確さで。

このnoteの一番目の記事でざっくりとした経歴紹介を書いた。
そこにもあるように、私が「自分で作ったものをお客様と呼ばれる方へ販売する」ということを始めたのは2011年の秋だ。

そう、2021年は実は10周年なのだった。

アクセサリーを、300円で売っていた。
一つ売れるごとに、喜びよりも本当に良いんですか?という気持ちが優り、信じられなかった。
「大好きが高じ勢い余って」という感じのスタートではあるのだが、全ての事の始まり、原点であることに違いない。
のちの作品に繋がっていく要素がその頃にもちゃんとあった。


10年。

しんどかったね。

今以上になにもわかってなかったけど、わからない方がよかったことだってきっとある。
10年前と同じ視点を持つことはもうできない。

その時の作品はその時にしかできない、というのは正にその通りだ。
根底にある好きなものや影響を受けたもの、自分を形作ってきたものが今になって揺らぐことはもうないが、感覚や感受性はほっておいたって変化していく。
今持ち合わせている感覚もきっと変わっていく。

私は、個展をするごとに必ず一段上にあがる、ネクストステージに進む、次の扉を開く、こういう気持ちを強く持っている。強迫観念に近いかもしれない。
けどこれも、徐々にしなやかになるのだろう。
そして未来の私が今の私を振り返った時、2021年の私にしかない切実さを愛おしく思うのだろう。


通勤電車の中、やたら混んでいるなと思ったら半数以上が学生だった。
みんな勉強しているから恐らくテストか。テスト?そうか、3月。今は3月だ。受験だ。

時間に追われるうち、ただの記号と化していた暦が一気に色づき、たくさんの希望や不安や葛藤で車内が埋め尽くされた。

私たちはみな一様に次の駅へ次の駅へと運ばれ、私は偶然その学生達と同じ駅で下車した。

同じ階段を下ったあと学生達は北側の、私は南側の改札へと分かれそれぞれの目的地を目指す。
「最近迷走してるわ」と言ったら、「迷いながらでも走ってるってことやん」と励ましてくれた友達のことを思い出す。

私は心の中で「お互いがんばりましょう」と呟き、通いなれたバイト先へと足早に向かった。

3月25日(木)~3月30日(火)
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cultivate gallery : 阪急神戸線王子公園駅、JR神戸線灘駅
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3年ぶりとなる個展を地元神戸で初開催。
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自身が長年深い思いを抱いている「人形」と向き合い見えてきたもの。たしかな声。
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※会場内の換気、消毒など感染症対策を徹底して行います。ご来場の際はお出かけの前の検温、マスクの着用を必ずお願い致します。
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