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こういう役には多分順番がある

相変わらず米系IT企業ではレイオフの嵐が吹き荒れています。

プロフェッショナル御用達のSNSであるリンクトインを見ていると、「この度レイオフの対象となり解雇されました、オープントゥワーク(求職中)です」みたいな投稿が毎日のように流れてきます。投稿者は大体、名だたる企業の元従業員です。

リンクトインでは例えば筆者が誰かの投稿にいいねを押すと、その投稿が筆者の友達のフィードにも表示される仕様になっていて、結果、凄い数の人にメッセージが届いて潜在的な雇用主に出会いやすくなるようです。なので解雇された旨を投稿する際には、記事が拡散されやすいようにエピソードを盛り込むのが重要です。労働ビザで次の雇用主を見つけるまでにタイムリミットがあるとか、アメリカに渡って困難にもくじけず頑張ってきたんだ、といった感じですね。職能重視の環境で、こうした事情が採用の可否に影響する事はないと思いますが、それでもSNSにいるのは心ある人間ですから、記事の拡散くらいは多くの人が普通にやってくれます。それで辿り着ける面接が増えれば儲けものですね。

弊社においては、筆者のチームや近隣のチームでも、ここ数ヶ月で何人もの同僚がレイオフのインパクトを受けました。エンジニアのみならず各種サイエンティストやらプログラムマネージャーやら色んな人達が会社を去ることになりました。しかしその一方でこの嵐の中、より良い待遇を求めて果敢に別の会社に転職していくチームメイトもいて、不思議な流動感を感じます。どんなに市場が悪くても優秀な人はひょいひょいステップアップができるといったところでしょうか。かつてサラリーマン金太郎は「会社と恋愛がしたい」と言い放ち、会社員として大きな成功を収めていったのですが、こうした日本的終身雇用がお見合い結婚だとしたら、会社も労働者もガンガン相手をとっかえひっかえするアメリカの雇用はなかなか過激だなぁと思う次第です。しかし人間適応するもので、四半期ごとのチームの集合写真から毎回人が消えるのにも慣れてきました。

まぁそんなこんなで人は色々な事情で会社から消えるのですが、その中でも筆者の心に影を落としたのは、筆者がメンターしていたジュニアエンジニアがパフォーマンスが理由で解雇された件です。これは結構センシティブな話題ので、普通はエンジニアリング・マネージャーが単に「辞めた」とチームに伝えるだけなのですが、筆者はメンターだったので詳細を教えてもらいました。彼が PIP(パフォーマンス改善計画  -「会社としてはパフォーマンス改善のために手を打った」という言い訳に使われる)に処される事が決まった後、彼が解雇手当を選択した事を打ち明けられました。

この従業員は賢いのだけど、筆者がメンターになる以前からパフォーマンスと勤務態度に問題があり、その長期間の不出来が PIP に繋がった、というのが当時のマネージャーの説明でした。しかしそれでは学びがないので、自責思考に切り替えて、何がいけなかったのだろうか?筆者に何ができたか?と考えてみたのですが、何も思いつきませんでした。一緒に問題を考え、次のステップを明確にし、自発的行動を煽ったのですが、望んだ結果に辿り着く事は難しいようでした。

しかし一歩引いて考えてみると、人間精神を病む事もありますし、家族の事情とかもありますし、その中で常に期待されたパフォーマンスを出し続ける、というのはとても難しい気がします。また自分のパフォーマンスが良くてもチームの仕事にビジネス上の需要がなくなれば、チームごとレイオフされるかもしれません。つまり、このまま働いている限り、筆者もいつかは高い確率で解雇されるでしょう。ずっと勝てればもちろん良いのですが、悲しいかな、こういう役には多分順番があるのです。

ハンジさんの苦悩が理解できる気がしますね。

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