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苦手だった色を着たいと思うようになった理由

ここ数日、気温が急に上がり始めた。
私は秋からずっと綿ニットを着続けているが、流石に暑く感じることが増え、先日少しだけ夏を乗り切る為の服を買ってきた。

通販でずっと欲しいと思っていたライトベージュのテーラードジャケットも手に入れたし(何着取り寄せたか……)、恐らくは手持ちの服だけでも多分秋まで暮らしていけるのだ。

けれど、今の私にはどうしても欲しい服がある。

ごく淡い桜色のトップス。

自問自答ファッション講座あきやさんから提案された制服案の一つに、この色がある。

私の制服案は色がベースになっている。
他の方々の制服案は、それぞれの暮らしだったり好きな事だったり、はたまた目指している生き方がベースになっていて、本当に十人十色で面白い。

私にとっては、ファッションの指標が【色】であった。
指標と言うと語弊があるだろうか。
しかし色が表す高潔さや優しさ、純粋さや聡明さが分かる感性、それを私は持っている。講座受講後1年とちょっと経つが、ようやくその自信が心に根付いてきた。

私が今持っているトップスの数はこうだ。

IMG_4548 (編集済み)

ニットは秋から春まで。夏から秋にかけてはシャツ……だけれども、BRICK HOUSEの白シャツはかしこまった場に着ていく為の重ね着用。ワンピースも買ったけれどそれを加えても現時点で3着しか着るものがないことになる。

由々しき事態だ。

由々し過ぎて真顔になるくらいに由々しき事態なのである。

ボトムスは通年OKなものばかりで、増やす必要はない。アップデートは必要だけれど。
私は本当に夏が苦手で、これまで散々骨格ストレートだからジャストサイズ!セットインスリーブ!!と叫んできたが、この季節に限っては快適さが最優先。だから最近買った服は袖も身幅もゆったりしている。それでも素材感やデザインの全体像は譲れない軸というものがあるのだけれど……。

ここまで書いてきて、『ん、なんだ3着?いけるじゃない。ワンピースはそれだけで上下完成してるし、白のシャツにはラベンダーのパンツ(本当は紺を合わせたいが出会えていない)やデニムを合わせられるし、ブルーのシャツには紺のパンツとデニムでいけるな?』と気付く。

しかし、これは既に何度も行き着いていた考えで、それでも尚私は桜色を手に入れたいのだ。

ピンクと一括りにされるこの色は、私にとって一番縁遠い部類の色だった。

だって、甘ったるいじゃないか。ピンクって。

いかにも『女の子』という感じ。
戦隊物でもピンクは女性だった。私が子供の頃は、男の子はピンクの服なんて着ていなかった。
女性性そのもの、それが私にとってのピンクという色の印象だった。

私はそもそも性別で区分けするのが好きではなくて、例えば『家事は女性の仕事』『男性はメイクなんてしない』といった、クソつまらない定義なんて滅べばいいのにとずっと思っている。
今でこそジェンダーレスが許容されてきているけれど、一昔前は女であるというだけで従順さやしとやかさを強要されたり、男性よりも仕事で目立ってはいけないという空気に馴染んだ振りをしなければならなかった。
そんな時代の中で生まれ、成長してきた私は『男の子は青、女の子はピンク』という単純明快な仕分けが大嫌いだった。
戦隊物ではリーダーの男性は皆〇〇レッドだったのに、男の子の色は赤とはならなかったのが今も不思議だ。

そんな私が、今猛烈に桜色を欲するのは、恐らく『性別も性格も性的嗜好も取っ払って、好きなものだけを纏えばいい』と素直に思えるようになったからだろう。

以前は、とにかく女性であることが嫌で嫌で、それでも自分の性自認が女性であることが苦しかった。
自分の性別に囚われていたのは自分自身だった。
だから、女である事を厭う私が女性の象徴であるピンクを身に付けることに抵抗があったのだ。

『私は女です』
そう主張する服装が、私は本当に嫌いだった。

高校を卒業して最初に勤めた職場の制服は事もあろうにピンクの事務服。しかもまあまあ濃い色。
生理的に無理だと感じて、それだけが理由ではなかったけれど2年ちょっとでそこを辞めた。

40代に突入し、イメコンを知ってから、徐々にピンクへの抵抗が薄れ始め(それでもやけにくすんだ色ばかりを選んだ)、自問自答ファッション講座の後、ようやく雪解けを迎えるに至る。

私はパーソナルカラー診断においてブライトサマーと言われており、澄んだ鮮やかな青味のある色が似合うそうなのだ。
自分ではまだちょっとよく分かっていないけれど、早い段階から『きっとこういう色だな』と判断出来るようにはなっていた。

だからこそ、制服案の中に桜色が含まれていたことに戸惑いがあった。
色としては好ましく思うし(それこそ植物や服、絵画に使われる『色』として)、与える印象は優しく安心感がある。
だからこそ、私には別世界の色だった。

でも今の私はガンガンピンクの綿ニットをきている。
一番初めに袖を通した時、着慣れない色に何となくむず痒さを感じたのを覚えている。
でも不思議なもので、今は最初に感じた違和感はないし、色が甘くともデザインや合わせるボトムスでどうとでも印象操作できるのが分かって、苦手意識はもうない。むしろこの色を着ていると穏やかになれる気すらしている。

黒やアースカラーばかりきていた若い頃とはまるで違う。

デザインや素材については好みが完全に出来上がっているのでこれが覆ることはそうそうないけれど、色で遊ぶということが何となく分かってきた。
ベーシックな色でありながら遊び心満載のデザインで服を楽しむ人もいれば、私のようにちょっとだけ自分にとっての冒険を色で楽しみつつ、基本はシンプル路線という人もいる。

それぞれの楽しみ方があって、そのどれもが素晴らしい。

性別にこだわらず、好きな色、好きな形の服を好きなように取り入れる。
そうして自分をデザインする。

私がこんなにもピンクピンク言ってる理由って、勿論制服を完成させる為に必要な要素というのもあるけれど、きっと深いところでは優しく穏やかなものを求めているのだろうと思う。

ここ最近、仕事で心が刺々しくなっているし、腰痛が辛過ぎて働くのがきつい。
白や青は私を凛と強くしてくれるけれど、力を抜いて楽になれとは言わない。もう一段階上の甘さを、心がきっと求めているのだ。
それが、私の場合は他人からの言葉でも態度でもなく、自分が自分の為に選んだ服を着ることで得られると考えているのだと思う。

他の誰かに癒されたいとは思わない。
私のことは、私が目一杯労わって甘やかしてやればいい。

そういう人間だから、今猛烈に優しい色を纏いたいのだ、きっと。


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