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『SPEED BURGER』~アイデアの着想から入稿まで、テストプレイを除いた全ての作業を一人で行い、アナログゲームを製作しました!~

はじめまして!けいと。(@design_keito)と申します。

この度、アイデアの着想から、ゲームデザイン、イラスト、印刷所の入稿まで、テストプレイを除く全ての作業を自分一人で行い、オリジナルのアナログゲームを制作しました!本格的なアナログゲームを制作するのは初めてで苦労した部分も多々ありましたが、総じてとても楽しい経験となりました。そんな楽しさをぜひまだボードゲーム制作をやったことのない人にも味わってもらいたいと思い、今回はそんなアナログゲーム制作の過程を振り返りながら紹介します!ぜひ参考にしていただければ幸いです。


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どんなボードゲームを制作したか


一枚完成3

↑は縮小されてしまっているのでくわしくはこちら


今回私が制作したボードゲームは「SPEED BURGER」。題材にしたのは『ハンバーガーづくり』です。プレイヤーは架空のファストフード店『SPEED BURGER』のコックとなり、オーダーされたハンバーガーを手早く調理します。遊んで楽しい、見て楽しいまさに一度で2度美味しいゲームとなっています。


パッケージデザイン3

パッケージデザイン
『バタバタハラハラ、バーガー作り!?』


コンセプトは『時間に迫られながらハンバーガー作りをするポーカーゲーム』で、通常のポーカーのルールの『制限時間』という要素を加えることでさらに面白いゲームを作るという考え方を大事にしました。7種類ある『注文カード』にはそれぞれメニューとなるハンバーガーと、作るのに必要な材料が載っています。この注文カードのハンバーガーを相手より早く材料を揃え完成させたプレイヤーの勝ちというルールです。シンプルなルールですが、ピクルス抜きでもハンバーガーを完成させられる『ピクルスカード』や全てのハンバーガーの代わりになれる代償に作る際に制約があるデラックスバーガーを作る『チャレンジ・ザ・デラックス』などの特殊ルールも存在するため、プレイヤーの戦略性が問われるゲームになっています。


注文カード3

注文カードまとめ3

注文カードの例
私のお気に入りカードはヘルシーバーガー(完成させやすい)とたまバーガー(名前が良い)


材料カード2

材料カードまとめ3

材料カードの例
私のお気に入りカードはエッグ(右上のコゲが好き)とチーズ(色が好き)


作ろうと思ったきっかけ


『焦る』ゲームを作りたい」という思いが根本にありました。私は現在、大学のアナログゲーム研究会というサークルに所属しており、普段から様々なボードゲームを遊んでいます。中でも好きなのが株式会社クラグラ様の『たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ』とホビージャパン様の『DOBBLE』というゲームです。詳しいルール説明はここでは省きますが、両者に共通する点は『プレイ中に焦る』という点です。僕はこの『焦り』こそゲームを面白くする一つの要素なのではないかと考え、今回のゲームの大事な要素にしました。


制作の大まかな流れ


製作の大まかな流れは以下の通りです。

制作の大まかな流れ2

印刷所とオンライン通販サービスについては以前同人誌を制作した際に使用していたので知識はありましたが、パッケージデザインやコンセプト詰めなどは初めての経験だったため苦労しました。


コンセプトメイキング


アイデアコンセプトという言葉は非常に似た言葉ですが、ざっくり言うとアイデアは『ゲームのとっかかりとなる着想』でコンセプトは『アイデアをゲームとして具体化させ、ゲームの方針となるもの』という認識です。(吉冨賢介『ゲームプランナー入門-アイデア・企画書・仕様書の技術から就職まで』より)

今回のケースでは、


アイデア
ドキドキ焦るゲームを作りたい&重ねるアクションにピッタリのハンバーガー作りをテーマにしたい
コンセプト
→ オーダーされたハンバーガーを相手より早く(時間に迫られながら)作るゲーム
となりました。

またこの際、ハンバーガー作りをテーマにするメリットについてもまとめました

ハンバーガー作りをテーマにするメリット
みんなが知っている(親しみやすい)
具材にバリエーションがある(役が作れる、拡張カードが出せる)

ここまでで、詳細なルール以外のゲームのイメージが何となくつかめてきました。


ルール設計の改善プロセス、テストプレイ


詳しいルールを決める前に、まずは似たゲームがないかを探します。

今回は似たゲームに
四等星様の「FIRSTBURGER」

ダイソー様の「アロハ!バーガー」


の二点がありました。
両者ともカードを積んでハンバーガーを作るという仕様がこのゲームと類似していますが、スピードではなく神経衰弱によったゲームだったためこのまま制作を進めました。今回のケースはまだラッキーな方でボードゲームを考えているとこれは絶対面白い!!というアイデアが浮かんでもまんま同じ内容のゲームがすでに開発されていたりするケースが多々あります。そういう時は自分のアクションの遅さを恨みます。

似たゲームがないかを探した後は、一枚ラフを書きます。左上がパッケージの表紙イメージ、その隣がプレイ画面のイメージ、左下がカードの種類案、その隣がカードのビジュアルデザイン案です。

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『SPEED BURGER』の一枚ラフ企画書、テストプレイに向けてカードのデザインや枚数を大まかに決めていきます


上の画像の右上のプレイ画面イメージを見て貰えばわかると思いますが、当初はルールをトランプのスピードのイメージで設計していました。


そしていよいよテストプレイを行います。テストプレイでは無印良品さんの『週刊誌4コマノート・ミニ』を使います。これは以前僕が漫画を書く際にネームで使用していたもので、長方形でカードにも応用が効くことに気づき使用しているものです。ここに大まかなカードのデザインを描き、ペーパーカッターで切り取りテストカードとして使用します。


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こんな感じで大まかに描いて...

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ペーパーカッターで切る(便利)

そしていざテストプレイ

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結果としてスピードのルールだと以下のような問題点があることがわかりました。


・下から順番通りに積み上げるルールだと手札に合うカードがほぼ来ない
→相手より先に完成させると言っても、完成の定義が「最後にそのバーガーのバンズを上に乗せたプレイヤー」なのか「そのバーガーの中で最も多く材 料を乗せたプレイヤー」なのかが曖昧。前者だとバンズ上だけ待ち伏せすれ ば良いし、後者だとハンバーガーを作るのに使用した材料カードが同じ枚数の場合困る。
・てりやきバーガーの難易度が異常(てりやきソースがこない)


その後も「材料を載せるのは順番通りじゃなくても良い」「てりやきバーガーの撤廃」などルールの改善を行いテストプレイを続けましたが、カード枚数の制約などにより断念

そしてルールを根本から見直し、ポーカーのように役(ペア)を揃えるルールにしたところ非常にうまくいったのでポーカーをモデルにゲームを設計することにし、ポーカーを基本ルールに追加要素としてピクルス抜きでもハンバーガーを完成させられる「ピクルスヌキ」や、全てのオーダーの代わりになる「デラックスバーガー」などの特殊ルールを加え、ゲームのルール設計を終えました。今回のボードゲーム制作ではここのパートが最も苦労した部分だと思います。


デザイン、イラスト制作


カード配置4


ボードゲームを作りはじめた最初の頃からイラストは自分で描こうと考えていました。単にイラストを描くのが好きという部分もありますが一倍大きい理由は人件費をかけられないからという点です。カード一枚の絵を描くのに5時間かかるとして、1時間あたり1000円でも5000円。それを18通りと考えると18×5000=90000円になり、とてもじゃないですが私には払える金額ではありません。私の場合元々イラストを描いていたり、趣味でデザインを行っており、最低限フォントやレイアウトの知識があったためデザイン周りのことは自分一人で出来ましたが、そうでない人はボードゲーム制作を行う上でここがネックになってくると思います。

レイアウトのデザインは僕の好きなゲームの一つJELLYJELLYGAMES様「はらぺこバハムート」を参考に、ハンバーガーや材料のイラストは僕の好きなイラストレーターのア・メリカさんやお気に入りの絵本『バムとケロ』シリーズのイラストを参考に制作を進めました。

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材料のイラストを描くのに一種類当たりだいたい3時間くらいかかりました


また、制作したカードのデザインは頻繁に自宅のプリンターで印刷して、実際のニュアンスを確かめるようにしました。また印刷の際オプションとして用紙変更をすると料金が跳ね上がるため、製作の際にテクスチャとして紙の材質を入れてそれっぽくするという小技もあります。当たり前ですが、一度印刷所に入稿すると何があっても変更はできないため、印刷所への入稿の前にこれでもかというくらい確認します。



印刷所への入稿


ボードゲーム制作を行う上で、印刷所の選択というのは非常に大事なパートだと思います。私が今回利用したのはグラフィック社様です。

この印刷所を選んだ理由は大きく分けて2つあり、
1、小ロット(5部〜)からの印刷ができる
2、psd入稿ができる

の2点です。


前者は、今回は販売や利益などを度外視し、試しにボードゲームを作ってみたいな、という私にとって最も重要です。グラフィック社様ではパッケージの箱付、裏表32枚カードで5部だと大体7000円(初回だと会員登録で1000ポイント貰えるため6000円)です。配送料込みでこの値段なので、小ロットでの印刷だとおそらくこの印刷所が最安値だと思います。個人的にはカードの箱が化粧箱ではなく組み立て式のトランプなどの箱なのが若干残念ですが、化粧箱はポプルス様などで10部3500円ほどで作れるため特に気にしていません。ボドゲ博などで100ロット以上の多部数で入稿する場合は他の印刷所(萬印堂様など)でも良いと思いますが、初めてボードゲームを制作する際はグラフィック社様がオススメです。

入稿を終えると、大体10日ほどで手元に届きました。印刷も綺麗でカードの質感も良く、満足のいくデザインとなりました!

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印刷もばっちり!箱は自分で組み立てなので慎重に...

プロモーション、販売


今回に限ってはプロモーションは特に行っていません。強いて言うならこのnoteくらいです。今回は特に利益を目的とせず、5部という小ロットの印刷のためプロモーションをして商品に興味を持ってもらったところで商品の数を用意できないためです。
販売は私のBOOTHにて行っております。私は暇さえあればしょっちゅうBOOTHでボードゲームを見漁っているため、同類の人に見つけていただければ幸いです。

まとめ


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初めての本格的なボードゲーム制作で、非常に苦労した面(特にテストプレイやイラスト制作)が多々ありましたが、それでも制作を行なっているときは楽しかったですし、友人が私が作ったボードゲームに熱中し、楽しみながらプレイしている様子を見ると、やっぱり制作して良かったなと思います!また、最近はコロナウイルス感染拡大防止のため、巣篭もり需要が高まるにつれボードゲームの人気も少しづつ上がってきているそうです。そんな中、この記事が少しでも、ボードゲーム制作に興味を持ち初めての制作を行おうとしている方の助けになれば幸いです。

けいと。

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