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初めてのキャンプは白鳥とのバトル

「カサカサ」、「ペタペタ」
夜中のキャンプ場、テントの周りで不気味な音がする。
何かの気配とともに。

私がキャンプを始めたのは25年前。バイクで遠出するときに、ホテル代を節約するための手段としてキャンプ道具を揃えたのです。

初めてのキャンプは大分県の志高湖キャンプ場。
1日有休を取って日曜日・月曜日の一泊2日のキャンプツーリングです。
日曜日の昼過ぎにキャンプ場についた時は、家族連れで大賑わい。ここは湖でボートに乗れたり、広場があったりして、日帰りで楽しむ家族が多いようです。
私は、人気の少ない一番奥にテントを張り、しばし昼寝。

「さむっ!」
11月だったので、日が落ちる頃には温度も下がり、寒さで目が覚めました。
周りを見渡すと、あれほど賑やかだったのに、誰もいなくなっています。日曜日だったので、家族連れは早々に帰宅したのでしょう。オフシーズンなので、管理人さんも帰ってます。
山と湖に囲まれたキャンプ場、宿泊は私一人。

目の前の湖には白鳥が浮かび、向こうには夕日に輝く山々が広がっていました。この壮大な景色を独り占めするのは、本当に最高の気分でした。

でも、この時の私は11月のソロキャンプを甘く見ていたことに気づきません。

初めてのキャンプなので、晩御飯はコンビニ弁当。お湯だけはバーナーで沸かし、コーヒーを楽しみます。
食後のコーヒーを飲み終わって、時計を見ると19時。
することがない。スマホは圏外。寝るとしますか。

テントの中で寝ていると、
「カサカサ」、「ヒタヒタ」
と、テントの周りで何かが歩いている音が聞こえ、おまけに野犬の遠吠えも聞こえます。外に出るのは危険だと感じました。
湖からは「バッシャ」と大きな音もしています。

おまけに、11月の山の中、夜はメチャクチャ冷えます。キャンプ初心者の私が持ってきた寝袋は春夏用の薄手のもの。昼間は暑いくらいなので、これで十分と考えたのです。

春夏用の薄手の寝袋を持ってきたため、凍死するかと思うほど夜は寒く、焚き火の準備もしていなかったので、暖を取ることもできませんでした。背中の芯からの冷え込みに、自分の判断を後悔しましたが、もう後戻りはできませんでした。

恐怖と寒さで、一睡もできない。生きて朝を迎えることができるのか、不安になりました。長い長い夜でした。

そのうち、空が白み始め、陽が指してきます。
「太陽がこんなに暖かいなんて」
無事に朝を迎えることが出来ました。

朝食はコンビニで買っておいたパン、お湯を沸かして湖畔でコーヒーを飲んでる時に、夜中の不気味な足音の正体がわかったのです。

テントを見ると、白鳥がテントの中をあさっているではありませんか。昨晩食べた弁当の容器をついばんでいます。夜中の足音の犯人はこいつだったのか!
クッカーを石で叩き、大きな音を出して白鳥をテントから追い出しました。何度もクチバシで突かれました。

知ってますか?白鳥って大きいんですよ。怖いんですよ。
水面を泳いでいる時は、あんなに優雅で美しのに。
僕は白鳥は好きではありません。

初めてのキャンプは白鳥とのバトルで終わりました。



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