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黒人のイカついバス運転手 ~フランスのお話~

閲覧ありがとうごさいます!Keiです。

海外に行くと日本では遭遇しないような出来事が次々に起きて、本当に刺激的ですよね。

さて、今回は、学生の卒業旅行でフランスを訪れた際に出会ったバス運転手のお話です。

バスが来ない!?

卒業旅行とはいえ、学生の貧乏旅行でしたので、移動手段はなるべくお金がかからないものを利用していました。

フランスの旅は同国最大の空港、シャルル・ド・ゴール空港に降り立つところから始まりました。

空港からパリへの移動手段は、色々調べた結果安く済むバスを選択し、空港の総合窓口の女性に乗り場と系統を教えてもらいました。

バス停に向かったところ、その乗り場には私たち以外に人がおらず、ずいぶん待ってもバスが来ません。

日本で時間きっちりに交通機関が来ることがどれだけスゴいことなのかということを理解していても、周りに人がいない状態でずっと待たされるとさすがに不安になりました。

何度確認しても、案内されたバス乗り場の場所に間違いは無い。

まだ朝方でもあったので、根気よく待つことができましたが、予定時間から約1時間過ぎた頃にようやくバスがやってきました。

このバスは大丈夫なのか

一安心し、バスに乗り込むと、バスの運転手以外に2人の乗客がいました。

1人は若いスラッとした10代後半と思われる黒人男性で、運転席の横に立っていました。

もう1人は中年女性で、髪は少しボサっとした感じで無愛想な様子。運転手の斜め後ろ、進行方向に向いている1番前の席に座っていました。

そして、運転手はボブサップを思わせる体格に、SPのような黒のサングラスをかけた黒人男性。

(イカつい…)と内心少しビビりながら、

「このバスはパリまで行きますか?」
と運転手に尋ねると、

「とりあえず乗りな。」
と頷きながら答えました。

私の友人は英語は理解できるものの話せないこともあり、この状況に相当不安を覚えたようで、しきりに「これ大丈夫?大丈夫なやつ?」
と私に何度も聞いてきました。

そんなこと聞かれても、俺だってちょっと不安…

でもそれを伝えたところで意味もなく、不安になるだけ。バスの番号が合っている以上もはや降りることもできません。(空気的に)

「大丈夫!なんとかなるって!」
と答え、バスは空港を出発しました。

怪しくなる雲行き

フランスに土地勘はなく、どこを走ってるのかもわからないまま、永遠にも感じる時間が流れていました。

若い黒人男性客が、何やら運転手と親しげに会話をしながら、チラチラと私たちを確認していました。

その様子に友人は溢れ出る不安をかき消すのに必死、という感じでした。

全く人が乗ってこない時間が続き、バスはいつの間にか住宅街を走っていましたが、バス停もないところで急に停車しました。

すると、乗客の中年女性が立ち上がり、何やら運転手と話した後、アツい抱擁を交わし始めたのです。

こちらが事態を飲み込めないままでいると、しばらくして中年女性はバスを降り、停車したところの家に入っていきました。

夫婦には見えなかったので、愛人だったのでしょう。愛人を家までバスで送るとは何とも自由な働き方をするもんだと思いました。


そうこうしているうちに、チラホラ乗客も増え始め、若干不安が和らぎました。

しかし、走り出してかれこれ1時間以上は経過していたので、これは思っている以上に料金を請求されそう…

しかも、途中で乗ってこられた女性に、

「日本人!ここは荷物を置くところじゃない!」

と、スーツケースを置いていた場所についてお叱りをうけることもあり、状況が状況なためすさまじいストレスを感じていました。

パリ

結果、パリには無事到着しましたが、空港を出てから2時間くらいが経過していました。

かなり安い料金のはずでしたが、そんな値段で済むはずがなく、友人にはお金で済むなら仕方ない、とりあえず無事に降りれたら良いよねと話をしていました。

全員が降りてから、おそるおそる黒人のバス運転手に、

「あ、ありがとうございました。ちなみに、いくら支払えばよいですか?」
と尋ねると、

彼はサングラスを外し、

「お前たち、その様子だとパリは初めてなんだろう?ようこそ。運賃は俺のおごりだ。この金で、フランスのコーヒーでも飲んで楽しんでくれ。」
と彼は笑顔で言いました。

これまでの状況と彼が放った言葉とのギャップで、私はとても驚きました。

終点まで隣に立っていた若い黒人男性はすごく誇らしげに頷いていて、よく見ると運転手の顔立ちによく似ていました。おそらく親子で、あの日本人にサービスしてやろうと話をしていたのでしょう。

その後、私は感激でよくわからなくなったお礼を彼に伝え、バスを降りました。

フランスでも色々ありましたが、このバスでの経験が1番印象に残っていて、フランスに対するイメージを良くしてくれました。

現地の方がしてくれるちょっとした親切が、相手の心に深く刻まれることがあるということを学べた出来事でした。

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