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所有者不明土地問題

今日は、土地家屋調査士というお仕事の一端を紹介。我々土地家屋調査士は土地の筆界(いわゆる境界)を明らかにする唯一の国家資格者なんですが、筆界を明らかにする行為には、その筆界を共有する人、つまりお隣さんとの立会確認(どこまでが境界なのかを確認)が必要なんです。

なので、お仕事の依頼を受けたらまず最初にするのが隣接(お隣さん)の所在確認となります。ご近所同士が顔見知りなら特に問題はないように思えますが、ここ最近では数軒のお隣さんのうち一軒だけは空き家であったり、空き地であったりすることも。

その空き家や空き地に管理会社の看板が掲げてあればまだいいのですが、それすらもなく表札もない場合、法務省(国)の法務局というところで所有権登記名義人(所有者)を管理しているはずなんですが、その記録が昭和20年代や30年代から更新されていないものが数多くあります。大正時代のままなんていうのも少なくないんですよ。びっくりでしょう。

つまり、とうに所有者は亡くなっているけど、相続登記がなされていないってことなんです。相続登記は義務ではないので(近日中に義務化予定)、亡くなった方の名義のままにされているんです。

そんなの市役所とかいけば調べられると思うでしょう?ところが、登記の記録は登記がされた時の「住所」で記載されているので、亡くなってしまうと経過期間終了後には住民登録が消えてしまうんです。となると、市役所では調べることができません。「戸籍」なら亡くなっても古くまで調べることは可能なんですが、こと「住所」に関しては、経過期間(保存期間)が過ぎるときれいさっぱり消滅してしまうのです。

これが所有者不明土地(集めると日本国土のうち九州に匹敵するくらいの大きさ)が生まれる根源なのです。

原因がわかっているなら対処すればいいのに!って思うでしょ。そうなんです、この原因を初期の段階からわかっていたのは我々土地家屋調査士のはずなんですが、これを国に理解してもらうのに数十年かかってきたのです。

「所有者不明土地問題」と言っていますが、本来は「所有者資料を抹消してきた行政が生み出す土地問題」と言い換えるほうが正しいのです。住民基本番号が誕生した時、マイナンバーが誕生した時、我々はやっとこれで「所有者不明土地」が減ると喜んでいたのですが、実際には登記にはまったく利用される気配がないままでした。きっと登記とマイナンバーを紐づけると困る人(隠し財産をたくさん持っている人)がいたんでしょうね。

そんな「所有者不明土地」を受託した業務案件でひとつづつ明らかにしていくのも我々土地家屋調査士の役目です。

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