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「レペゼン母」(宇野碧)読みました

レペゼンの意味について「そんなのとっくに知ってたけど?」って言う人、けっこういるのかな?私はこの本を紹介するテレビ番組で初めて知りました。
ヒップホップ用語で「~を代表する」という意味。で、テレビ番組でインタビューに答えていた作者曰く、この本は「母としての気持ちを全部ぶつけた」そう。
梅農家を切り盛りする60代主人公というのが、なんか親近感。私は梅干しや梅酒がすごく好きというほどでもないけど…、母が6月の梅仕事でいろいろ作っているのを見てきました。生まれ故郷は日本海側では一番の梅産地らしく、梅はわりと身近な果実です。育った家は梅農家ではないですが、梅を出荷する親戚もいました。昔、故郷で知り合った方は、この本の主人公と同じく、夫亡きあと梅畑を切り盛りされてたなあ、と思い出した。こんなにも、梅もぎのシーズンは大変だったんだ。
街中で育った人よりは、梅が近くにあったとはいえ、生育過程の苦労については、まったく何にも知らなかったなーって感じました。
農業ってほんと大変です。趣味ではなく仕事として、毎年一定収入を得ていくのは特に。育った家も周りも兼業農家がほとんど。専業農家としてやっていくのって、プレッシャーが半端ないと思います。他の果実や野菜でもそうだけど、収穫期には人手が一気にいる。そのやりくりに思案する主人公の悩みがとてもリアルでした。
お話は、しっかり者の主人公明子が、ヒップホップに出会い、ヒップホップに自分の思いをのせて爆発させていくというものですが。
ヒップホップって俳句のようなもの、そのバトルは句会と共通点がある。俳句は、特別な才能や努力や教養がなくても、言葉さえ話せれば誰でも575にあてはめて作ることができる。広く一般的な表現方法。
ヒップホップもそういう要素がある。楽器ができなくても作曲ができなくても、上手に韻をふんだりグッとくる言い回しをしたり、自分の思いが“作品”になることで、もやもやした心がくっきりとなりそして浄化されていく。
言葉を紡ぎうまく表現できる、っていうのは快感です。いくつになっても。
そして俳句よりもヒップホップのバトルの方が、直接的な心と心のぶつかり合いがある。濃い人間関係を避けがちな国民性の日本だけれども、自分と合わない者と遮断するだけでは淋しい切ない。しっかり言葉で喧嘩できることって大事。
そこには最低限、相手の言葉にちゃんと耳を傾けるというリスペクトがある。それがなきゃ生きていることにならないよね、としみじみ思わされました。

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