寒さも理不尽も味わい尽くす
今秋初めて、起床直後に“ストーブほしい”って思いました。
夏はすっかり過去に行っちゃったんだな…。寒いといってもストーブやエアコンは不要。まだ、電気ひざ掛けと電気スリッパだけで十分乗り越えられる程度の寒さ。食事しているうちに、体内に温かさがじんわりもどってきて、ほっとする。
思い出すシーンがある。
映画「ベルリン天使の詩」の一場面。この世界には人間には見えないたくさんの天使がいて、人々の生活を見守っている。そんな天使の一人(一天使?)…見た目中年男…が、人間への憧れの気持ちを抑えられない。人間になりたいと切望する。この天使が、人間の素晴らしさを語る場面が忘れられない。
“寒くて息が白い朝、こうやって両手をこすり合わせれば温かい。その喜びよ” ほんとに羨ましいという風情。これが手に入ったら他は何もいらない、という感じで。
天使は、暑さ寒さの感覚は持っておらず、言葉として知っていても体感することはないのです。
ああそうだ、そうだった。寒さがあるからこそ、暖かさが嬉しい。
今日みたいな寒い朝に温かい飲物を飲めば、たちまり体がほぐれていき、心も動き始める…この瞬間の素敵さよ。日々の営みにこそ生きる素晴らしさが詰まってる。
生きていると、考えることがたくさんありすぎて、悩み惑うことも多すぎて。でも、ただ、生きているというだけで、楽しいことはたくさんあるんだった。お腹がすいて食事する、というだけだって。
なんてね。…いつもこんな悟りの心境で暮らしているわけではない。でも、ときどきは思い出して、そうだ生きていることを味わい尽くさなきゃ、と自戒する。
「味わい尽くす」といえば、もうひとつ、心に残っている言葉があります。
最近の私の座右の銘。ポッドキャスト番組「over the sun」のリスナーのお便りの中の言葉。何か、歌や小説の文なのかもしれませんが、パーソナリティーのジェーン・スーさんも賞賛しておりました。
「私は、世の中の理不尽を味わい尽くして死ぬ」
元気出る。
なんて理不尽なんだと怒り悲しむのも、生きているからこそ。イライラ気分のときはこの言葉を思い出す。自分を悲劇のヒロインに落とさないために。
今日は、目覚めに飲んだ温かいミルクコーヒーをおいしく感じた朝でした。
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