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ラジオの流れに身をまかせ

レディオ 冴えない今日に飛ばせ
日本中の耳に 他愛もないヒットチャートを
めくるめくニュースを この先もずっと
聴いていたいの
―赤い公園 『NOW ON AIR』

大好きな赤い公園が、これまた大好きなラジオのことを曲にしてくれている。他にもラジオ愛を音楽で示してくれるアーティストは多く、聴く度にフレーズに共感してしまう。

大好きなラジオ番組を挙げたらキリがないのだけれど、そもそも自分はラジオを聴くこと自体が好きだ。
それは、聴くことで得られる3つのものが、最高に心地良いからに他ならない。

ラジオを聴けば「偶然」が得られる

ラジオは「ながら」で楽しめるエンターテインメントだ。もちろん好きなパーソナリティが出演するのであれば、一言も逃さないようかじりついて聴くこともある。けれど、基本的には家事をしながら、また歩いたり移動したりしながら聴くことが多い。絶対に何かしらの情報を得ようと、構えたり肩肘を張ったりする必要は、全く無いのだ。

大好きな番組の1つに、『アフター6ジャンクション』がある。

カルチャー・キュレーションプログラムと謳うこの番組。1週間を通して映画・音楽・本・ゲーム・演劇・スポーツなど多くのカルチャー情報が、止めどなく溢れてくる。
自分には門外漢の分野も多い。けれど、その道のプロや作品を愛してやまない人たちの話を聴くと、惹かれるものがいくつも出てくる。それが思いもかけない出会いになることも多いのだ。

音楽番組もそうで、ラジオだと新旧洋邦問わず、様々な曲を流してくれる。知らないものの方がむしろ多いけれど、その分自分で探すだけでは絶対に無かった出会いも多くある。
イントロを聴いて、鳥肌が立つ。その次には奥歯を噛みしめて、「なんっだこれ・・・・・・めちゃめちゃいいじゃん・・・っ!」と胸が熱くなり、そして笑顔になっている。こんな経験が、一度や二度じゃないのだ。

自分では行き着くことのなかった、偶然の出会い。これがラジオの大きな魅力の1つである。

ラジオを聴けば「正解」が得られる

どんな正解か。自分はその日その時の「過ごし方の正解」が得られると思っている。
朝はそれぞれの街の始まりを伝えてくれる情報番組。お昼前は、ちょっとひと息つきませんかと言ってくれているような、穏やかなものも多い。

仕事が休みのお昼前は、決まって『ディアフレンズ』を聴く。

午前中の家事を終えた時間や、どこかに移動している時間帯。坂本美雨さんの落ち着いた声が、「少しリラックスしましょうか」という雰囲気で耳に入ってくる。それだけで、休日を過ごす自分を後押ししてくれるような気持ちになる。

平日は夕方になれば、仕事終わりの自分をまた盛り上げてくれるような番組が待っている。深夜には、寝られないテンションをそのまま受け止めてくれるような番組がラインナップされているのだ。

平日だけではなく土日も、いろんな番組がその時々の過ごし方を提案してくれる気がする。これは、音楽やトークを含め、そういった番組を制作・編成しているラジオ局の妙だと思う。
ラジオはとても自然に、「こんな風に過ごしたら?」とさりげなく正解をくれている。

ラジオを聴けば「一歩」が得られる

旅行した時に必ずと言っていいほどするのが、現地のラジオを聴くことだ。東京に行けば東京の、大阪に行けば大阪の番組を聴くようにしている。

目的の観光地に行ったり、ご当地の名物を食べることも、もちろん旅行先を満喫することにつながる。けれど、現地の番組を聴くと、その土地にさらに「一歩」入り込んだ気分になれるのだ。
本当にローカルな情報が多く流れるし、何を言っているのか分からないこともある。でも、そういった情報や方言で喋っている効果だろうか。観光とは違う、街の流れのなかに少しだけ身を投じた、そんな感覚を得られる。

週末の東京、日が暮れた夕方の道を、東京のラジオ局の放送を聴きながら歩いてみてほしい。ビル街に一気に灯りがともる寸前の、ちょっとだけ寂しさを含んだ大都会にいることを、いつもより感じられる。
福岡の朝、電車やバスで移動をしながら、福岡ローカルの番組を聴いてほしい。福岡の街では、こんな風に人々が生活しているんだなと、現地の人たちの話を小耳に挟んでいる気分になる。

ラジオって、「エモい」のだ。旅行先で現地の番組を聴けば、その場所にいること、その街の生活に触れている感覚を、増幅させてくれる。旅先の中へもう一歩進めさせてくれる、ラジオはそんなツールだ。

ラジオには、楽しみしかない

今や据え置きのものが無くても、パソコンやスマホがあればradikoアプリでどこでもラジオを聴ける。聴いたことがない人、しばらく聴いていなかった人は、一度radikoを再生して、その流れに身をまかせてみてもらいたい。

しっかり聴こうという意識は不要だ。片手間でも、ラジオにまずは浸ってみる。目的なく浸っているときこそ、ラジオはその本領を発揮する。偶然の出会いや、過ごし方の正解、街への一歩が、知らず知らずのうちに得られると思う。

既にずっと聴いている自分はどうなのか。いやいや、聴いたことのないラジオ局や番組のほうが、断然多い。
全国のラジオを聴くことができる今、まだまだ知らない番組や新しい出会いが待っている。そんな状況が、ただただ楽しみで仕方ない。

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