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カーボンファーミング・・・「バイオ炭」で農地に炭素を貯留する

■気候変動対策よりも電力確保に動く欧州
8/12の日経新聞には、「欧州、電力消費に規制・対策 スペイン冷房27度以上に、フランスは石炭発電復活」という記事がでていました。欧州各国がロシアによる天然ガス供給減少への対応を急いでいる、ということで、やはりロシアによる侵攻によって、温室効果ガス削減という大きな方向性が、その岐路に立たされているような記事に見えました。
ここは電力消費に規制・対策ということを行いながらも、やはりできることを徐々に進めていくしかない、そんな時期か。

■バイオ炭を使ってカーボンクレジットを販売
ただちょうどその前の日経新聞には、商社の丸紅が「バイオ炭」を使って、空気中のCO2を農地に閉じ込め、そこで創出したカーボンクレジットを販売するといった事業を始めるという記事が出ていました。海外でも取り組みが先行しているようですが、カーボンクレジットを販売するという着想が、さすが商社。

丸紅は農地に二酸化炭素(CO2)を固定して創出したカーボンクレジット(削減量)を販売する事業を始める。空気中のCO2を炭に閉じ込めて農地にまく「バイオ炭」の手法を活用する。農家の収益向上の支援や農地保全にもつながるため、海外で取り組みが先行している。日本でも2050年までに1.5兆円の経済効果の創出が見込まれており、市場が広がりそうだ。
バイオ炭は、木やもみ殻といったバイオマス(生物由来資源)で作る炭。分解されにくい炭に加工し、植物が吸収したCO2を炭に閉じ込め空気中から取り除くと同時に、農地などで土壌改良材として活用することができる。
丸紅はこのほど、農地でのCO2貯留の取り組みを全国で進める日本クルベジ協会(大阪府茨木市)がバイオ炭で創出したカーボンクレジットの独占販売代理権を取得した。同協会は6月末に農地での炭素貯留で初めて、国の認証制度「Jクレジット」で認証され約250トンを創出している。これまでは協会独自に販売してきたが、丸紅は総代理店として市場拡大を後押しする。
高性能なバイオ炭を農地にまくことで、農産物の生産性向上を目指す研究も進んでいる。1トン当たり5万円以上で販売し、協力農家の経営収益の向上を支援する。
クルベジ協会が創出する22年度の削減量は1000トンを超える見通しで、30年までに年間10万トンを目指す。削減量の売却単価は現在主流の森林クレジットなどに比べ3~5倍ほど割高とみられるが、農業支援という付加価値にも着目する企業などの需要が見込めるとする。丸紅は今後、クレジットの販売だけでなく、バイオ炭を活用した農地で育った作物の販売や海外企業への仲介なども手掛ける方針だ。
バイオ炭はバイオマスを加熱して作る固形物で土壌改良資材としても使われてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の19年改良版で、土壌への炭素貯留効果が認められた。燃えるとCO2を放出してしまう森林への貯留などに比べ長期的に貯留できる点と農地にまくだけで効果を得られるのが特徴だ。
農林水産省によると、バイオマス資源を活用した農地炭素貯留のCO2固定のポテンシャルは年間1400万トンに及び、農業分野での温暖化ガス総排出量の約4割に相当する。農業生産性の向上やクレジット創出による経済効果は2050年までに年間1.5兆円に拡大する可能性がある
海外ではすでに農地の炭素貯留は「カーボンファーミング」と呼ばれ、活用が広がっている。排出量取引市場を運営するフィンランドのピューロ・アースによると、バイオ炭による削減量1トン当たりの取引額は約140ユーロ(約1万9000円)。直近ではカナダのショッピファイが1トン当たり約560ドル(約7万5000円)で購入している。

2022/08/09 日経新聞朝刊

■4パーミル・イニシアチブ
そして土壌炭素貯留についてインターネットで調べていると、4パーミル・イニシアチブという取り組みが。
この取り組みは、「全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年4/1000ずつ増やすことができれば、将来の大気CO2の増加量をゼロに抑えることができるという計算に基づき、2015年のCOP21で、フランス主導で始まった土壌管理技術などによる土壌炭素を増やす活動を推進する取り組み」とのこと。
パーミル(‰)という言葉が聞き慣れなかったが、%が1/100であるが、‰は1/1000ということで、4‰というのは4/1000、つまり0.4%ということのよう。
この言葉をググって見ると、山梨県が県の主要な農産物である桃やぶどうの果樹園などで取り組んでいた。

■バイオ炭と農業技術をセットでGlobalへ
日本は優れた農業技術があるのだから、その農業技術を売り込みつつも、山梨県がやっているようなバイオ炭の技術、そしてカーボンクレジットを販売する商社というタッグで、もっとGlobalに出ていけないものか。
太陽光発電は中国、風力発電は欧州や中国、という中で本来は技術力で勝る日本がそこで勝てないのであれば、農業技術にカーボンクレジットを組み合わせた別の軸での競争をするというのも一つの国家戦略ではないか。ふとそんなことを思いました。外貨獲得のために、もっとGlobalへ攻めていきたいものです。


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