ぼくの「りんかく」5 - 誰かと旅する場所
2023年5月21日(日)に行われた文学フリマに出品する「りんかく」という写真ZINEについて、作者サイドからあれこれ裏話をするnoteです。
「だれかに写真を撮ってもらうと、自分から見えない『輪郭』が見えて立体的になる気がする」。この本は多拠点生活の「りんかく」を集めた立体記録。
ここからは淡々と写真を掲載するページが続きます。一つ一つの写真にはもちろん意味がありますが、それを語ると僕の旅日記になってしまうと思って本自体には何も書いていません。
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と、本文に入る前の雑談コーナーみたいなのが定着しそうな予感。
今回の記事は、茨城県の大洗A邸で書いています。
この場所はちょうど2年前に、初めてADDressを使って利用した思い出のある拠点です。
2年前に来た時からずっと、建物は綺麗だし、家は広いし、スーパー近いし、風は気持ちいいし。夕方になる船の汽笛と、海の匂い。何も変わってないけど、何かが変わっている、僕にとっては大切な場所になりました。
その拠点の家守さんがワーホリに行くため、今月いっぱいでこの場所を去るそうです。何も変わってないけど、何かが変わっている。僕も進まなきゃ、と、今回の滞在でも思ったのでした。
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11-12 甲府旅
2022年にホッピングをしてたどり着いた鶴巻温泉。よく利用していた鶴巻温泉B邸がクローズされた後、鶴巻温泉A邸に行くようになりました。鶴巻温泉B邸で仲良くさせてもらった方々がそこに集まるようになり、ある時みんなで甲府旅行に行くことになりました。
ほったらかし温泉で朝ごはんを食べる
この写真は以前も別記事で紹介していたかも知れません。でも、それとは別の写真になります。
甲府B邸に宿泊した僕らは、日の登る前に車に乗り込み、日の出から始まる「ほったらかし温泉」へ向かいました。
到着するともうたくさんの人がいて、みんなぼーっと、温泉から朝日を見ていました。朝のツンとした新しい空気と、青い匂いと、何かが始まりそうな楽しい気持ちの混ざった時間。
朝日が昇り切ると僕らは温泉を出て、朝食を取ることにしました。ほったらかし温泉名物TKG。列に並んでオーダーの順番待ち。朝日が眩しくて新しくて、なんだかとても楽しい。こんな時間が過ごせるって、とても幸せだと思った瞬間でした。
紅葉の昇仙峡をゆく
引き続き甲府の写真です。
赤や黄色の葉ですっかり覆われた昇仙峡に行った時の写真です。
実はこの時、僕はだいぶ疲れ切っていました…。なのであんまり詳細を覚えていなかったりするんですが、なぜだかこの写真には惹かれるものがあります。
2人が先を行き、1人がそれを追いかけている。絶好のロケーションなのに閉まっている蕎麦屋と、観光地なのに少ない人。なんとなくある寂しさだけど、毎年変わらず紅葉する木々。なんか、そんな写真です。
けど、楽しかった、一生懸命だったなって記憶があります。
13-14 年末の仙台と、甲府の鯉
年末の空気、新年の足音
1枚目は仙台の「大崎八幡宮」という神社です。僕は御朱印を集めるのが趣味なのですが、その流れで向かった場所でした。年末のなんとも言えない空気感の中にある、たくさんのノボリ。あぁ、なんとなく新年の足音を感じるななんて思ってみていました。
まばらに歩く人たちは、服装を見るに観光客もいれば地元の人もいそう。新年に向けての準備をしているのかな。帰省かな。
夕方前の境内は静かで、ところどころに背の低くなった太陽の光が差し込み、暗さと明るさの真ん中くらいの光があちこちでみられました。
そうそう、文学フリマの会場でこの写真をみた方が、この神社でお正月に行われる「松焚祭」というのを教えてくれました。
俗にいう裸祭りというやつで、寒いのに半裸で練り歩くとかなんとか。
僕は前知識も何もなく行ったので全く知らなかったのですが、「機会があれば来年出てみたら?」なんて言ってくれて。これはもしかしたら出ちゃうかも?なんて思った自分がいました。
甲府の鯉
また甲府に戻っちゃう写真です。
なんでここに?って感じなんですが、本当は順番が上下逆でした。甲府→仙台という順番だった。
けど「なんか神社に鯉っているよね」「鯉が上より、水がありそうな下側にあった方が自然な気がする」と思って、順番をひっくり返しました。
あとは、神社と同じ場所だっていうミスリードになっても面白いかなとか。僕の記憶を切り離した、読み手の自由な想像をしてもらいたかった。
そもそもこの鯉の写真は今回使うつもりはありませんでした。どこで撮ったかわからない写真だから、というのが理由でした。なので「ミスリード誘ってみようかな」みたいなことを試したんですけど。そういう写真にどんな価値?どんな意味?があるのかって正直わからなくて、悩んだりもしました。
けどこれも感覚的に、この鯉の写真って力強いなぁ、とか、どこかに挟み込むことでリズム感が出そうだなぁ、とか。普段なら避けてしまう写真をポン、と1枚入れることで何か変わりそうな気がしたんでしょうね。入れちゃいました。
そして、文学フリマ会場で意外とこの写真について質問してくださることが多く、大崎八幡宮のお祭りと合わせて面白い発見に繋がったと思っています。
まとめ
「人が映る写真は単なる思い出アルバムになりそうだから」と、避けていたのですが、ここに来て我慢できずに解放しています。とはいえ人の顔をしっかり映すというより、その場所の空気を表現するためという感じ?
表紙もそうでしたが、どの写真もひとりではできないことばかりで、誰も写っていない写真では表現できないことがあったのかも知れません。
その場の楽しさを伝えたいのかも知れないけど、大きさの対比とか、カメラを向けている僕との関係性とか、それによってその場所の空気感が風景以外で伝わっていくというか…。
神社は建物を撮らず、鯉はどこにいるのかわからず、相変わらず曖昧な感じだけど、見る人によって色々な想像ができるようなことをしたかったのだと思います。僕の思い出だけを押し付けるようなことはしたくなかった。
なにかこう、一緒に旅しているような。この場所を僕の視点ではなく、本を持ってくれた人の視点で入り込めるような、そういうことをしたいのかな。
さてこちらの冊子、現在はADDressユーザー限定になってしまうのですが鶴巻温泉A邸で閲覧・購入ができます。(家守さんのご好意でおいていただけることになりました!)
滞在される機会のある方、よろしければキッチンにある物販棚をチェックしてみてくださいね。
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