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猛獣のような猫との出会い①

いつも仕事から帰ってくると、いつもにゃーちが「にゃー」といって嬉しそうに走ってきた。にゃーちが亡くなってからも、ガレージから出て、家の方を見ると誰も走ってこない。やっと「ああそうだ、にゃーちはもういないんだ」と思う日が続いた。自分の頭の中には、以前と変わらずにゃーちはそこにいるのに、それは、過ぎ去った記憶でしかなかった。

死んでしまった猫のことを悲しんでいると、その猫も成仏できないと何かで読んだことがある。苦しい思いをして、やっと楽になったであろう、にゃーちが今までより幸せになれるように、普段はにゃーちのことは考えないようにしていたが、その分、また猫と暮らしたいという思いは大きくなっていった。

次に迎える子は保護猫にしようと決めていた。にゃーちに何もしてあげられなかった分、恩返しがしたかった。しかし、すぐに他の猫をという気にもなれず、保護施設の猫紹介ページを繰り返し見る日が続いた。どの子も可愛かったが、にゃーちではなかった。にゃーちは、もうこの地球上のどこにもいない。そんなある日、初めて写真を見た日からどうしても気になる1匹の白黒猫が現れた。

2代目保護猫コハク(オス・保護施設出身・9歳)

コハクは、8ヶ月ぐらいの時に、保護施設から譲渡してもらった雄猫だ。同じ白黒という事で、自然に、にゃーちの面影を探してしまっていたが、目がグリグリ大きくて、耳も大きくて、猫というより大きな目をしたサルのような顔をしていた。8ヶ月なので、保護施設では大人猫の部屋に入れられていたが、他の猫とうまくやれなかったらしく、当時、まだそんなに子猫がいなかった子猫部屋に入れられていた。大人猫とはうまくやれなくても、子猫は好きなようで、私たちが会いに行った時も子猫と遊んでいた。

スタッフさんが、別の部屋にコハクを連れてきて、猫じゃらしで遊んでくださいと言われたので、遊んでみた。私は、にゃーちしか知らないので、猫じゃらしの遊び方をあまり知らなかったが、旦那は、なかなかの猫マスターなので、喜んで遊び始めた。コハクも遊び盛りらしく、初めて会う私たちに臆することなく、元気に遊んでいた。まだ、若く元気だから、飼い主さんも若い方がいいとスタッフの人が言っていたような気がする。確かに、こんな激しく遊ぶのはお年寄りでは無理だよなーと思った。

譲渡というと、厳しい審査みたいなものがあるのかと思っていたが、今思えば、コハクは他の大人猫とうまくやれないし、ある意味厄介者だったのかもしれない。大体1週間ぐらいで返事しますと言われていたが、その日の帰りにスーパーで買い物していた時に、電話があり、あっさりと譲渡が決まった。

特に断る理由もないので、コハクを譲渡してもらうことにして、後日、別の部屋に移動して手続きをした。初めてのことなので、ちょっとフワフワした気分だった。こちらの保護施設は、動物病院が運営していて、譲渡希望の人は、事前に研修に参加する必要がある。保護猫の事をちゃんと理解して適切な飼育をしてもらうためだ。もちろん、完全室内飼いである。動物病院なので、すでに去勢手術はしてあった。コハクは、舐めすぎて足の毛が一部ハゲていたが、それはストレスからだそうで、あまり舐めないように気をつけてくださいと言われた。

研修は、後日一人で参加したが、夫婦で参加されている方もいたし、私より年上や年下のような方もいて、確か定員いっぱいだったと思う。そこでは、保護猫の現状や殺処分や病気に関する事など、スライドを見ながら話を聞いた。初めて聞く話ばかりだった。

こういった研修があると初めて保護猫を飼う人でも、保護猫のことを学ぶ機会になる。実際、私もこの研修を受けるまでは保護猫のことをほとんど知らなかった。この研修を機に猫の正しいお世話の仕方や保護猫のことを書いた本や雑誌を色々読むようになった。

無事に研修を終え、また後日、車でコハクを迎えに行った。譲渡契約書を提出して、コハクを初めて抱っこした時、ちゃんと猫を飼ったことのない私は変な抱き方で、コハクはちょっと嫌そうにしたけれど、ジッとしていた。びっくりするほど温かくて、当たり前と言えば当たり前なのだが、この子は生きてるんだと実感した。そして、この子の運命は私たちに委ねられた。今更ながら、ずっしりした責任を感じた。

車に乗って出発する時に、対応してくれた人と、猫のお世話をしているお二人がお辞儀をして見送ってくれた。車が走り出してもずっと頭を下げたままだった。「この子を絶対幸せにしなくては」と強く思った。

家に着くと、真新しいペット用ベッドに入ったまま、コハクは固まっていた。ちなみに名前は、迎えに行く車の中で決定した記憶がある。目が琥珀色だったからコハク。この後の子たちの名前は割とすぐ決まったのだが、やはり初めての猫の名前はなかなか決まらなかった。にゃーちの場合は、何となくにゃーちと呼んでいたというのに。

私も緊張していたが、コハクも緊張していた。隠れたりはしなかったけれども、お互いの一挙手一投足を意識している感じだった。1日目は、トイレをしなかった。2日の朝になって、まだしていなかったので、保護施設に電話して聞いてみたら、緊張しているので、もう少し様子を見るように言われてホッとしたのだった。

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