見出し画像

記憶喪失

前の記事に、「まねぶ」という古語の話を書いた。
「まねをする、見習って行う」という意味の言葉で、「真似る」と「学ぶ」は同じなんだなあ、言葉ってよくできてるなあ、という話。

同じように、古語の中で言葉ってよくできてるなあと最近痛感するのがもうひとつ。
「ただならず」である。
辞書をひくと、
「ふつうではない。わけがありそうだ。」の他に、「妊娠しているようである」とある。

教壇でこの単語を初めて教えたときは、まだまだピッチピチの大学でたて。妊娠は自分にとって具体的でなく、とくになんとも思わなかったので、重要古語のひとつでーす現代語と意味の違うところが試験に出やすいからね~☆くらいのテンションだったが、

妊娠中の体はそりゃもうただならない。
「ただならず」で「妊娠している」とは、言葉ってよくできているな~と、妊婦を経験し、じっくりとかみしめている。

とはいえ

人間の体の仕組みとして、妊娠や出産の痛みは忘れるようにできているのだろうか。それとも私だけなのだろうか。
1人目(ちみすけ)のときの大変さを、正直忘れてしまっている自分がいる。

2人目を妊娠して、その「ただならずさ」を経験するうちに、「そうだこんなに大変だった……」と思いだすことがしばしばだ。

ちみすけを妊娠中のGWは、コロナもあったし、つわりもあったしでどこにも行けず寝てばかりだった。
毎朝ご飯食べて一回吐いてから通勤するのがルーティーンだったり、
アニメ「あたしンち」を見ながら、「ああ、このお母さんも今はこんなに明るくのんきで楽しそうにしているけど、子供が二人もいるってことはこんなにつらいつわりを2回も乗り越えて、無事にみかんとゆずひこを産んで、こんなに大きくなるまで育てて…….嗚呼、なんて立派なんだろう…….」と思って泣いたりもしていたので、それなりにつらかったのだと思うが、
事実として「毎日吐いてた」「あたしンち見て泣いてた」「つらかった」ということは覚えているけれど、
実際どんな感じでつらかったのか、気持ちの部分はすっかり忘れてしまっていた。

なので2人目のつわりがやってきたときに
「あ!忘れてたこの感じ!そうだこんなにつらいんだった…….」としみじみ感じたものだった。

そんな2人目も今日でついに37週。
正期産の週に突入する。
ちみすけは36週、1972gの低体重で産まれており、NICUに三週間ほど入院している。
そのため、今回も早いのではないかと先週あたりからそわそわしていたが、無事今日までおなかの中にとどまってくれている。ありがたい。
しかも、私の出産予定の病院は第2子からは麻酔分娩を選択できるので、今回は計画麻酔分娩の予定にしているのだが、計画の日より前に破水やら陣痛やら起こると麻酔できるかかなり怪しくなってしまうので、どうかそれまでもう少し滞在しておくれと祈る日々だ。

陣痛が来るか来ないかドキドキそわそわしながら過ごすこの感覚もすっかり忘れていたけど(っていうかちみすけは37週より前に破水しているのであんまりその期間なかったけど)そういえばこんな感じだった、と今思い出しているし、
激しく元気な胎動が痛すぎて夜寝られないのも、忘れていた。

2回目を体験することで、
けっこうなんでも忘れていた。
ということに気づかされる。

しかし、病院では「経産婦」として、「前の出産」のことをちょいちょい聞かれるので困ってしまう。
「前のときもけっこうおなかって張りました?」
「前の陣痛のときってどこに時間かかりました?」
「前の時も同じ痛みはありましたか?」
などなど
ごにょごにょ答えているが、正直なところ覚えていないのである。
なのに助産師さんたちは
「でもま、2人目だからなんとなく感覚はわかるでしょうから^^」みたいな感じを出していて、自分の記憶に全く自信のない私は内心ヒヤヒヤしている…….

陣痛の痛みについてもそうで、
出産のときの痛みについて、私が覚えているのは、力強くベッドの手すりを握り続けたことにより産後上半身が強烈な筋肉痛になり、
「ヒエ〜下半身だけじゃなくて上半身もこんなに痛くなるなんて~」
と思ったことと、
母乳の出始め胸が張って張って
「ヒエ〜自分の胸がボディビルダーのそれになったみたいに固い痛い~」
と思ったことだけだ。

もはや出産の痛みではない。

コロナの影響がまだおさまりきらない時期の出産だったので、立ち合い分娩はできず、夫とはLINEでやりとりしていたから、その記録をみると、どうやら痛がっているのだが、どんなふうに痛かったのかとか、いつが一番痛かったのかとか、陣痛ってどんな感じなのかとか、そういう感覚的なことは全く覚えていない……….

にもかかわらず、麻酔分娩の説明では、
「痛みの度合いによって麻酔を調節していきます。前回のお産のときの一番痛かったときを10として、今いくつくらいかで答えてくれる人が多いです。」と言われた。

困った。基準を覚えていない……….。

1人目を麻酔で産んだ友人には、
「産む1日前とか半日前とかにくる陣痛は圧倒的に楽になるけど、産む直前のバーッと来る怒涛の時間は普通に痛かった!」と言われた。

その「前日とか半日前の陣痛」と「バーッと来る時間」の区別さえ覚えていない……….。

これは私だけなのか、つらい記憶がいつまでもあると「次の子を産もう☆」という気持ちが起きにくく、子孫が繁栄しないと困るから人類みんなそうなっているのか…….

「経産婦」を名乗るのが申し訳ないくらい覚えていない。
またこれもその場になったら思い出すのだろうか。

というかちみすけは破水でスタートだったので、2人目が陣痛スタートの場合、ちゃんと陣痛に気づけるかから不安である。陣痛経験したことあるはずなのに…….

もうどうか、病院の助産師さんたちも、初心者として扱ってほしい。
と、そわそわしながら願う日々である。

さて、写真のちみごはん
おなかが張るので病院に行くと前回の早産の経歴も加味して薬が処方されできるだけの安静を指示された。
ということでこの三連休はとにかく正期産を目指してだらだらと過ごし、ちみすけのことは父が担当。
なのでごはんも省エネ。
・サバの水煮缶の竜田揚げ
・グリル野菜
・ごはん

鯖缶の水気を吸い取りショウガ醤油で味をつけて片栗粉まぶしてあげただけだが、サバ好きのちみはそれなりに食べてくれた。
野菜の方は私の「食べさせよう!」という意欲と工夫とエネルギーが足りなかったので予想通りかぼちゃのみ。
野菜ジュースをつけたのが母の愛でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?