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日常の記 2020831-0906

● ○ ● 8月31日 ○ ● ○ ● ○
子が日増しに面白い。踊りのようなものを始めたのはずいぶん前だが、テレビでセサミストリートの歌コンピを流しておくと、両足を肩幅より大きく横に広げ、四股を踏むように両足を交替で踏み込みどっこいどっこいさせて音にのる。セサミやテレタビーズを見ていると、小さな黒人の子がものすごいリズム感で全身をくゆらせて音にのる様子が見られるが、これにはどういう差があるんだろうか。四股を踏む我が子ももちろん愛おしいのだが。朝からYoutubeで四股踊りをして保育園へと向かった。他の子どもの踊りも見たい。あと、子が笑うのってなぜなのだろうかと気になった。

数年前から続けている大学のゼミの非常勤講師の仕事で国分寺へ。いままで1時間半に及ぶ通勤時間が耐えられなかったのだけど、Netflixの「サイコだけど大丈夫」を見ながらだとあっという間だった。電車は普通にマスクの人たちで混んでいた。玉川上水沿いを行こうと歩道に入ったら、むっとした虫のにおいと青臭さ、そして共鳴するミンミンゼミとツクツクホーシの声が体中を包み込んだ。あれ、こんな感覚味わったことあったっけ?と思い返すが、そういえば毎年9月中旬以降が授業始まりなので、8月の最終日に玉川上水に来たのは初めてだったのだ。重いけれども少し秋の冷たさを含む空気の中を泳ぐように歩いた。
授業が終わりお迎えのために急ぎ足で歩いていたら夫から迎えに行けるとLINE。急いでいた足を緩め、頼む。なんかお総菜でも買って帰るかと返信すると。誕生日ケーキが欲しいと。もちろん夫の誕生日は覚えていたが、ケーキは改めてでいいやと勝手に思っていたので、いかんそれではと思い直し、おうよと返信。新宿で途中下車し、いちごのホールケーキにプレートメッセージまでつけてもらった。

● ○ ● 9月1日 ○ ● ○ ● ○
関東大震災があった日。学校に行かなくなると防災訓練などもしないから忘れてしまいがちだが、Twitter上では朝鮮人虐殺についての「#私は追悼します」ハッシュタグがタイムラインに飛び交っていた。小池百合子が公園での追悼集会を許可しなかったこと(今年はしたが)、様々な歴史修正主義者たちの発言などに抵抗するものだろう。もちろん私も追悼するという気持ちはあったが、ハッシュタグでいちいち反応するのもどうなのかと思ってしまい、何もしなかった。いつからTwitterはこういう媒体になってしまったんだろうか。世の中のトピックに対して、すぐに反応し、態度表明をしなきゃいけないんだろうか。もちろん思ったことをすぐ呟くメディアなので、そんなこと気にしなきゃいいんだろうけど、なんだか最近嫌な空気になっている。私のタイムラインが、ということなんだろうか。

● ○ ● 9月2日 ○ ● ○ ● ○
久々に夫と二人でランチに行った。子どもを連れて行けないであろう店に行ってみた。確かに美味しいご飯を食べられたんだけど、店主は怖いし常連とずっと喋ってるし、その他の客にとってはあまり心地いい空間ではなく、ああこれはとっても東京らしい店だなあと思った。その後駅前のチョコ屋さんでソフトクリームを買って、広場で夫とこれからのことを喋りながら食べる。なかなか夫婦2人で話す時間が取れないので、たまにこういう時間をとった方が良さそうだ。
午後は楽しい撮影。久々に人に会って、ネトフリ何見てるとか半沢がいいとか話をして、美味しいご飯を食べた。その時、辛い話を聞いた。私は面識がなかったが、割と近い界隈で殺人事件があったというのだ。2人はある人気菓子店に勤めていて恋人同士だった。約一年前、男性のDVが発覚し、女は警察に通報、男は女に近寄れないようになった。その恨みを募らせたのか昨日女性は殺害されてしまった。しかも、男のインスタグラムには犯行後に投稿したと思われる遺書が掲載されていて、その後男は自殺したという。悲しい、悲し過ぎる。記事は見ないでおこうと思ったけど、十数箇所刺されていたと書かれていた。見なきゃよかった。明らかに病気だ。彼に誰かなんらか手を差し伸べることはできなかったのだろうかということばかり考えてしまう。30代で仕事も割とうまくいっていたであろう(憶測ではあるが)男性は、どうして行為に至ってしまったのだろう。構造的に間違ってしまった大人を作り続けていないだろうか、日本は。報道の仕方もなんなんだこれ、男性の名前を公表しろとは言わないけど、殺された女性ばかりが取り上げられている。実名で。彼女は何も悪くないのに。

● ○ ● 9月3日 ○ ● ○ ● ○
夫の誕生日祝いに焼肉に行った。子が驚くほどご飯とナムルを食べた。帰りにシビックセンターの屋上の展望台に初めて行ったら、学校帰りで時間をもて余している男子高校生がきゃっきゃしていたり、ソファにどっかり座って文庫本(大宰治と推測)を読む学生がいたり、お下げにめがねの女子2人が所在なげにうろうろしていたり、車いすに座ったご婦人とそのご家族が風景を眺めていたり、なんとまあいい光景が広がっていた。だいたい19時半くらいだったと思うけど、えー、こんな場所にこんな人がいっぱいくるんだ!と驚いた。あと、趣味カメラマンっぽいおじさんが数人いるけどなんで?と思っていたら、今日はスカイツリーの脇あたりにわりと大きめのオレンジ色の月が出る日なんだ、先月の方がスカイツリーの真横だったんだけどなあと一人のおじさんが教えてくれた。このおじさんたちは、毎月スカイツリーの横に浮かぶ月を撮影しに来ているんだな、そういうのいいなと思った。

● ○ ● 9月4日 ○ ● ○ ● ○
洋服の展示会に行く。前回まであまり洋服欲が湧いていなかったのだけど、最近やけに洋服が欲しくなり、子どものものも含めて数枚注文。働こう。最近子を寝かしつけたまま寝入ってしまい、翌日6時から7時に起きるという10時間睡眠を続けてしまっていて、夜映画を見たりいろいろできていないのがものすごく悔しいので、今度こそ起きる!と夫に宣言し、起こしてもらう。Netflixでスパイク・リーの『ザ・ファイブ・ブラッズ』を見る。ベトナム戦争に従軍してブラザーとなった5人の黒人兵のうち1人隊長は当時死亡していて、残る4人が20年ぶりくらいにベトナムで再会。当時戦禍の中でCIAの埋蔵金を見つけた4人はそのスーツケースをどこかに隠した、その埋蔵金と隊長の骨を探すための旅だった。スパイク作品はいつもそうだけど、当時のファウンド・フッテージをたくみに使う。ベトナム戦争なんてほんの50年ほど前のことで、現地には親を米兵に殺された人もいるし、枯葉剤の後遺症に悩む人だっている。もちろん米兵の彼らも例外ではなくて、米国に住む黒人の比率は十数パーセントなのに、ベトナム兵の黒人の比率は30数パーセントであったことや、地雷に自らかぶさり命をもって地雷処理をしていたのも黒人。彼らにとっての「戦後」はまだ続いているのだ。

● ○ ● 9月5日 ○ ● ○ ● ○
夫が子をプールに連れていっている間にヨガ。終了後にサイゴン・レストランへ行く。ベトナムを思い出しながら。帰りに勢いで電動自転車を購入した。夜は、マーベル映画『ブラックパンサー』を見る。『ザ・ファイブ・ブラッズ』の隊長がワカンダの王ブラックパンサーだった。文化の盗用という言葉をよく聞くけれども、この映画の黒人の描き方はどうだったのだろうか。脚本の監修者とかがいるのかな。衣装やアクセサリー、アクションは素晴らしかった。黒人のヒーローが誕生するのはいいことだけれど、ワカンダは腕っぷしの強い人が王になる仕組みを早いとこやめた方がいいんじゃないかと思った。

● ○ ● 9月6日 ○ ● ○ ● ○
半年ぶりくらいのアトリエA。思ったよりも子どもたち(とはいえ、大きな子は20代後半にもなるのだけど)はたくさん来ていた。ソーシャルディスタンスをとってはいたけど、もともと彼らは一人で黙々と制作をしている人たちばかりなので、あまり変わらないと言えば変わらないか。子は最初久しぶりの場所に驚いたのか私にしがみつき、顔もあげようとしなかったが30分くらいしたら落ち着いて、Kくんの隣で落書きをしたり、他の子の絵を見に行ったり。最後の発表ではみんなが拍手をするのが楽しいらしく、一人ひとりの発表を見て拍手して喜んだ。
ランチは久々の会食。韓国ドラマの話しかしなかったような気がする。韓国ドラマヲタの友人の母が知り合いに勧められて映画『糸』を見に行ったのだけれど、韓国ドラマがデフォルトになってしまっており、いわゆるお涙ちょうだい的なメロドラマには乗れなかったという話を聞いて、うんうんと納得。日本のドラマもいい作品もたくさんあるんだろうけど、いまは完全に韓国に軍配だな。アメリカドラマもだけど、テーマが先を行き過ぎてる。夫から「なんで人は本を読んだり映画を見たりするのかな」と聞かれたので、「自分にない考え方や行動をする人を見たいし知りたい、あとは共感」と答えた。確かに、こんなにもたくさんの物語が存在するのに、やはり新しい本が読みたいし映画も見たい。きっとそれだけ人間ってのは複雑で理解ができないから、それが描かれてるものが見たいんだろう。

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