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「具体と抽象」、そして「過去と未来」を行き来する情報と知

前回の記事では、組織内で情報・知が流れることの重要性について指摘したが、今回は、組織内で情報・知が流れるとはどういうことなのか考えてみたい。

単なる「情報共有」ではなく、「理解」と「仮説」を生み出すこと

組織は何かしらの共通的な目的に向けて活動を行う集団と言えるが、だとすると、組織内で共有すべき情報や知も、単に物理的に共有をすれば良いというものではなく、それぞれの部署やメンバーが理解し、次の行為(仮説)を導くことができるものでなければならない。

そのような情報・知を創出するためには、情報や知を「具体と抽象」&「過去と未来」を行き来する状態にする必要があると考えている。以下で、それぞれについて整理したい。

1)「具体」と「抽象」を行き来すること
まずひとつ目には、「知」が「具体」と「抽象」を行き来する状態にあること、つまり「知」が「具体」から「抽象」に抽出される流れと、「抽象」から「具体」に解釈されるという2つの流れが不可欠である。

【具体→抽象】
ティール組織の書籍の中でも、「すべての情報を共有すること」の重要性が指摘されているが、仮にすべての情報が共有されていたとしても、それらすべてを把握することは現実的には不可能である。効率的に情報を共有するためには適切な粒度で情報のエッセンスを抽出する必要がある。

【抽象→具体】
一方で、抽象的な知から具体的な知が生み出されることも重要である。「抽象化」された「知」で思考することにより、個々の業務に閉じた「知」ではなく、新しい業務に適応可能な「知」を構築することができる。未知の業務に対応するためには、様々なケースに応用可能な抽象的なレベルでの思考が不可欠である。
理論やフレームワークなどの抽象的な知も、盲目的にインストールするのではなく、現場の状況に応じて適切に解釈(理解)された上でインストールされなければ、いかに素晴らしい理論やフレームワークであったとしても機能しない。個別のケースに適合する形でカスタマイズ(編集)されなければならない。

2)「過去」と「未来」を行き来すること
もうひとつは、「知」が「過去」と「未来」を行き来する状態にあることである。 組織がその価値を継続的に生み出し、組織自身も存在し続けるためには、「知」がある時点に閉じたものとしてではなく、「過去」と「未来」を行き来するものとして機能する必要がある。

【未来→過去】
未来から過去への流れを生み出すものとして「計画」がある。 「計画」は、「現在の時点」から「未来の時点の状況」を実現するための仮説を定義したものである。この仮説により、今取るべきアクションを判断することができるとともに、時間が経過し「未来の時点」が過去になった際には、その仮説が実際に生じた状況を確認するための基準となる。これが「未来→過去」の方向である。

【過去→未来】
一方で、「過去→未来」の方向も重要である。 これは、アジャイルやプロトタイピングに代表されるような、未来を仮説しづらい状況の中でいかに未来を見出していくかというアプローチである。最初に全体像を定義するのではなく、行為を通じて徐々に全体像が明らかになっていく。

「具体と抽象」「過去と未来」を行き来する

上記を2軸で表現すると、ある情報・知はこの図の4象限のいずれかに位置づけることができる(下図)。 組織内の情報流通を考える場合、常にこれら2軸を念頭に置くと情報が流通しやすい状態になるのではないか。

たとえば、ある情報・知が「過去×具体」のところ(図の左下)に位置づけられたとする。その情報をそのまま組織内に共有することも価値あることであるが、そこにとどまらず、「より一般的・抽象的な知を生み出すにはどうすればいいか」(図の左上に行くためにはどうすればいいか)ということであったり、「その情報から未来を仮説的に定義できないだろうか」(図の右側に行くためにはどうすればいいか)という問いを持つことで、情報・知が生命力を持つ。ティール組織やホラクラシーは生命体に例えられるが、それは「情報や知識が生命力を持つということ」と言い換えても良いのかもしれない。

※この記事は、https://blog.copilot.jp/entry/information_four_quadrants の内容を転記したものです。

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