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学習支援ボランティアの1年が過ぎていきました

去年から参加している小中学生の学習支援が学年末を迎えました。出会った頃「新5・6年生」と呼ばれていた子たちが、いまは「新6年生」と「中学生」になっています。当たり前のことですが、なんだかくすぐったい気分です。

振り返ってみると、この1年間で私はずいぶんいろんなことを学ばせてもらいました。最初のうちは何がなんだかわからず、担当の先生に言われるままに教室に入って子どもと会い、その子がやりたいと言うことを一緒にやって、おしゃべりして、これでいいのか?と思っているうちに時間切れ…の繰り返しでした。

いや、こう書いてみると、1年経った今でもあまり変わっていない気がします。違うのは、子どもの名前と顔がつながるようになったことぐらい。「今日はどんな子かな?」の代わりに、「今日はあの子か。じゃあこの前のあれがどうなったか聞いてみよう」とか、「この子のここが、もうちょっとこうなったらいいんだよな」とか思うようにはなりましたが、それ以外は最初の頃と変わりません。

特に「これでいいのか?」は難問です。「ふむ、これでいいのか」や「むしろこれがいいのかも」と思える日がある一方、「うー、何もできなかった」と無力感を覚える日もあります。それはたぶんこれからも変わらないでしょう。

子どもたちはいつも元気いっぱいで、ときにカオスで、とってもかわいいです。おしゃべりな子もそうでない子もいろんな話をしてくれるので、毎回それを聴くのが楽しみでした。家族のこと、友達のこと。修学旅行や運動会などの学校行事。地域の自慢を語ってくれたり、将来の夢をこっそり教えてくれたり。最近流行っているもの、絵やお習字、作文、賞状などを見せてくれたり。子どもたちに教えてもらわなかったら、私が「ひき肉です」や「猫ミーム」を知ることはなかったかもしれません。

学習面では考えさせられることがたくさんありました。どの教科でも、自分の脳の普段使っていない部位が動いている感じがしました。いや、まさかこんなに面積や体積を求めることになるとは。「尊い」の意味は「推しのこと」、将軍の名前は「Yeahs(イェーャス)」など、子どもたちの斬新な発想に感動することもありました。

もちろん明るく楽しいことばかりではありません。子どもたちの学習のつまずきは学年が上がるごとに明白で深刻で、悩ましいものとなっていました。

私は英語なら、たとえば学習歴の長い大人でも、その人がこれまでどんなふうに学んできて、これからどうすると伸びるか見当がつきますが、算数や国語ではそれができないのです。ちょっとした計算や読解をやらせてみると、未解決の綻びが放置されている気配を確かに感じるのですが、私にはその根元が突き止められない。それぞれの教科にあるはずの体系的で連続的な学びと、それらが横断的に絡み合うおもしろさを子どもたちに体験してほしいのだけれど、そのアイディアが浮かばない。そして実際にやっていることは、日々の宿題を片づけるだけで精一杯。もどかしさとともに、専門外に首を突っこみ、教えたふうでお茶を濁すことの危うさを思い知りました。

いつもの私なら、ここで自分の力不足や申し訳なさに押しつぶされて、学習支援のボランティアをやめていたでしょう。それを防いでくれたのは子どもたちです。私が算数や国語や学校教育の素人だとわかると、子どもたちは「じゃ、しょうがない」と切り替えてくれました。それはそれはあっさりと、鮮やかに。以来、私の役目は「これってどういうこと?」「どうやって解くの?」と質問することになりました。すると子どもたちは「だーかーらー」と面倒くさそうに、あるいは得意げに、私でもわかるように説明してくれるのです。

コーチングの技術の一つに、「学習者に考えさせる質問をする」というのがあります。それとこれとは似て非なるものだけど、でもそっか、そういうことか、と思いました。

どうやら私は柄にもなく“センセイ”ぶろうとしていたようです。専門外で余裕がないから、つい「教える」でねじ伏せようとしたのかもしれません。愚かだったと、子どもたちのおかげで気づくことができました。だからといって申し訳なさが払拭できるわけではありませんが、私には本業の英語以外を教えることはできないという事実を改めて受け入れ、コーチングの経験をうっすら応用して、少なくとも休まず教室に通ってくれる子どもたちの気持ちを大切にすることを心がけました。教室担当の先生や仲間のボランティアさんたちがとても尊敬できる方々だったことも、続けられた大きな要因です。

今年度最終日の今日は式典がおこなわれました。一人ひとり名前を呼ばれて元気に返事する声、表彰されて誇らしげな表情、学年を代表して挨拶する頼もしい姿に涙がでました。


Photo by Jessica Lewis thepaintedsquare on Unsplash

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