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言語コーチのワークショップをサボらなくてよかった

国際コーチ連盟認定言語コーチのコミュニティでは、定期的にワークショップが開かれます。参加は無料で、対象者はコーチ養成講座を受けて資格を取った人たち。みんなで学んだことを復習したり、知識をアップデートしたりする場です。

話題はその時々でさまざまですが、昨日は「Golden nuggets of Neuroscience(脳科学の金字塔)」という回でした。おもしろそうだったので申し込み、前日の夜に資料が届きました。資料といっても質問がずらりと並んでいるだけ。その質問も、学習者の脳や普段セッションの中でやっていることに関するものだったので、特に読み込む必要はないなと思い、ざっとスクロールしてすぐ閉じました。

このコミュニティはメンバーの多くがヨーロッパに住んでいるので、ワークショップもヨーロッパ時間で都合がつきやすい時間帯に提供されます。そのため、日本時間では夜中~夜明けになることがほとんどです。今回は午後11時半スタートでした。

一日の業務をこなし、夕食後に少し仮眠をとって備えましたが、昨日の私は疲れていました。開始30分前まで「今日はもう休んで、あとで録画をみることにしよっかな」と思っていました。やっぱり疲れているときの脳が生み出す“悪魔のささやき”は強力です。「眠いときは寝るのがいちばん」「集中できないのに出席したって意味ないかも」など、私の脳はサボるためにもっともらしい言い訳をどんどん提案してきます。なんとか“悪魔”と睡魔を振り切ってパソコン画面の前に座りました。カメラに映った自分はいかにも眠そうな顔をしていました。

今回の参加者は40名ほど。はじめて会う人がほとんどですが、知った顔もありました。参加者全員がひとことずつ挨拶する間、プロフェッショナル講座で一緒だったTや、2017年のカンファレンスで出会ったVとダイレクトメッセージでやりとりして再会を喜びました。これが「サボらなくてよかった」の1つめです。

ひととおり挨拶が終わって、まずはレイチェルのレクチャーがはじまりました。今日のワークショップの目的は、講座で学んだ知識を自分の言葉で説明すること。それを通じて、「知る」と「知識を使う」とで、自分の脳の働きがどう変わるか体験する、ということでした。

ところが、珍しくレイチェルのインターネット接続の状態が非常に悪く、音が途切れる、フリーズする、画面シェアができないなどの問題が発生しました。それで、参加者たちはチャットで「聞こえないのは私だけ?」などとコミュニケーションを取りはじめました。どうやらレイチェル以外の参加者は問題なく接続できているようです。みんなでカメラをオフにするなど協力できることはしましたが、いまいち改善せず。1人が代表してそのことを伝え、レイチェル側に秘書も加わって接続しなおすことになりました。

そうする間もチャット欄には「この時間を使って、資料にある質問の答えを自分なりに書き出しているから大丈夫だよ」というようなメッセージが流れてきました。レイチェルの脳が“limbic(大脳辺縁系が忙しい状態)”になっていることを察し、鎮めるための声かけをしているわけです。「知識を使う」ワークショップにぴったり。このコミュニティでは、こうした機転やエンパシーがごく自然に行動にあらわれる場面が本当によくあるのですが、今回も良いところに出くわしました。「サボらなくてよかった」の2つめです。

私も回答を書き出してみることにしました。すると、さらに別の1人が「ねえ、みんなで資料の質問に答えてみるのはどう?」と提案し、当たり前のようにディスカッションがはじまりました。このあたりも、さすがは学習者に自律を促し、自ら学び続けているメンバーです。第1問に対する話し合いが済むころ、ブレイクアウトルームの用意ができました。

「学んだことを自分の言葉で説明する」という目的にふさわしく、今回はなるべく言語が共通しているメンバーを同じグループに入れるように組んでありました。というわけで、私は日本語ルームへ。このコミュニティで日本語を話すのははじめてです。相手はドイツ人で、ドイツ在住の日本人に英語を教えているBでした。私は日本語ネイティブでBはノンネイティブ、私はこのコミュニティの古参でBは新人という対照的なペアですが、「日本人の英語学習」という大きな共通点を軸に、日本語や日本的な文化などを絡めて、脳やコーチングセッションについてたっぷり話し合うことができました。

大部屋に戻ると、レイチェルの接続状態は改善されていました。各ルームでの話し合いをシェアし、「これぞまさしくcollective wisdom(グループならではの知恵)だね」という参加者のコメントに、みんなでうなずくという回になりました。


Photo by Agence Olloweb on Unsplash

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