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夢を叶えるカフェ 地域とつながる探究活動

予測不可能な誰も見たこともない時代を生きていく子ども達。生き方を問い、よりよい在り方を追究し、豊かな社会を創造していく力が求められています。
学校教育・家庭教育・社会教育が繋がり、子ども達の学びが暮らしの中に位置付き、遊びなのか、学びなのか分からないくらい「楽しい時間」の中で、力が身に付いている。
そんな場所を目指して、中標津町にあるコワーキングスペース「MILK」の久保竜太郎さんと共に、一つのプロジェクトを立ち上げました。

準備から見えた活動の意義

ICTの活用

スケジュール管理と役割に責任を持つこと

手段としてのICTの活用でしたが、子ども達は「コロナ禍以降、急激に発展を遂げたツールを、大人はどのように利用して仕事を進めているのか」を学ぶ機会となりました。

以下利用したツール
 ・オンラインミーティング
 ・グループチャット
 ・日程調整サイト
 ・表計算ソフト
 ・タスク管理ソフト
 ・オンラインショップ(クラウドファンディング化)

どのように仕事を進めているのかを伝える

SNSの正しい使い方を学ぶ

分からないことを伝え合い協力する子ども達

インターネットと生活の距離が近くなる世の中で、インターネットやそれにつながる機器とどのように付き合っていくのかを学ぶことの重要性は増しています。
今回の活動では、子ども達がSNSや様々なツールを正しく、そして効果的に使いこなそうとする姿が見られました。このような経験を積むことで、SNSを適正に利用する力が身についていくのではないでしょうか。

主体性は子どもの中に

今の状態を示しながら、説明し合う子ども達

子ども達と行った「キックオフミーティング」。
初めてのオンラインミーティングでは、ミーティングルームに入ることにも一苦労…。
「このパスコード打って」「コピーしてURLを貼ってみて」と先に入れた子からのアドバイスが自然と生まれました。
「主体性」は言われてつくられるものではない。と実感した瞬間です。
一人入れる毎に、「おぉ~、パチパチパチ」と歓声が上がりました。

これはほんの一例で、活動全体を通して、自分たちの力で問題を解決しようとする姿が見られました。

参加できなかった子に会議の様子を伝える子
ミーティングで取ったメモを誰に言われるでもなくシェアする子

それぞれの個性を生かして 「みんな、ちがうからいい」

みんなちがうから生まれる「よりよい状態(ウェルビーイング)」

 子ども達は一人ひとりの得意なことを生かし、苦手を補い合って準備を進め、本番の大成功につながりました。多様性を認め合い、お互いに力を合わせてより良いものを生み出すダイバーシティ。
 「みんなちがって、みんないい」の時代から「みんな、ちがうからいい」の時代へ。今回の取組みから見えた子ども達の姿です。
このような非認知スキルは、これからを生きる子ども達に必要な力です。

・スケジュール管理が得意な子
・アイディアを出すのが得意な子
・インターネットツールを活用するのが得意な子
・周りを気遣って、情報を記録し、シェアする子
・自分の仕事に責任もって取り組もうとする子
・行動力があって、企画を進める力がある子
・優しい雰囲気で周りに安心感を与える子
・黙々と自分の役割を果たし貢献する子
…などなど 

子どもの想像力、可能性は無限大

先があるから「やれる」

今回、子ども達が「やってみたい」と思ったことは多岐にわたります。
しかし、時間の関係や大人の都合でSTOPしてしまうこともありました。
それはそれで、「やりたいことがあっても制限がかかることがある」「それをどう乗り越えるか考えることが大切」というようなことを学ぶ機会となったのですが、
「やりたいことをやれる」となっただけで、ここまで「世界を広げられる」子ども達に可能性を感じました。
今回の経験を活かし、「夢を叶える学校教育」にもつなげていきたいです。

以下、子ども達が考えたこと
・カフェイベントをしたい
・コーヒー、紅茶を作る
・お腹すいている人もいるかもしれないから軽食を作る
・お菓子を作りたい(カヌレ、スイートポテト)
・作ったものを売りたい
・親子で来られるようにイチゴミルクなども用意したい
・親だけではなく、子どもも食べられるものを作りたい
・活動をSNSなどで広めたい
・おしゃれな音楽をかけたい
・プロを呼んで、コーヒーの淹れ方、お菓子の作り方を学びたい
・総合的な学習の時間で学習した「地域の歴史的建造物」について、パンフレットを作ってお客さんに伝えたい
・チラシを配りたい

「やりたいことはやろうと思えばできる」

みんなもできる!

今回の活動を通して、子ども達はカフェを開くために必要な準備の一連の流れに触れることができました。
システムを構築し、中心になって進めてくれた久保さんの言葉、
「使っている仕組みは全て無料なので、勉強すれば小学生でもできることなのです。」
に子ども達は驚いていました。
「やりたいことはやろうと思えばできる」。そんな思いを抱いてくれたら嬉しいです。

・活動計画(メニュー決め、役割分担、作り方…)
・コストの計算(場所代、食材費…)
・価格の設定
・保健所に連絡
・場所の確保
・買い出し(食材、道具…)
・広告の方法決め(SNS、ホームページ、チラシ配り…)
・宣伝用ページの作成
・チケットの売り方決め(前売り、クラウドファンディング…)
・チケットを売るサイトの作成
…などなど
全て子ども達にも出来ることです。

学習したことを生かす

学校での学びを活動につなげようとする子ども達 そして、視野を広げる情報を提供する久保さん

今回の活動では、コスト計算では「比」の考えをつかって原価からコストを割り出したり、分量計算を行ったり、相手を意識して宣伝の文を考えたりするなど、これまでに学習した知識・技能を活用し、実際の活動とつなぐ場面が多々ありました。
知識を知識としてためておくのではなく、文脈とつなげることで生きた力となります。

「これからは知識としてもっている必要はなくなり、仕組みを理解すれば、あとはコンピューターがやってくれるようになる」。
これは、表計算ソフトで原価を入力しただけでコストを出してくれる仕組みを教えた時の久保さんの言葉。
そんな時代だからこそ「学力とは」「学びとは」ということを、改めて考える必要があります。

そして、子ども達の中に、学校、家庭、社会教育がつながっていきました。

お金を学ぶ、お金から学ぶ

活動終了後、久保さんからの最後のメッセージ
「今回稼いだお金は、料理を提供してお客さんが楽しんだ対価であったり、皆さんを応援したい、という思いで集まったお金です。
お金を払ってくれる、というのはお客さんを何かしら満たすから払ってくれるんです。
皆さんのおうちの人たちはそうやって普段、誰かの何かを満たしてお金をもらって、皆さんを育てているんです。
今回のイベントの時給では、家族をまもるにはちょっと足りなさそうだね。
もっとたくさんの人に喜んでもらう方法や出費を抑える方法、もっと効率よく仕事をする工夫はまだまだたくさんあります。
そのために勉強できることはまだまだたくさんあります。頑張ってください。」

学校教育、家庭の中でもお金について扱う時間はどれくらいあるでしょうか。最近は少なくなってきたかもしれませんが「お金の話をすること」は、ともすれば、「はしたないこと」とされることもあるかと思います。
「はたらくことの意味」「お金は自分のやりたいこと、生きていくこととどのようにかかわるのか」などは、生き方を考えるうえで重要なテーマです。
今回の活動に込めた久保さんの想いが伝わってくれたら嬉しいです。

クラウドファンディングのお陰で

172%!応援、ありがとうございました!

今回の活動はオンラインショップを活用し、チケットを前売りで買っていただきました。クラウドファンディングのような形で行うことで様々なメリットが生まれました。

・クラウドファンディング化した事で収支の予想を立てやすくなった
・赤字なく、運営することが出来た
・事前に誰が来るのかがわかっているので保健所の確認がしやすかった
・子ども達も応援してくれている人がいることを事前に感じ取ることが出来た

当日の様子から見えた活動の意義

当日は、ゲストハウス「USHIYADO」さんをお借りして、カフェオープン!!27名のお客さんが来てくれました。
2時間で27人に料理を提供する子ども達…。
大忙しでしたが、全員が自分の役割を全うしました。
応援に来てくれた大人たちも「大したもんだ」と認めてくれました。

この一日だけでもたくさんの気づきがあり、得難い経験となりました。

当日の写真から見えること

緊張感の中、さぁ、始めよう!!
分量を量って、調理の中にも算数が
家庭科でやったなぁ
メニューも自分たちで作ろう!色は…
玉ねぎは「あめ色」に…なかなかならない…
1回目25分、2回目10分!プロの技を教わり、あめ色職人に!
空気を抜いて、丸めて…
作り方を教わったら、自分のスキルとして向上させ、手際よくハンバーグプレートを作っていった
焼いて、蒸して、ハヤシライスを掛けて
二つの鍋を両手でかき混ぜる「職人化」する子ども達
生地の中の状態まで見抜く「プロの目」に触れる 「180度であと2分だね」
「いい感じだね」とプロも認めたスコーン
接客も自分たちで 友達が来てくれた~!
一流のプロに認められる得難い経験(左:TOMARI STAY&CAFEの亀田さん、右:夢みるケーキ屋Porteの村上さん)

今回の収支

売り上げ 36500円
出費   26932円
利益    9568円
今回の利益は、卒業・入学祝としてプレゼントを購入し、子ども達へ還元予定。

振り返りから見えること

活動を通して、振り返りを行いました。振り返りを通して、自分の学んだことなどを改めて実感する様子が伝わってきました。

子ども達の振り返り

【振り返りの項目】
①今回、一番学んだことは?
②どうやって(どんな状況で)学んだか
③次に生かすなら、何を頑張りたい
④最後に感想を

Aさん
①ハンバーグの作り方
②もうすぐお客さんが来る前の緊張感の中で
③結構うまくできたのでないです
④とても貴重な体験と経験ができ、とても良かったです。またやりたいです。

Bさん
①あめ色の時短の仕方
②あめ色職人が教えてくださったから
③その料理を素早く簡単に作れる方法を事前に調べておく
④他にない楽しさを感じられました。私たちのためにUSHIYADOを借りてくれたり、まだ考えていない部分を補ってくれたり、本当にありがとうございました!!

Cさん
①スコーンの焼き具合の確かめ方
②村上さんから、スコーンはどうなれば焼けているのかの判断の仕方を教えてもらった
③アレンジレシピを考えて、色々な味のスコーンを楽しんでもらいたい
④本当に貴重な体験をさせてもらえたことが何より嬉しいです!!久保さんに投げやりにしてしまって、本当にすみません。それでも沢山のお客さんに来てもらえて楽しかったです!ありがとうございました

Dさん
①ハヤシライスの作り方
②山内さんの手助けで学んだ
③そんな変わらないけどカレーを作りたい
④何より最高に楽しい活動でした!ちょっと失敗することもあったけど、お客さんが沢山来てもらえて嬉しかったです!貴重な体験をありがとうございました。中学生になってもまたやりたいです!

Eさん
①接客の仕方
慌ててやるとより早くなるどころか遅くなることが分かった
②お客さんが沢山来た時に頭の回転の処理が追い付かなくなったからです
③受付です。なぜなら昨日のことを活かしていきたいからです
④実際にやってみるととても忙しかったです。これをもって飲食店の大変さが分かりました。またこのような機会があったら中学校でもやってみたいです。

Fさん
①大人との接し方です。あまり大人と接することが少ないのでこの機会で学べて嬉しいです
②注文を渡すときです。お客さんに迷惑が無いように渡すのに気を付けてやりました
③中学生になってもまたこのメンバーで、もっと大規模にやってみたいと思っています。他の飲食店に行って手伝ってみたりしたいです
④カフェができたのは、本当に沢山の人が手伝ってくれてできたもので、最初の方はあまり参加できなくて困らせてしまったりしましたが、結果バンザイです!みんなとやれてよかったです!

見守ってくださった保護者の皆様の感想

保護者①さんの感想
この年齢で絶対的に経験できないようなことに手を貸して下さり、ありがとうございました
子供たちはドキドキワクワク、だけど働くことの大変さ、お客さんにお金を貰いつつも喜んでもらうことへの工夫や、失礼のない態度や言葉遣い、少しでも何か学んで掴んでくれたなら親としても参加させて良かったなと思います!!
結果はすぐには見えませんが
家に帰ればいつも通りの子供達に戻ると思うけど、『料理』に関しては今までやって来た子達はもちろんだけど、やってこれなかった子供たちにも『お手伝い』の火種になったらなと思います
私が仕事から帰って来て、食卓でたくさん話しました♪
お土産のハンバーグは肉肉しててギッシリ!!って感じの男の子のハンバーグで、味付けもちょうど良く美味しかったです
ポルテの村上さんに「手際がいい」と褒められて嬉しかったようです♪
久保さんや山内さんには負担や責任(なかなかメニューやレシピがあがらず間に合うかどうか)など多大なご迷惑や心配、不安などなどおかけしました
でも達成感でいっぱいだったようです!
やらせてあげられて私も嬉しかったです
本当にありがとうございました
またこういう企画をやってほしいと思うのは私だけでしょうか⁇笑
ウチにはまだ下の子がいます。
ので、ぜひ毎年この時期だけでなく計画できる機会があるのならば、ぜひ続けてやっていただきたいです!!その時は絶対絶対、今度こそお客さんとしてチケットを買って食べに行ってみたいです
本当にお疲れ様でした。そしてホントにホントにありがとうございました

保護者②さんの感想
この度はお世話になりました!とても美味しかったです
子供たちが頑張って作ったんだなって思うとすごく感慨深いなと思いましたうちの子供もめちゃくちゃたのしかった〜めっちゃ大変だった〜って言ってましたけど、またやりたいなぁって言ってました
そして下の子もお兄ちゃんお姉ちゃんたちの姿をみて自分もやりたかった〜ってずっと言っていたので続いてくれたらすごい嬉しいなと思います!
絶対にいい経験になったと思います
本当に素敵なイベントを提供していただいてありがとうございました!
これからもよろしくおねがいします(∩´∀`@)⊃
あと、子供たちが慣れないことを慌てながら失敗しながら一生懸命やってるのはとても可愛くてほっこりしました♡

活動のまとめ

1か月と少しの時間で行った一大プロジェクト。今回の活動はコワーキングスペース「MILK」の久保竜太郎さんのお力添えがなければ行えませんでした。本当にありがとうございました。
一度でも行えたことと行えなかったことは大きな違いです。
次回につながる大きな一歩を踏み出すことができたことを嬉しく思います。

子ども達、そして、保護者の方たちの願いにもあるように、私も是非継続していきたい。そして、もう少し期間を延ばし、また、規模も拡大してより多くの子ども達に「探究の種を見つけてほしい」と考えています。

学ぶとは何か 学力とは何か

今回の活動の中で子ども達から聞こえた言葉に私は大きく心を動かされました。
「私は勉強が苦手だから…」
こんなにも生き生きと力を合わせて、一つのプロジェクトを成し遂げようとする子ども達。そんな子ども達が「できない」と感じてしまっている…。

『子ども達が苦手だと言った「勉強」とは何か』と考えさせられました。

今みんながやっていることも「勉強(学び)なんだよ」「力を発揮して、プロも称賛するようなことができていますよ」

ペーパーテストで計られる「学力」。そこに向けて進められる「学習」。学び方が合わなければ「できない」と感じてしまう「授業」。

自己反省するとともに「学校教育としての変革」が求められていることを実感したプロジェクトでした。

感謝

今回、プロジェクトを行うにあたって、ご理解・ご協力いただいた保護者の皆様。当日に足を運んでいただき、応援・アドバイスをしてくださった地域の方々。子ども達のために心を込めてチケットを買い、食べに来てくださったお客様。子ども達のためにゲストハウスUSHIYADOを貸してくださり、応援してくださった竹下さん。
そして、子ども達が色々な困難を乗り越えられるように最後まで伴走をしてくださった久保竜太郎さん。
皆様のお陰で、地域にまた一つ、新たな学びの場が生まれました。
本当にありがとうございました。

今回作ってくださった道を途切れさせることなく、さらに発展していけるように尽力していきます。
今後ともよろしくお願います。

山内 健

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