我、爆誕
今日は2月18日。
戦国大名、上杉謙信の誕生日だということは皆さんもれなくご存知だと思うが、その466年後の今日、わたくし慶士が爆誕した。
誕生日の思い出と言えば、実家に住んでいた頃、母親が毎年パエリアを作ってくれていた。
母親から「誕生日に食べたいものなんかある?」と毎年聞かれるたびに「パエリア」と答えていたので、途中からもう何も聞かれず誕生日はパエリアがお決まりになっていた。
高校生のときに一度だけ、パエリアではなく「大量の砂ずり」をリクエストしたことがある。
母親はオーダー通り、焼き鳥の砂ずりをピラミッドのように詰み、晩ごはんで出してくれたのだが、僕は5本ぐらいしか食べることができず、己の弱さを痛感させられた。
串の砂ずりなら何本でもいけると息巻いていたが、僕の胃袋はその期待には応えてくれなかった。
同じものをたくさん食べると飽きるということをこのとき初めて知った。
少し想像すればわかりそうなことだが、誕生日ということに浮かれ、想像力がミジンコ並みに低下していたのだと思う。
その次の年からは、例年通りパエリアに戻った。
砂ずりの失敗があったからこそ、パエリアの素晴らしさを再確認することができた。
ありがとう砂ずりたちよ、お前たちの命は無駄ではなかった。
そんなことを積み重ね、今日で28歳になってしまった僕だが、歳を重ねることの恐怖をひしひしと感じている。
最近、朝起きると必ず体のどこかが痛い。
首か肩か腰のどれかがいたずらに痛む。
湿布を貼って寝て起きてまた湿布を貼る日々。
いつかこんな日がくるだろうと身構えてはいたが、まさか28歳付近でくるとは、ちょっと早すぎやしないだろうか。
もっと40代とか50代付近でやってくるものだとばかり思っていたが、老化とは恐ろしいものだ。
だが、僕はどうやら見た目だけは若く見えるらしい。
その証拠に、今年だけで年齢確認をもう3回もされている。
コンビニでお酒を買うときに1回、居酒屋に入るときに1回、喫茶店に入るときに1回。
いやコンビニと居酒屋はわかる、それはまだわかるが喫茶店はいかがなものか。
タバコを吸わない可能性もあるのに、なぜ入店時に年確をされなければいけないのだろうか。
いやそりゃ吸うけど、タバコはめちゃくちゃ吸うけど、タバコに火をつけてからではだめなのだろうか、クソッタレ。
まあそんなことを言いながら、実は年確されることを誇らしく思っていたりもする。
年確されるたびにうれしさが込み上げて、毎回「何歳に見えますか?」と店員さんにだる絡みをしてしまう。
だいたいは「いやすごく若く見えますよ」みたいな抽象的な言葉で流されるのだが、このあいだ喫茶店で年確されたときは「えー24ぐらいですか?」と若女店員に言われた。
いや24に見えるのならいいじゃないか。
年確する必要あるか?いるこの時間?
とは思ったが、どうせお店の決まりで聞いているだけだろうと察し、頭に浮かんだ疑問を飲み込んだ。
子どもの頃は誕生日が楽しみで仕方なかった。
それが大人になるにつれてこんなにも嫌気がさすものになるとは。
というか、27歳になるまでなんとも思っていなかったのに、27歳になった途端、歳をとることがとてつもなくこわくなった。
中学校3年生がそのまま大人になったような僕に、28という数字は重すぎるのだ。
見た目は大人、頭脳は子どもの逆コナン状態なのである。
肌も荒れてきたし体もたるんできた。
スキンケアや運動が老化に追いついていない気がする。
28でこれだと先が思いやられる。
そんなこともあって先日、ここ5年ぐらい明るかった髪色を暗くした。
もう僕は若くないのだと、年相応の見た目になろうと、自分に言い聞かせながら黒染めをした。
そんな矢先、同居人2人から今年の誕生プレゼントで黄緑の帽子と赤いスウェットをもらった。
とてもありがたいが、こんなに老化が進んでいる僕に黄緑と赤はファンキーすぎやしないだろうか。
しかも帽子はなんかよくわからないジャグリングのデザインで、スウェットの方はシンプルパンダプリントときた。
身も心も大人になろうとしている僕には酷すぎる代物だ。
出鼻という出鼻ををくじかれた気がしてならない。
2月18日は嫌煙運動の日らしいが、こんな日ぐらいはたらふくタバコを吸わせてほしいものだ。
だって、1年に1度の老化が進む日なのだから、肺に煙をぶち込まないとやってられない。
28歳の若造が何を言ってるんだと、まだ20代なのに老化がどうのこうのほざくなと反感を買っている気がするが、本当に27〜28の間で急激に衰えてきたので焦っているのだ。
ここ数十年で人類の科学が急激に進歩したのと同じように、僕の体も急な発展を遂げている。
だが、誕生日ぐらいは焦らず優雅に過ごしたい。
なので、誕生日は毎年ひとりで映画館に行くことに決めている。
今年は、朝8:10上映の映画を先ほど観てきたところだ。
というのも、今日一日中予定が詰まっているので、朝イチの時間帯にねじ込むしかなかったのだ。
優雅とは程遠い誕生日を現在進行形でおくっている。
優雅に過ごしたいと思い決めた決まり事のせいで、逆に優雅ではなくなってしまっている。
こんな詰め詰めの休日も珍しい。
でもまだ誕生日は始まったばかり。
まだあと12時間以上も残っている。
僕はどんな思いで今日という1日を終えるのだろうか。
別に最高の誕生日にするつもりもないが、いつもよりはちょっと楽しくてちょっとエキゾチックでちょっと素敵な一日にしたいとは思っている。
今日はパエリアを食べるのか、はたまた大量の砂ずりに挑戦するのか。
想像力がない僕は、まだどちらを選べばいいのかわかっていない。
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