生まれて初めて4tトラックに跳ねられた日のこと
昨年のこと、12月の上旬。
生まれて初めて4tトラックに跳ねられた。
というか、生まれて初めて事故に合った。
事故から1ヶ月以上経ち、気持ち的にも症状的にも落ち着いてきたので、今回はそのことについて書いていこうと思う。
12月5日に他事務所の同期と2人で飲みに行くことになった。
そいつとは1年ぐらい前にライブが一度被っただけで、飲みやご飯に行ったことはなかった。
なんならあまり素性も知らない。
でも、SNSで家が近いということが判明し、飲みに行こうかという話になった。
素性をあまり知らなくても、まあ芸人だし飲んだら仲良くなれるだろう、飲みながらお互いのことを知っていけばいいかと、そんな軽い気持ちで飲む予定を立てた。
そして当日、薄暗くて趣きのある鉄板焼き屋さんに入った。
その鉄板焼き屋さんは、コワモテの大将1人で切り盛りしており、2人用のテーブル席が3つとカウンター席が6席とこじんまりした僕好みのお店だった。
21時過ぎに入店したのだが、カウンター席の端と端に1人ずつとテーブル席に2人組の計4人が飲んでいた。
僕たちは、通ぶって当たり前のようにカウンター席に腰を据えた。
大将にお酒をたのんですぐ、右隣のおばあさんから話しかけられた。
推定70歳前後のそのおばあさんはさっちゃんといい、1人で飲みにきていて若いエネルギーがほしいからと言って、僕たちに絡んできた。
そのさっちゃんが可愛くて、僕たちもずっと話していた。
まだ僕たち2人の関係性も築けていないのに、ずっとさっちゃんにスポットを当てた話をしていたので、もう僕はその同期よりさっちゃんの素性の方が知っていた。
2人で飲みに来たはずなのに、3人で永遠と喋っていた。
2時間ほど飲み、さっちゃんが帰ることになった。
ちなみにこの2時間の間、さっちゃんは酒を1杯しか飲んでいなかった。
でも終始、笑顔で楽しそうだったので逆にこっちがたくさんのエネルギーをもらった。
さっちゃんが帰ってから、やっとこれから2人で話せるなと、ここからが今日の本番だなと、そう思ったのも束の間、後ろのテーブル席の2人組に話しかけられた。
作業着を着た中年男性2人組。
投げかけられる言葉に全て笑顔で対応してあげたがまあ普通にだるかった。
さっちゃんのときはあんなに楽しそうだった同期が一切、会話に入ってこなかったことで察した。
半ば無理やり店を出ることにし、大将に会計をたのんだ。
お金を払う際、コワモテの大将が他の客に聞こえない程度の声で「ごめんね」と言ってくれた。
僕たちは「ぜんぜん大丈夫です、ごちそうさまでした」と元気良く返した。
僕と大将は、お互い多くは言わないがその「ごめんね」と「全然大丈夫です」に全てが詰め込まれていた。
絶対またこのお店に来ようと思いながら僕たちは店を出た。
もう時間も時間だったので解散しようということになった。
駅まで歩いていると、そういえば俺こいつのことなんも知らないなと思い、やっぱりもう1軒行こうと提案した。
同期が金欠を理由に渋めの返答をしてきたので、僕が奢るからと強引に次の店へと移行した。
1軒目の雰囲気とは真反対の激安チェーン店に入った。
店内の明るさがさっきの20倍くらい明るかったので、今日初めて同期の顔をちゃんと見れた気がした。
そこでは、お笑いのこと、今やってる活動のこと、相方や同期や先輩のこと、地元や家族のこと、とにかく色々話した。
チェーン店でするには恥ずかしいくらいの熱い話もした。
話の熱を帯びたまま店を出てコンビニで酒を買った。
路上で酒を飲み交わし、共通の趣味である格闘技の話になった。
年末にあるライジンのフライ級タイトルマッチ、堀口対神龍の話になり、どっちが勝つかで言い争った。
同期は流石に堀口が勝つと言い、僕は今後の日本格闘技界への期待を込めて、神龍が勝つと言い放った。
結果は皆さんもご存知の通り、2R 3分44秒で堀口のSUB勝ちとなった。
ハイレベルの戦いだったが、実力の差は歴然だった。
僕も同期にリアネイキッドチョークをかけられて負けたような気分になった。
そして、同期とは3時過ぎに解散した。
僕は歩いて帰れる距離だったので、今日のことを振り返りながらトボトボ歩いて帰っていた。
信号待ちに差し掛かり、赤信号が青に変わるのを待っていた。
だが、時刻は3時半頃、人も車もほぼ通っていない。
そして短い距離の横断歩道、とてつもなく渡りたい衝動に駆られた。
その衝動をグッとこらえ、僕は赤信号だけをずっと見つめていた。
でも早く渡りたすぎて、少し歩道をはみ出して待っていた。
僕は、普段からスクランブル交差点とかですごい量の人混みが信号待ちをしていても、せっかちすぎて人混みの先頭に立ってしまう。
このときもその悪い癖が出たのだ。
歩道を少しはみ出して赤信号をじっと見つめたまま約30秒経ったとき、ふと右を見てみた。
すると、4〜5m先に大きなトラックが物凄い勢いで向かってきていた。
直線の道で約50kmでノンストップノンクラクション。
僕は咄嗟にやばいと思い、避けた。
だが、ギリギリ跳ねられた。
ほんと車の側にギリギリ当たってしまった。
とほぼ同時に、ミラーが頭に直撃した。
頭に強い衝撃がきた瞬間から20秒くらいの記憶がないのだが、僕は気づいたときにはもう立っていて運転手と話していた。
運転手は全身黒コーデだった僕に全く気づいていなかったらしい。
そして、すぐに救急車と警察がきた。
あと30㎝ずれていたら確実に死んでいたと言われた。
僕も思う、あれは確実に死ぬ。
事故とかがあってもなんとなく自分なら受け身とかをとって死ぬのを回避できそうとか普段から思っていたが、そんなアホみたいな考えを持っていた自分を殴りたい。
あれは余裕で死ぬ。
最後の一言も吐けないまま即死するやつ。
道路はミラーガラスの破片が散らばっていて、トラックにも傷が入っていた。
耳から血が出た程度でほぼ外傷がない僕はハルクなのではないかと思った。
まさに不幸中の幸い。
僕の守護霊という守護霊たちに感謝したい。
その日は救急車で運ばれ病院に行ってCTやMRIの検査をした。
特に異常はなかったが、次の日から全身のむち打ちと頭痛がひどく、眠れない日々が続いた。
もう1ヶ月以上も経ったのでだいぶ痛みは落ち着いたが、ふとしたときにまだ痛むときがある。
まあ痛みの方はどうでもいいのだが、1番厄介なのはあの光景が頻繁にフラッシュバックすること。
4〜5m先に猛スピードで突進してくるトラックの光景。
あのせいで今でも出歩くのが少しこわい。
特に横断歩道を渡るときは鼓動の揺れが激しくなる。
死んでもおかしくなかった。
でも生きてる。
人生は紙一重なことを知った。
人生は紙一重で何が起きてもおかしくないということ。
成功や失敗、挫折や勝利、楽しいや苦しい、そのどれもがどっちに転んでもおかしくない。
失敗したからといって落胆することはない。
だって、それは成功していてもおかしくなかったのだから。
僕が今生きていることが、その証明になっている。
そして、今回初めて死を実感することによって、命の素晴らしさを知った。
生きてるってすごい。
生きているだけでもう人生勝ちというかそれだけでいい気がする。
命よ、ありがとう。
もし僕があそこで命を落としていたら、僕はもう二度とあの鉄板焼き屋さんに足を運ぶことができなかったのだから。
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