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【映画】愛されたい。少年の心の叫びは歪んだ悪意となって表れる。『ジョシュア 悪を呼ぶ少年』

一人っ子だった家庭に2人目が産まれると、それまで独り占めできていた親の愛情が下の子に注がれるため、上の子が嫉妬してしまう、という話は珍しくありません。
「お兄ちゃんなんだから、我慢しなさい」「お姉ちゃんでしょ、妹に優しくしなさい」というように、家庭内で不平等な扱いを受ける事で、嫉妬心はやがて憎しみに変わることだって考えられます。

今日の映画は、そんな家庭内でのトラブルをゴシックホラー調に描いた作品です。といってもオーメンのような怪奇映画ではなく、あくまでサスペンス映画なので、その点ご了承下さい。(レビューサイトで、オーメン的なものを期待していた、という口コミが多かったため)

ジョシュア 悪を呼ぶ少年

「4コマあらすじ」

「作品みどころ」

ジョシュアには物語序盤から確かな異常性が見受けられる。
例えば、学校で古代エジプトでのミイラの作り方を学ぶと、お気に入りのパンダの人形の中身をくり抜いてミイラにしようとする。
「鼻の穴から脳みそを抜き取るんだ」と言って、パンダの鼻を切り裂くなど
普通の子どもでは考えられない行動を取るシーンがある。
特に印象的な場面といえば、音楽発表会でジョシュアがピアノで「きらきら星」を奏でたとろこだ。
他の子たちが拙いバイオリンやトランペットを披露する中、ジョシュアだけはとても流暢に演奏をしてみせる。
しかし途端に音が外れ始めたかと思うと、本来きらきら星には絶対出てこないようなフレーズを弾き始めた。やがて完全に即興の演奏へと移行するのだが、その時ジョシュアが奏でた曲がなんとも不気味であった。
それはこの映画全体に漂うゴシックホラー的雰囲気を象徴しているように思える。

妻のアビーは2人目を産んだ事で育児ノイローゼに罹ってしまう。
昼夜問わず泣き続ける赤ん坊にイライラし、精神が不安定になっていく。
仕事中の旦那に電話をかけ、「家に誰かがいる!」と不安を訴えてわざわざ職場から家に呼び戻す事も。
手伝いに来ている義母にも強くあたり、授乳しようとする彼女に対して
「老婆に母乳が出せるか」と毒を吐く。
旦那に向かって物を投げつけるなど、アビーの心はどんどん蝕まれてゆき、
息子のジョシュアを不幸の原因だと睨むと、「全てお前が悪い!」と暴言ともに金切り声を上げ出す。

長年飼っていた愛犬の死、学校での生物大量死、妻の大けが、義母の転落死。相次ぐ不幸は全てジョシュアのせいではないかと両親は疑い始める。
愛犬の死については、最後に散歩に連れて行ったのはジョシュアだ。
学校で死んだ生物もジョシュアのクラスのもの。
妻が大けがをしたのだって、ジョシュアと2人きりの時の事。
そして義母が階段から転落する直前、ジョシュアはその隣に立っていた。
まさか9歳の少年がそんな犯行に及ぶなどと考えづらいが、ジョシュアの異常性を鑑みるとあり得ない話ではない、という空気が流れ出す。
上に挙げた事件について、決定的な瞬間は描かれていないものの、ほぼ100%ジョシュアの仕業だ。
これらの犯行の根底にあるのは、「自分だけが愛されたい」という子どもらしい願望なのではないだろうか。その証拠に、ジョシュアは生まれたばかりの妹のことも殺そうとしていたのだ。
邪魔者さえいなくなれば、両親の愛情はまた自分1人のものになる。そのような考えから出た行動なのかもしれないし、ただの悪意の可能性もある。


「コメント」
タイトルやイメージ画像から、オーメンのような映画を想像していましたが、実際はホラー映画ではありません。
ただ怖い作品である事には間違いないです。記事本文でも述べている、ピアノ演奏会のシーンが特に恐ろしいです。
徐々に壊れ始めるきらきら星の音程と、赤い壁を背景に薄暗い空間で1人演奏するジョシュアが不気味でした。
育児ノイローゼのせいで夫婦関係も険悪になってゆき、ジョシュアへのあたりも強くなってくるのがリアルで、他者が介入しづらい家庭内の問題というのは闇が深いな、と改めて感じます。







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